the disappearing smirk and encounter 2
数分間、俺たちは辺りに目を配り、神経を張りつめながら歩き続けた。
しかし何も起こらない。
「…なんも出てこねえぞ、姉ちゃん。」
弾正さんは集中力を切らし始めている。
「鞘華先輩の見間違いじゃないですかー?」
鎧坂は最早集中しようともしていない。
完全に気を抜いている。
『まあまあ、誰にだって見間違いはあるんだし、仕方がないよー。むしろ何もなかったんだから良かったよー。』
リョウが鞘華をフォローしようとする。
三人とも、さっきのは鞘華の見間違いだと完全に確信しているようだ。
「…。」
だが、俺はそうは思わなかった。
鞘華とはこの世界に来てからの短い付き合いだが、彼女の動体視力と反射神経には何度も助けられている。
俺にはどうしても、鞘華が今更見間違えたと思えないのだ。
「…、ごめん。やっぱり私の見間違い。」
鞘華はそう言って、銀雪を消す。
だがその眼は変わらず警戒の色を宿していた。
「そうか。よし、じゃあもうこいつは仕舞っていいな。ずっと出してると肩凝っちまう。」
弾正さんも彼の銃、ホワイトホークを消す。
「うーん、ボクも疲れましたー。」
鎧坂は思いっきり伸びをする。
お前は絶対疲れてないだろ。
『僕も元に戻るよー。やっぱりこっちの方が落ち着くやー。』
リョウも黒いハンマーの状態から、小さな赤い竜へと戻る。
「よし、じゃあ気を取り直して、アリスを探し出して、さっさと助けに行きましょー!」
『おー!』
鎧坂が言って、リョウが続いて掛け声をあげる。そして先へと進み始めた。
俺たちも後へ続こうとした刹那。
「…!はあっ!」
突如鞘華が銀雪を再び顕現させ、飛び出し、刀を振り下ろした。
甲高い金属音と共に、鞘華は何かと激突する。
「…くっ!」
「…!」
そして両者ともに、後ろへ弾き飛ばされた。
「鞘華!」
予め身構えていた俺は、駆けだして鞘華を受け止める。
「大丈夫か!?」
「…大丈夫、ありがとう。」
幸い鞘華にダメージはない。
だが襲撃者の方にもダメージを与えられなかったらしい。
相手は宙返りをして上手く着地する。
「…油断したように見せかければ、必ず出てくると思った。でも、あれはどういう…。」
どうやら鞘華の計略が上手く行ったらしい。
だが、不可解なことがあるのか、浮かない表情をしている。
「あいつがどうかしたのか?」
そう言って、俺は新たな襲撃者、大きな猫を見据える。
「あの猫…。なにもないところから出てきた。」
それを聞いて俺が思い出したのは、先ほどのカエルの言葉。
「…消える、猫…。」
これが、俺たちが出会った中で最も厄介な敵の一体、チェシャーネコとの出会いだった。




