the mad monster and white bullets 5
「いやー、びっくりした。なんかいきなり頭痛がして、知らない記憶が思い浮かんで、気が付いたら兄ちゃんのハンマーがドラゴンになってるんだもんなー。オレとうとう頭がおかしくなったかと思ったよ。」
弾正忠志と名乗った男はリョウの頭をぐりぐり撫でながらそう言った。
リョウはすげー嫌そうな顔をしている。
俺たちは今、ひっくり返って動かない巨犬の横で座り込んで話をしている。
おっかないのであんまり巨犬の近くにいたくないのだが、弾正さんがリョウを見て騒ぎ始めたため仕方なくリョウのことを説明することになったのだ。
そのまま自己紹介をしたり、記憶を照らし合わせたりしてその場にとどまり続けてしまっているのが現状だ。
弾正さんいわく、彼は試練を乗り越えた後ずっと寝ていたのだが(彼らしい…)、彼の無意識の世界に突然扉が現れ、その中から影が出てきて彼の世界を呑みこみ、気が付くとこの世界にいたそうだ。
「なんかいつの間にか川の流れる夕方の草原にいてさ。どうしようかと思ったんだけど、まあなんとかなるって考えてその場で寝てたんだよね。そしたら上流から小舟が流れてきて、誰が乗ってると思ったらなんか鎖に繋がれた女の子が三人いるじゃん?可哀想だと思って鎖を撃ってみたんだけどすぐに元に戻るからどうしようもなくてさ。」
「そうなんですか?俺たちはその娘たちどうにかする前にここに来ちゃったんですよ。」
「敬語はいいよー、別にそんな偉い大人ってわけではないしさ。
それでなんかアリスを助けろみたいなこと言われたと思ったら、急に周りの草が伸びてきてさ。気付いたら森の中で、森を出たら部分的に壊れた家があって、入ってみたらなんか囲まれてて。迎撃してまた森の中に逃げ込んだら今度はデカいワンちゃんに襲われて、ってなんかすごい大変な目に合ってたんだよねー。」
「そ、そうか…、大変だったな弾正さん。」
「お疲れ、弾正。」
鞘華、流石に呼び捨ては不味いだろ。めんどいから言わないけど。
『うにゃー!!もう放してよー。』
「おう、悪い悪い、チビ。」
『だから僕はリョウだってばー。』
まあ、弾正さんも俺らのこと兄ちゃん、姉ちゃん、チビ呼ばわりだから別にいいか…。
「そろそろ行こうぜ。この巨犬が目を覚ましたらめんどくさいことになりそうだ。」
逃げてきたリョウを肩に乗せて立ち上がり、俺は言った。
その時だった。
不意に背後で音がして、振り向いた俺の目の前にあったのは馬鹿でかい犬の鼻。
「くうーん、わんわん!」
巨犬が起きてしまっていた。




