the big caterpillar in the mushroom grove 8
「すげーな、兄ちゃん!あんなでっかい竜巻をだせるなんて!これで怖いものなしだな、あっはっは。」
弾正さんは俺の竜巻を何故か気に入ったらしい。
俺の背中をバシバシ叩いて来る。
やめろ。まだ気持ち悪いんだ。うっぷ。
べたべたしてくる弾正さんとは反対に、鞘華はさっきからリョウを抱えて俺から離れて、まるで便所のゴキブリを見るような眼で俺を見てくる。
確かに目の前で吐いたのは悪かったと思うけど、そこまでするのはちょっとひどいと思う。
「…不潔。」
『ばっちいねー。』
そこまでかよ!
若干傷付いて俺はうなだれる。
「つーかなんでリョウはいっつも鞘華の味方なんだよ!」
『だって今回は僕たち同じ被害者だよー。僕だって至近距離で君のゲロ見させられたわけだしー。』
「ぐう…。そりゃあ、まあ、そうだが…。」
確かにリョウはハンマーとして俺の一番近くにいたしな…。
「女の子の前で戻すとか…、最低…。」
ぐさっ。
チーン。
鞘華が俺のメンタルを仕留めにくる…。
俺は心と体のダメージとでその場に這いつくばった。
その時。
「う、うーむ。」
転がっていた青虫が目を覚まし、傍で項垂れていた俺と目が合う。
「…。」
「…。」
場に漂う謎の緊張感。
「…何こっち見てんの。」
「あ、はい、すみません。」
青虫の厳しい口調に思わず謝ってしまう。
「…水煙管。」
「はい?」
「水煙管、取ってきて。」
そう言って、青虫は転がっている先ほどの管の付いた壺を脚で示す。
これ、水煙管っていうんだな。
「はい、どうぞ。」
俺の差し出した水煙管を黙って受け取ると、火をつけて吸い、煙を吐き出した。
「…壊れてる。」
あ、そういえばそれ、俺がハンマーで殴りつけたり弾正さんが銃で撃ったりしてたな。
「なんか、すみません。」
「…。」
き、気まずい…。
「あんたら、誰?」
唐突に、こう聞かれた。
「あ、荒木龍太です。」
「鬼頭鞘華。」
「弾正忠志だ。」
『リョウだよー。』
「あ、そう。」
そう言うと、青虫は水煙管を一口ふかした。
「…あんたらさ、もっと丁寧に出来なかったのか?」
すまん。でもこっちも必死だったんだよ。口では言わないけど。
「そりゃ、あの忌々しい黒い鎖から解放してくれたのは感謝してるがね。煙管は壊され、お気に入りのキノコは滅茶苦茶。文句の一つも言いたくなるよ。」
「…すんません…。」
「ごめん。」
「すまんね。」
『ごめんなさい…。』
「謝るなら初めから気を付けて欲しいものだな。」
こ、この青虫ムカつく…。
それ以降、青虫は煙管をふかすだけで何も言わない。
数十秒の沈黙の後、最初にリョウが口を開いた。
『そ、そろそろ行こう…?』
「そ、そうだな…。もう行こうぜ、兄ちゃんたち。」
「そうね。」
「あ、ああ。」
俺たちはそろそろと歩き始めるが。
「待ちな。大事な話がある。」
青虫に呼び止められる。
「…あの子を助けに行くのだろう?」
あの子って言うのはアリスのことだろう。
「ああ、そうだ。」
「…猫に気をつけろ。」
猫?
気になったが、それについてはもう口を開いてくれなかった。
青虫はある方向に脚の一本を向ける。
「そっちにまっすぐ行くと良い。」
どうやら次に行くべき場所を教えてくれてるらしい。
「あ、ありがとうございます。」
礼を言ったが、青虫は黙って水煙管をふかすばかりだった。
やっぱりこの青虫は最後まで良く分からない奴だった。




