first battle with the monstrous rabbit 1
「私の無意識の世界は暗い洞窟だった。あとで天井に穴が開いて明るくなったけど。」
「へー、俺の無意識の世界はだだっ広い灰色の大地だった。やっぱ人によって違うんだな。」
「私の無意識の世界にも、黒い扉が現れた。開いてみたら、突然出てきた影に黒く塗りつぶされ、気付いたらこの世界に私の無意識の世界ごと呑みこまれてた。」
「俺たちも同じだ。」
「その後夕方の草原に出て、小舟に乗っていて鎖に繋がれた三人の女の子に会った。」
「それも一緒だ。」
「アリスを助けるよう頼まれた後、突然辺りに霧が満ちて、気が付くと水辺に立っていた。しばらく歩くと、動物たちに襲われている現場に出くわした。」
『そこは違うねー。僕たちは穴の中に落とされて、ここまで落ちてきたからねー。そこからもいろいろあったし。』
物語の流れを全く知らない俺たちに先回りなど出来る筈もなく、俺たちはただ当てもなく歩いていた。
少し霧が晴れて見晴らしは良くなったものの、相変わらず目印になるものは何もない。
せいぜい海とは反対方向に向かっていることぐらいしかない。
ただ黙って歩くのも気まずいので、俺と鞘華は互いの経験と知識を照らし合わせることにした。
もっとも、お互いに自分の無意識の世界で何を経験したのかは絶対に言うつもりはないが。
そのせいでお互いに話すことは尽き、話題はさっきのおかしな動物達に移る。
「それにしても、さっきの動物たちは強烈だったなー。」
「確か不思議の国のアリスの登場人物は全員個性的だったはず。」
『それにしても個性的過ぎだよー。おっきいしー。』
「それは多分私たちが縮んでいるという設定。」
「げっ、俺たち小さくなってんの?!もとに戻れんの?」
『別に現実の肉体が小さくなってるわけじゃないし大丈夫でしょー。』
「それもそっか。」
そんなことを話しながら歩き続け、遠くに森らしき黒い影が見えてきた頃。
最初に異変に気付いたのはリョウだった。
『…今何か横切らなかったー?』
「「えっ…?」」
慌てて立ち止まり辺りを見渡すが、特に何か動いている様子はない。
リョウの気のせいか、見間違いでは?
そう言おうとした刹那、視界の左を黒い影が通り過ぎる。
「…リョウ。」
『あいよー。』
「…銀雪。」
俺はハンマーになったリョウを、鞘華は刀を構え、背中合わせになる。
気のせいなどではないとはっきりと分かる。
霧の中に何かいる。
俺たちを囲む霧の中に目を凝らすと、俺たちを中心にぐるぐると高速で動き回る影がおぼろげに見えてきた。
俺たちよりも大きな影が、霧の中を目で追いきれないほど早く動いている。
その事実に俺は戦慄した。
だがそれでも必死に目を見開き、その影を見切ろうと努力する。
不意に霧の流れが変わった。




