the crazy cook in smoke 1
屋敷の中に入ると、すぐに大きな部屋があった。
あちこちに調理器具がぶら下げてあるところを見ると、どうやら台所のようだ。
いや、大きさからいって厨房か?
その部屋は窓がなく、しかも煙が立ち込めていて、とにかく薄暗かった。
天井にぶら下げられたランプだけが頼りの明かりだった。
部屋の真ん中には大鍋がかまどにかけられていて、そこから煙がもうもうと出ていた。
そしてその大鍋を覗き込む人影が一つ。
こちらに背を向けて、ひたすら鍋をかき混ぜている。
「あのー、すみません。」
鎧坂が声を掛けるが、こちらに気付く様子はない。
「あのっ!すみませんっ!」
鎧坂が大声を上げると、その人はゆっくりと大鍋をかき混ぜるスピードを緩めて、止まった。
「…リョウ。鞘華、弾正さん。」
『うん、分かってるー。』
「了解。」
「あいよ、兄ちゃん。」
俺たちは武器を出現させて構える。
「え、なんですか、先輩方?いきなり?」
「おい、中坊。お前、戦闘苦手だろ。下がってろ。」
「え、あ、はい。」
リョウは俺たちの後ろに下がる。
大鍋の前に立っていた人物は、ゆっくりこちらへと振り向く。
見えたのは、体に対してあまりにも巨大な男の顔面。
そいつは血走った眼を見開き、口元を歪ませて嗤う。
「ゲへへへ、ゲへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへへ。」
その男は全身に黒い鎖を纏い、頭のコック帽には大きな黒い錠前が一つ、付いていた。
「またこの流れか…。」
『なんでいっつもみんな変な声で笑うのかなー?』
「大きな錠前。強そう。」
「やれやれ、室内の戦闘か…。厄介だな…。」
「え、あいつ敵ですか?敵なんですか?やだ、怖い!」
俺たち(一名を除く)は油断なく武器を構える。
まず弾正さんが錠前に向けて、弾を放つが。
「ゲへへへへへへへへへへへへ!」
「チッ…、ま、そうなるわな…。」
料理人らしき男は片手に持ったお玉で弾を次々と弾いていく。
「ゲへッ!」
反対に今度は料理人が、どこから取り出したのか、大量の食器を手に持つ。
そしてそれらは、ひとりでに一斉にこちらに飛んできた。




