the opening of the war 2
歩き出したはいいものの、人影は全く見当たらない。
民家も何かの店もあるが、この霧のせいか家々はカーテンを閉めひと気がなく、店はシャッターを閉め切っている。
交番も見つかれないし、かと言って知らない家のインターホンを押して聞くのは気が引ける。
現代っ子の悲しい性か…。
「誰も居ねえ…。」
交差点の真ん中で俺は呟いた。
あまりにも人がいないので、ついに俺は他人の家のインターホンを押したが、その勇気は報われることはなく、その家から誰か出てくることはなかった。
いや、その家からだけではない。
次の家からも、その次の家からも、そのまた次の家からも…。
誰一人出てこない。扉も窓も、カーテンさえも開かない。
この町には誰もいないのか…?
せめてここがどこか知りたい。
地図なり、公衆電話なり、標識なり何か手がかりになるものも探してみよう。
こんなところさっさと抜け出して、家に帰ろう。
しばらく歩いても相変わらず誰も見つからなかったが、何も収穫がなかったわけじゃない。
なんとなく、この景色に見覚えがある気がする。
辺り一面霧に覆われているのではっきりしたことは言えないけど、なんかこう、記憶に引っかかるのだ。
かなり大きな建物の前に来た。これは…学校か?
少し霧が晴れてきているのか、少しずつ建物全体が見えてくる。
………は?
なんでこんなところにこの小学校があるんだ?
ここはあの町なのか?
あの地獄のような日々を過ごした町なのか?
そんなわけがない。俺がこの町に戻ってくることなんて絶対ない。
意識を取り戻したとき、俺は立っていた。
まさか意識を失っている間に自分で来たのか?
俺は混乱したままふらふらと歩き出した
気付いた時には俺はあの家の前に来ていた。
…間違いない。ここは、あの町。
俺がガキの頃過ごした町だ。
目の前の家は、俺とあの人が暮らしていた場所だ。
分からないことが多すぎる。
どうして俺はこの町にいる?
どうしてこんな濃い霧に覆われている?
どうしてこの町は誰もいない、まるでゴーストタウンのような状態になっている?
次から次へと疑問が湧いてきて、頭の中をぐるぐると回る。
頭が痛くなってきて、俺は記憶にある通りの扉の前で頭を抱えて座り込んでしまった。
どれくらい経っただろうか。
いい加減頭痛も治ったので俺は立ち上がる。
もう何もわからない。ただここから離れてどこかに行ってしまいたい、その一心だった。
前を向いた時俺の目に映ったのは。
「人…か?」
霧の中に霞む人らしき影だった。
今まで散々探して見つからなかったのに、このタイミングで自ら現れたことに俺は気味悪さを覚えたが、この人を逃すと誰にも会えないかも知れないことを恐れて人影に駆け寄った。