the big caterpillar in the mushroom grove 5
「うおおおおおお!」
弾正さんは銃を乱射して、糸の塊を次々と撃ち落としていく。
撃ち漏らしたものも、鞘華が片っ端から衝撃波で切り裂いていくので相手の攻撃がこちらに当たることはない。
だが同様に、こちらの攻撃も阻まれて向こうには届かない。
相手は無数の脚で、何本もの管を操ってくる。一対多数でも、このままでは膠着してしまう。
「俺が前に出る。」
「行けるのか、兄ちゃん?」
「ああ、サポート頼む、弾正さん、鞘華。」
「了解。」
「あいよ、行ってきな。」
二人に糸への対処を任せて、俺は飛び出す。
二人が糸を撃ち落としてくれるおかげで俺の方に糸はほとんど飛んでこない。
流石に全くとは言えないが、それも余裕をもって避けられる程度だ。
俺の接近に気が付いた青虫は、すぐさま迎撃せんと管を何本も俺に向ける。
「っらあああ!」
だが俺はハンマーを振るい、それをまとめて弾き飛ばしていく。
青虫が陣取っているキノコの下へたどり着くと、俺はそれをハンマーで横殴りにする。
キノコは根本からちぎれ、ゆっくりと倒れる。
上に乗っていた青虫も、バランスを崩して地面に落ちてくる。
青虫は持っていた管を地面に叩き付けることで、上手く衝撃を殺して着地する。
「はああああああああ!」
体勢を建て直す隙を与えず、俺は青虫目掛けてハンマーを叩き付ける。
だがコンマ数秒の差でハンマーをすべての管で受け止められ、俺は弾き飛ばされる。
でも、これでいい。
瞬間、青虫は糸も飛ばせないし、管も操れない。
ほんの一瞬、でもこの一瞬を作るために俺は動いた。
「撃ち抜け、ホワイトホーク。」
その刹那、白い閃光が飛来し、壺に付いた錠前を撃ち砕いた。
コンマ数秒遅れて、鞘華の衝撃波も青虫の胸元目掛けて飛んできたが。
「ちっ!」
「なっ!そんな…。」
そちらは惜しくも錠前をかすめていき、黒い鎖の一部を破壊しただけで終わった。
錠前を二つ同時に壊せなかった。
それを悔しく思いながら、俺たちは覚えのある頭痛に意識を呑まれて行った…。
雪の降る寒い冬のある朝、自分は黒髪の少女と温かい格好をして外にいた。
初めて見る雪に興奮して、積もった雪の上を走り回る少女。
自分は少女が転んでしまうのではないかとハラハラしている。
案の定、少女は足を滑らせて雪の上に倒れる。
慌てて駆け寄るが、今度は自分が足をもつれさせ、少女の隣に倒れる。
雪はとても冷たくて、でもとても柔らかい。
少女と二人、互いに雪まみれの顔を見合わせ、そして笑い転げる…。
三回目で慣れたのか、俺が茫然自失の状態から自分を取り戻すのは前より早かった。
だが俺たちには、安心している暇も、頭の中に流れ込んできた記憶のことを考える余裕もない。
「ケヒェヒェヒェ、ケヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェヒェ!」
悪夢の第二ラウンドが始まろうとしていた。




