Extra story / Sora Yoroizaka 3
「そう、だったね…。ボクには、中身なんてなかったんだった…。」
ただお母さんに認めてもらいたくて、自分の内面を削り続けているうちに、ボクには自分の意思も、願望も無くなっていた。
『分かったろう?君は、君のお母さんが望んだ姿になろうとした、張りぼての人形に過ぎないんだ。』
鏡のなかのそいつは、ボクに呼びかける。
『でももう、君は親の期待する姿を維持することさえ出来ない。だからこうして今も、外側が剥がれて、空っぽの中身を晒していっているんだ。
もういいだろう、このまま消えたって。君は十分頑張ったし、十分苦しんだ。
その消失に身を任せなよ。そうすればもう頑張らなくても、苦しまなくてもいい。』
ボクは改めて鏡で自分の姿を見た。
もう体の殆どが剥がれ落ち、消えていた。
残っているのは、顔と、手足の一部だけ。
…もう、いいか。頑張らなくても。
ボクは目を閉じた。
…本当に、このまま消えてしまってもいいの?
「…だめだ。」
ボクは目を開ける。
『…どうしてだい?もう君には何も残っていないのに。』
「ボクはまだ、何もこの世に残していない。そんなのは嫌だ。」
『何かを残す?君に出来るのかい?あれだけ頑張っても何も得られなかった君に?』
…ボクが頑張った、だって?
「ボクは一度たりとも、頑張ったことなんかないよ。自分のためじゃない頑張りなんて、所詮紛い物だよ。」
『…へえ。じゃあ君は、これから自分のために頑張るっていうのかい?』
「うん。」
『…ふふ、あは、あははははははははははははははははははははは!』
そいつは突然、上機嫌に笑い出した。
『いいのかい?自分のために頑張るっていうのは、今までより何倍も、辛く、苦しいよ?それでもやるんだね?』
「うん。やるよ。」
『ならいいよ、試練は合格だ。さあ、ボクの手を取って。』
ボクがそいつの手を取ると、ボクを囲む全ての鏡が空気中に溶けるように消えていく。
一方、ボクの姿は剥がれ落ちていた部分がもとに戻って行った。
『君には力を上げる。どんなものにも押しつぶされない力を。』
そう言って、そいつの姿もボクの中に溶けるようにして消えていった。
ボクはもう、生きる理由を他の人に求めたりしない。
自分のあるがままに生きていく。
取りあえず、将来のことはじっくり考えてみようと思う。
でもまずはその前に、この鎧、もうちょっとかっこよくしてみよう。




