empty armor in front of the crazy house 5
俺たちは、まだ伸びている二人を起こそうと揺り動かす。
「おーい、大丈夫かー。起きてくれー。」
「う、うーん。」
最初に起きたのは魚のほうだった。
魚はしばらくぼんやりと辺りを見渡していたが、突然ハッと意識を覚醒させて飛び上がった。
「いけない!女王陛下の元へ戻らなくては!」
そう言うと魚は駆けだして、あっと言う間に森の中へと消えていった。
余りにもすばやくて、俺たちはただ見送ることしか出来なかった。
「ふう…。やれやれ、ひどい目にあった。」
次にカエルが目を覚ました。
「どっこらしょっと。」
カエルは屋敷の玄関口近くに腰を下す。
「あの、大丈夫ですか?痛いところはありませんか?」
鎧坂がこう尋ねると、カエルは少しムッとした口調で言った。
「痛いところはないか、だって?わしは今全身が痛いよ。どっかの誰かさんが無駄に殴り続けてくれたせいでね。」
「うっ…、すみません。」
「とくに痛いのは背中だよ。どっかの誰かさんが無駄に吹き飛ばしてくれたおかげでね。」
「す、すまん…。加減を間違えた。」
鎧坂と弾正さんは謝る。
「その点、お嬢さんは見事だったよ。一瞬であの邪魔くさい錠前と鎖を断ち切って。わしもお嬢さんに対処して欲しかったよ。」
「…ありがとう?」
鞘華は逆に褒められた。
「お兄さんは論外だな。何もしていない。」
何故かついでに俺も貶された。
カエルはそれっきり黙ってしまって、ぼんやりと空を見上げてしまった。
『ねえ、カエルさん。ここに黒い髪で目の青い女の子は来なかったー?』
リョウが尋ねると、カエルはこちらを見ずに答える。
「ああ、来たよ。」
『本当?このおうちの中に入ったの?』
「さあ、それは知らん。わしはずっとここに座っておるだけじゃからな。」
なら普通分かるだろ!
こ、このカエルも扱いずらいな…。
「取りあえず、中に入ってみません?もしかしたら、中にアリスがいるかもしれませんし。」
「そうだな…。こんなところで突っ立っていても、しょうがないしな。おいカエル、入ってもいいか?」
「それもわしの知ったことじゃないね。」
こいつ、なんのためにここに座ってるんだ?
よく分からないカエルのことは置いといて、俺たちは屋敷の扉の前に立つ。
近くで見ると、その屋敷にはあちこち黒い鎖が巻かれていて、不気味な感じを醸し出している。
静まりかえっていて、中からは物音一つ聞こえない。
「じゃ、行こう。」
鞘華はそう言って、扉を塞いでいた鎖を斬り捨てる。
鎖はあっさりと崩れ落ちて、再生する気配はない。
俺たちは扉を開いて、中へと入って行った。
「…気をつけてな。」
カエルの呟き声は、扉が閉まる音にかき消されて俺たちには届かなかった。




