the disappearing smirk and encounter 4
チェシャーネコは鋭く長い爪を、俺の背中に突き刺そうとする。
「うおりゃああああああああ!」
俺は体を捩じりながら、後ろに向かって思い切りハンマーを振るい、それに対抗する。
爪とハンマーは甲高い音を立てて衝突し、弾き合う。
その突きの威力は、あの化けウサギの蹴りには及ばないものの、かなりのものだ。
だが、この程度なら…。
「っらああああああああ!」
俺は一度後ろに飛んで衝撃を殺した後、今度は正面からチェシャーネコ目掛けてハンマーを振り下ろす。
それに対して、チェシャーネコも負けじと前足を繰り出す。
言うならば、巨大猫パンチと言ったところか。
だが猫パンチと違うのは大きさだけでなく、速さも桁違いに素早い。
まともに食らえば吹っ飛ぶのは間違いないだろう。
俺のハンマーと、チェシャーネコの前足が激突する。
轟音が鳴り響き、ハンマーと前足は数秒拮抗する。
だがすぐに、徐々に俺のハンマーが押していく。
さっきの無理な姿勢からの一撃が互角だったのだ。
まともに打ち合って俺がパワー負けするはずがない。
チェシャーネコの足元の地面に、徐々にヒビが入り、押しつぶされていく。
この調子なら、いける!
「うおおおおおおおおお!」
俺は両腕に思い切り力を込める。
チェシャーネコのニタニタ笑いはだんだん引っ込んでいき、そして。
にやり。
思い切り嗤いやがった。
「なっ!」
唐突に手ごたえがなくなり、俺はハンマーを思い切り地面にめり込ませてしまう。
チェシャーネコの姿は、ない。
「荒木!後ろ!」
鞘華の声に反応して、慌てて俺はハンマーを地面から引き抜く。
後ろを振り向くと、俺に迫る巨大な爪が。
俺はそれをハンマーで受け止めようとする。
だが、間に合わない。
「くそっ!」
『龍太!』
「荒木!」
「荒木先輩!」
爪が俺を切り裂こうとする刹那、突然チェシャーネコが再び消える。
その直後、さっきまでチェシャーネコがいた空間を通り過ぎる無数の白い弾丸。
「大丈夫か、兄ちゃん。」
「助かった、弾正さん!」
「おう。あんまり一人で突っ走るなよ。折角これだけ仲間がいるんだからよ。」
そうだった。今の俺は一人じゃない。
「荒木の馬鹿。心配させて。」
「荒木先輩、怪我しないでくださいよ。」
『龍太―。もー、無茶しちゃだめだよー。』
「悪い悪い。気を付けるわ。」
俺たちは、再び木の上に退避したチェシャーネコを見据える。
「んじゃ、気を取り直して、第二ラウンドといこうか。」




