the crazy cook in smoke 2
食器はおびただしい数の弾幕になって、こちらに襲い掛かる。
俺、鞘華、弾正さんは三人がかりでそれを叩き落とし、切り刻み、撃ち落としていく。
だが料理人は次から次へとどこからともなく、ナイフやフォーク、スプーン、お皿、果てはお玉やフライパンまで取り出しては、こちらに高速で飛ばしてくる。
俺たちはそれらへの対処で手いっぱいで、攻撃できる暇がない。
状況は、明らかに不味かった。
「おい、鞘華!この食器、まとめて斬り飛ばせないか!」
「…この家ごと斬り飛ばしていいなら。」
『それはダメだよー!この家だって、アリスの無意識の世界の一部なんだから!』
「くそっ!なら弾正さん!」
「悪いな、兄ちゃん。俺もこの家傷つけずにやれる自信は無い。」
チクショウ、完全に手詰まりだ。
「おいリョウ、本当にダメなのか?!」
『ううー、出来ればやめて欲しいけど…。いざって時には、仕方ないかな…。』
「今がその時だろ!このままじゃやべーよ!」
そう、すでに俺たちはじりじりと後ろに下がらされていた。今更逃げ出そうにも、後ろを向いた途端に背中を無数の食器が襲うだろう。
『うう…。そ、それじゃあ…。』
リョウが禁断の決断をしようとした時だった。
「ちょっと、先輩方!ボクのことを忘れてませんか!」
『「「「あ…。」」」』
本当に忘れかけてたよ、鎧坂のこと。
「なんだよ中坊。お前、この状況なんとかできんのかよ。」
「さっきはあんなに怖がってた。大丈夫、鎧坂?」
「大丈夫です!戦うのはボクじゃなくてボクの操る鎧ですから。」
鎧坂は胸を張った。
「それに、いざとなったら先輩方に任せて逃げますから!」
胸を張って言うことじゃねえ!?
「…あとでもう一回あいつシメよう。」
「あれ、弾正先輩なんか言いました?」
「なんでもねえよ。やれるなら早くやってくれ。」
弾正さんの不穏なつぶやきは、幸い鎧坂には聞こえなかったようだ。
がんばれ、鎧坂。
頑張って、生き残るんだぞ。
俺は心の中で合掌しておいた。
「南無…。」
鞘華、念仏は唱えるな。
少なくとも、まだ早すぎる。




