the disappearing smirk and encounter 1
「…どうしてもダメ?」
「いや、ダメだろ。つーか無理だろ。」
子豚を全く離そうとしない鞘華を、俺たちは説き伏せようとしている。
「おいおい、姉ちゃん。その豚持ってどうやって戦うつもりだよ。」
「むう…。なら戦闘中は鎧坂にぷー君を持ってもらう。」
名前まで付けちゃってるよ。
「えー、嫌ですよー。ボク動物ダメなんです。」
「なら、弾正。」
「いやいや、姉ちゃん。おっさんも戦うとき両腕塞がってるから。」
「じゃあ荒木。」
「え、いや、俺も手塞がってんだけど…。」
「荒木の役立たず。」
「何故俺だけ貶す?!」
『龍太だからー。』
「それどういう意味だよ?!つーかなんでお前が答えてんだよ!」
俺たちの声が騒がしかったのだろう。
その時、鞘華の腕の中でスヤスヤ眠っていた子豚が目を覚ました。
「ぶ、ぶう…?…ぶ、ぶぶう!」
「…あ。」
子豚はもぞもぞ動くと、鞘華の腕から抜け出して、地面にぽてっと着地する。
そして下から俺たちを見上げた。
「ぶう!」
ありがとう、とでも言っているかのように一鳴きすると、トコトコ歩き出して茂みの中へと去って行った。
「…行っちゃった。」
肩を落として鞘華は落ち込む。
「まあ、いいじゃねーか。どっちにしても連れていくだけ足手まといだしな。」
「…荒木の馬鹿。」
あ、なんかそっぽ向かれた。
俺嫌われるようなこと言った?
「もういい。私にはリョウ君がいる。」
そう言って、鞘華はリョウをわしわしと撫でる。
『だからやーめーてー。』
リョウは凄く嫌がって、俺の方へ逃げてきた。
「むう…。リョウ君まで取られるとは…。荒木、許すまじ…。」
何故だ。身に覚えのないことで、鞘華にどんどん嫌われていく。
この中で一番一緒にいるのに…。
「兄ちゃんと姉ちゃん、仲いいなー。」
「本当ですねー。」
どこがだよ。
その時だった。
「っ!!銀雪!」
鞘華がいきなり刀を出現させて、俺の背後へと構える。
俺たちも慌てて振り返るが、特に変わったものは目に入らない。
「…?どうした、鞘華?」
「…今そこに何かいた、と思ったんだけど…?」
「何もいませんよー?」
「…。見間違いだったみたい。驚かせてごめん。」
そう言ったが、鞘華は刀を出したままだ。
おそらく警戒しているのだろう。
「リョウ、お前もハンマーになっとけ。」
『りょうかーい。』
「やれやれ。俺も準備しとくかね。」
「ボクはいいです。鎧はいつでも出せるんで。」
弾正さんは銃を出し、鎧坂はそういいながらも油断なく辺りを見渡している。
警戒したまま、俺たちは慎重に進んでいった。
「…。」
それを見つめる、大きな目が二つ。




