the crazy cook in smoke 3
「それじゃあ、よろしく、空虚!」
鎧坂がそう呼ぶと、さっきの鎧が鎧坂の前に現れる。
鎧はそのまま弾幕の中へと飛び出していった。
「なっ!」
「えっ!」
「おっ!」
「ゲへッ!」
当然鎧には大量の食器が飛んでくるが、それらはその白い表面に傷一つ与えられない。
だがそれでも勢いは殺せないようで、鎧はなかなか料理人の方へと迫ることができない。
「うーん、このまま押し切れると思ったのですが…。」
そう言うと、鎧坂は目をつむってため息をついた。
「まあ、いいでしょう。奥の手に隠しておこうかと思っていたのですが、今使ってしまいます。」
鎧坂は目を開く。
「ボクの姿はボクが決める。トランスフォーム、ゴーレム!」
すると鎧はどんどん大きくなっていき、その姿も見る見る変わっていく。
「こ、こいつは…。」
「おっきい…。」
「すげえ…。」
最終的に鎧は、巨大な金属の人形へと変わった。
先ほどまでのロボットスーツ型とは打って変わり、その造形は武骨で、ごつごつしている。
その姿は、まさしく純白のゴーレムといった感じだった。
鎧は襲い来る食器をものともせず、ずんずん進んでいく。
遂に料理人の前に来ると、鎧は手を伸ばして料理人を捕まえようとする。
「ゲへへ!」
だがその動きは愚鈍で、腕は簡単に料理人に躱される。
「ゲへへへへ!」
料理人は両手にフライパンを持って鎧へと殴りかかるが、鎧には全く効かない。
しかし鎧の攻撃も、料理人には全く当たらない。
「くそっ、埒が明かねえ!」
俺はリョウを持って飛び出そうとするが。
「まあまあ荒木先輩、ここは任せてください。」
鎧坂に止められた。
「…行けるんだな。」
「はい!」
「よし、じゃあ任せた。気をつけろよ。」
まあ、こいつなら大丈夫か。
「はい、大丈夫です!ボク自身は何にもしないんで!」
うん、絶対大丈夫だ。
「…こいつここに置いて行こうかな…。」
それは可哀想だからやめてあげて、弾正さん。
「トランスフォーム、千手観音像!」
鎧坂が叫ぶと、再び鎧の姿は変わっていく。
大きさは変わらず、でもよりスリムに。
そして背中と脇から、生えてくる無数の手。
現れたのは、白い千手観音像だった。




