the disappearing smirk and encounter 8
その三つ編みのお下げをたらし、可愛らしい部屋着らしきものを着た少女は、巨大な万年筆を槍のように構えて、チェシャーネコの前に立ちふさがる。
「ええい、なんですかこのネコは!こんなのチェシャーネコじゃありません!」
…こいつ、絶対不思議の国のアリスを読んだことがあるな。
「じょ、嬢ちゃん気を付けろ!そいつ、瞬間移動みたいな動きができんだよ!」
弾正さんが少女に話しかける。
「え、本当ですか!そこは原作通りですね?!いや、でもあれは瞬間移動とか転移とかとは違うような…。」
少女がぶつくさ言って考えこんだのを隙とみたか、チェシャーネコは尻尾と鎖で攻撃する。
だが、その全ては見えない障壁で再び弾かれた。
「シャアアアアアアアアアアアアア!」
チェシャーネコは連続で転移して、いろんな方向から攻撃を加えていく。
だが全て、少女には届かない。
「ふふ、無駄です!私の文字魔法は絶対です!」
少女は得意げに微笑む。
「今度はこっちの番です!てやあ!」
少女はチェシャーネコへと飛び込む。
チェシャーネコはそれを尻尾で迎撃しようとするが、それも見えない障壁に拒まれる。
「はあ!」
少女が振るった万年筆は、チェシャーネコが転移して逃げたために錠前には当たらなかったが、それでも鎖を数本切り裂いた。
「さあ!まだやりますか!やるなら来なさい!」
「シャアアア…。」
三つ編みの少女の気迫に、チェシャーネコは二、三歩後退る。
「ニャア!」
そしてそのまま背を向けると、どこかへ転移した。
そのまま数秒が過ぎる。
チェシャーネコが姿を現す気配はない。
『…もう大丈夫みたい。遠くへ行ってしまったみたいだよー。』
リョウがそう言うと、少女とチェシャーネコの戦いを見守っていた全員がほっと息をついた。
すると突然少女が膝をついてその場で座り込んだ。
「ふうー、危なかったですー。」
それと同時に、弾正さんと少女の体から、ガラスの割れるような音が響く。
「文字魔法の有効時間がもう少しできれるところでしたー。」
少女の様子はさっきまでの勇ましいものとは打って変わって、弱弱しいものだった。




