the disappearing smirk and encounter 3
「おい、姉ちゃん、大丈夫か!」
「鞘華先輩!」
『さやかー!けがはないー!?』
遅まきながら、弾正さん、鎧坂、リョウの三人が駆け寄ってくる。
「大丈夫。荒木が上手く受け止めてくれた。」
「そうか…。こんにゃろ、良くもやってくれたな!」
弾正さんはチェシャーネコ目掛けて銃を連射するが。
「…。」
「なっ!」
弾が当たる前に、チェシャーネコの全身が突然消えた。
「ど、どこ行きやがったあの猫!」
弾正さんはきょろきょろあたりを見渡す。
「あ、あそこです!あの木の上にいます。」
鎧坂が指さした方向を、俺たちは一斉に見上げる。
そこには、口を裂けそうなほど広げてニタニタしながら、こちらを見下ろすチェシャーネコの姿があった。
その体には、今までの襲撃者と同様に、太く黒い鎖が巻きつけられていた。
鎖を束ね、留めている黒い大きな錠前が二つ。
一つはニヤついている口の端に、もう一つは鈴の代わりに首元にぶら下げられている。
血走った目は大きく見開かれ、鋭く並んだ歯の隙間からはよだれが垂れている。
四本の脚から伸びている異常に長い爪は、鋭くとがっていた。
先ほど鞘華の刀の本体の刃と打ち合ったはずなのに、その表面には傷一つない。
恐ろしく固いのだろう。
「なんなんだアイツ!いきなり消えたと思ったら、あんなところにいやがる!」
銃を構えながらも、弾正さんはひどく混乱している様子だった。
「弾正さん!あの猫はチェシャーネコっていうらしい。あいつは消えるって、さっきのカエルが言っていた!」
「そういうことは先に教えといてくれよ、兄ちゃん!そしたら警戒解かずにすんだのに!」
「ごめん!俺も詳しく聞けなくて、良く分かってなかったんだ!こんな風に本当に消えたり現れたりするとは思わなくて!」
くそっ!予めみんなにチェシャーネコのことを伝えなかったのは完全に俺の失敗だ!
子豚に気を取られ過ぎて忘れてた!
「来い、空虚!二人とも、そういうのは後にしてください!来ますよ!」
ロボットスーツ形態の鎧を出しながら、鎧坂が俺たちに向かって叫ぶ。
事実、チェシャーネコの姿は再び消え始めていた。
「っ…!リョウ!」
『うん!』
俺は慌ててリョウを呼び寄せ、ハンマーに変身してもらい、構える。
チェシャーネコの姿は尻尾の先からだんだん消えていき、最後にニタニタ笑う口だけが残った。
…あいつ、俺たちを完全になめてやがる。
「…口だけの猫。可愛くない。」
鞘華。可愛いとか可愛くないとか、今はそういう問題じゃないんだよ。
そして遂に、口元も消えた。
数秒の間、辺りを沈黙が支配する。
そして遂に、チェシャーネコが再び現れる。
『龍太、後ろ!』
出現したのは、俺たちの背後だった。




