the mad monster and white bullets 4
俺たちは改めて巨犬に意識を向ける。
その犬は、何メートルもある大きな体にぐるぐると太く黒い鎖を巻き付けている。
特に首には何重にも巻かれ、まるで首輪のようになっている。
錠前は見当たらないが、男のいうことが正しければ首の毛の下に隠れているはずだ。
巨犬は血走った眼をギロリとこちらに向け、その巨体からは信じられないようなスピードでこちらに駆けてくる。
「銀雪よ、獣を縛る鎖を斬り裂け。」
鞘華が衝撃波の塊を放つが。
「グワアアアアアア!」
巨犬は再び咆哮で衝撃波を散らしてしまう。
その足は少し遅くなっただけで、止まらない。
「オラアアア!」
次いで俺がハンマーを振るうが、また前足で受け止められる。
俺と巨犬は、衝撃を殺すために互いに後ろに跳び、距離をとる。
「チッ…、どうする鞘華?俺たちの攻撃通じねーぞ。スピードも向こうが上で追いつけねえ。」
「大丈夫、私が隙を作るから、荒木は一度下がって、ちょうどいい時に攻撃して。」
「分かった。」
俺が鞘華の斜め後ろに下がると、鞘華は衝撃波を次々と放った。
そのすべてに咆哮で対応するのは無理なのか、巨犬はある時は躱し、ある時は前足でいなしながらこちらに進んでくる。
そして遂に、俺たちの目の前に来た。
鞘華が衝撃波を放たんと銀雪を振り上げ、巨犬がそれに対抗するために咆哮せんと口を開ける。
そこで俺が前に飛び出す。
「うらあああぁぁぁぁ!」
俺は巨犬の顎に下から思い切りハンマーを振り上げる。
「グエッ。」
強制的に口を閉ざされ巨犬の咆哮は不発に終わり、俺は反動を利用して後ろに下がる。
直後、巨犬の顔に鞘華の衝撃波が直撃する。
「ギャン!」
痛みと衝撃で、巨犬は大きくのけぞる。
『「「見えた!」」』
露わになったその首元には、確かに大きな錠前が一つ付いていた。
その瞬間。
「撃ち抜け、ホワイトホーク。」
その声とともに、後ろから白い光が飛んできて錠前に当たり、粉々に砕く。
「ギャウン!!」
巨犬はその余波でひっくり返って、そのまま伸びてしまった。
錠前を破壊できたことを喜ぶ間もなく、俺たちは覚えのある頭痛に襲われ、頭の中を知らない記憶に塗りつぶされていく…。
自分はあの青い目を持つ黒髪の少女と花咲く野原に来ていた。
少女に手を引かれ、中腰になりながら色とりどりの花の間を駆けていく。
目を輝かせ、色々な花の名前を片っ端から聞いてくる少女は、本当に楽しそうだ。
少女が自分を見て浮かべる笑顔は、心から幸せそうで…。
ああ、そうだ。
俺はあの表情を、あの感情を知っている。
でも、どうしても、それをいつ、どこで見て、感じたのかを思い出せない…。
頭を抱える俺を、ハンマーからドラゴンに戻ったリョウがじっと見ていた。
「まだ、思い出せないんだね、龍太…。」




