the crazy cook in smoke 5
「で、鎧坂。あの能力はなんなんだ。」
俺は、顔にくっきり指の痕の残ってしまった鎧坂に尋ねる。
「いててて…。あ、はい。ボクは空虚の大きさ、外見、スピード、姿を変えられるんです。」
そ、それは強すぎる…。
「ただ流石に自由自在というわけにはいかないです。ある程度は制限がかかります。
例えばさっきのゴーレムは大きくて力強いですが、スピードはありません。千手観音像は速くて手数が多いですが、力はそこまで強くないんです。
それにあまりに大きかったり人型じゃなかったりすると、動きがイメージできなくて上手く操れないんです。」
なるほどな。なんでもかんでも自由にはいかないってことか。
『良かったねー、自分のポジションが脅かされなくて。』
「うるせえ。」
リョウが俺をからかってくる。
あ、安心なんかしてねーぞ。
「それより弾正先輩!なんで最後とどめ持ってったんですか?!」
「お前のドヤ顔がうざかったから。」
「酷いです!」
どうやら弾正さんと鎧坂の相性はとことん悪いらしい。
二人がギャーギャー言い争いをしていると、倒れていた料理人が起き上がった。
「おい、大丈夫か?」
俺が声を掛けても、料理人はぼーっとして反応する様子はない。
それにしても顔でかいなー。
目は血走っていなくて、不気味な笑い声も上げていないが、顔のデカさのせいで不自然さがぬぐえない。
料理人はしばらくすると、はっと意識を取り戻して、鍋の元に駆け寄る。
さすが料理のプロ…と、思ったが。
料理人は鍋の中のスープに向けて、大量のコショウをぶちまける。
コショウは蒸気と共にもうもうと巻き上がり、辺りに飛び散った。
「ゲホッ、ゲホッ。おい、あんた何やってんだよ!」
弾正さんが呼びかけるが、料理人はコショウが舞う中で咳一つ出さず、一心不乱に鍋を混ぜ続けている。
「こほっ、これはつらい。」
『煙たいよー。目に染みるー。』
「ごほごほ、早く出ましょうよ、こんなとこ。」
「ゲホッ、そうだな。」
俺たちは、料理人から何一つ聞き出せず、屋敷から撤退した。




