the disappearing smirk and encounter 6
弾正さんが銃の連射を始めてから十秒立って、チェシャーネコは姿を消す。
さあ、今度はどこに姿を現す?
俺たちはひと塊になって、油断なく辺りを見渡す。
『みんな、上だよ!』
見上げると、上空から襲い掛かってくる大きな影。
「うおりゃあああああああああ。」
俺はハンマーを振り上げ、振り下ろされた前脚に対抗する。
鈍い音が響き渡り、俺はチェシャーネコの攻撃をはじき返した。
チェシャーネコは、ふわりと上へ舞い上がる。
あと八秒。
「今だ!鎧坂!」
「はい!来い、空虚!トランスフォーム、千手観音像!」
その時、鎧坂が千手観音形態の鎧を呼び出す。
そう、俺たちの作戦とは、次に転移してきたチェシャーネコの攻撃を受け止め、その隙に鎧坂の鎧で捕縛するという単純明快なものだった。
鎧は空中にいて身動きの取れないチェシャーネコに向かって一斉に無数の手を伸ばし、捕まえる。
「…!」
捕えられたチェシャーネコは、逃れようと必死に手の中でもがく。
機動力はあるが少しパワーに劣る千手観音立像では、このままでは逃げられてしまう。
「そうはさせません!トランスフォーム、ゴーレム!」
だが逃がしはしない。
鎧坂は、今度は鎧を巨大なゴーレム形態にする。
ゴーレムはその二つの巨大な手でチェシャーネコの胴を掴み、がっしり抑え込んだ。
「…!…!!」
チェシャーネコがいくらもがいても、その手がほどける気配は全くない。
あと五秒。
「よし、これならいける!弾正さん!」
「あいよ!錠前二つとも破壊してやらあ!」
間髪入れず、弾正さんは白く輝く弾丸を二発発射する。
最初の弾丸は、チェシャーネコの口元の黒い錠前を粉砕する。
次の弾丸も、首の錠前を破壊しようとしていた。
あと、四秒。
よし、これはもらった。
そう思った刹那。
「…ニャアアアアアアアアアア!」
チェシャーネコの姿が消えた。
『「「「「えっ!」」」」』
嘘だろ!あと四秒は残ってたぞ!
いったいどうして…。
だが、否応なしに俺の意識は痛みと記憶の奔流に呑まれていった…。
朝、ふと目を覚ます。
今日は休日。起きるのには、まだ少しだけ早い。
どうしてこんな微妙な時間に、目を覚ましたんだろう?
そう思って、ふと傍らを見ると、いつの間にか自分のベットの中に、あの黒髪の少女が潜り込んで、穏やかな寝息を立てていた。
自分は自然に微笑んで、少女の頭を撫でる。
まどろみの中、少女は呟く。
お母さん、と…。
俺は意識を浮上させる。
そうだ、チェシャーネコ!
どこだ!どこに行った!
『みんな、後ろ!』
慌てて後ろを振り返ると、そこにはほどけた鎖を揺らめかせ、禍々しい気配を放つチェシャーネコの姿が。
「…フシャアアアアアアアアアアアアアア!」
チェシャーネコは鋭くならんだ歯を見せながら威嚇して。
いきなり弾正さんの前に転移して、前脚を横なぎに振るう。
「弾正!」
「っち!」
弾正さんは銃身で攻撃を防ごうとする。
「がっ!!」
「弾正先輩!」
直撃は免れたものの、そのまま弾正さんは吹き飛んでいった。
「荒木!これって!」
「ああ、間違いない。やつは…。」
チェシャーネコは、連続で転移できるようになってる!
懸念は、とうとう現実のものになってしまった。




