the quick piglet and a warning 1
「なんじゃ、こりゃ…。」
屋敷から出ると、またまた珍妙な光景に出くわした。
「ぶうぶうっ、ぶうぶうぶうっ!」
服を着た小さな子豚が、四足で凄まじい速さで駆けまわっていた。
それをカエルが困った顔で見ている。
「あんたら、無事に出てきたか…。早速で悪いんだが、あいつを止めてやってくれないか。わしには無理でな…。」
確かにこの速さは手に余りそうだ。
「あ、じゃあボクがやります!」
鎧坂が手を上げる。
確かにこの中で止められそうなのは鎧坂だけだろう。
俺や鞘華、弾正さんでは子豚の動きを無傷で止めるのは難しい。
「じゃあ鎧坂、任せた。」
「中坊、失敗するなよ。」
「がんばれ。」
「はい!あ、弾正さん!今度こそ最後までボクに任せてくださいよ!」
「分かってるよ。」
「なら安心安心。よし、いっけー!空虚!トランスフォーム、千手観音像!」
鎧は今度は最初から千手観音の姿で出てきて、無数の手を子豚へと伸ばす。
「ぶうぶう!ぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶぶ!」
だが子豚は凄まじい速度でそれらを次々と躱していく。
速すぎて、子豚の姿がブレて良く見えないほどだ。
「ほう、やりますね、子豚ちゃん。でも、これならどうですか!」
そういうと、鎧の無数の手が一斉に伸びていき、まるで何かを編むように子豚を囲んでいく。
「ぶう、ぶぶぶ?!」
それは、子豚を中心に編み上げられた籠となる。
「つっかまーえたっ!」
「ぶぶうー?!」
鎧坂はその籠をどんどん狭め、子豚を追い詰めていく。
そして遂に、腕の一本が子豚を捕えた。
「ぶぶぶ、ぶうぶうぶー!」
俺たちはこの段階で初めて、その子豚の姿をはっきりと目にした。
何故かベビー服を着ているその子豚は、全身に黒い鎖が絡まっていて、その鎖は背中の小さな黒い錠によって留められていた。
事情を知っている俺たちは黒い鎖によって子豚が操られているのを知っているが、傍から見れば子豚が鎖に絡まってじたじたしているようにしか見えない。
まあ、そのじたじたも凄い高速なんだが。
鎧坂の鎧は、がっちり子豚を抱えたまま、背中の錠前を握りつぶした。
「ぶぶぶぶ、ぶ、ぶ、ぶ…、ぶう…。」
黒い鎖が消えていくと同時に、だんだん大人しくなっていき、最後にはくったりと意識を失って、全身の力を抜いた。




