black chain, black lock, and silver sword 1
「っ…!っ…!」
『だいじょーぶー?』
「…。」
大丈夫じゃない。ケツも舌もめちゃくちゃ痛い。
俺は思わずその場で蹲った。
『どうやらこっちの世界に来てから、君の体は現実の体により近くなったみたいだねー。これはますます無茶なことは出来ないよー。』
「そうっ…みたい…ひゃな。」
『無理にしゃべんなくていいよー。』
「いや…ひい…もう大丈夫だ。」
いい加減痛みも治まってきた。もう動ける。
『そう、それじゃあ行こうかー。』
そう言うと、リョウは黒いハンマーに変化して俺の手元に収まった。
『何が起こるかわからないからねー。』
「そうだな。」
そして俺は、目の前にある長い長い通路を進み始めた。
こういう一見何もない場所ほど罠が仕掛けられているものだ。
俺は緊張を保って警戒しながら歩いて行った。
特に何もなかった。
『罠なんてないよー。警戒するだけ損だったねー。』
「う、うるせえ!」
長い通路を無駄に時間を掛けて無事に抜け、付きあたりの角を曲がると、そこには細長い広間があった。
天井にはランプが一列に吊り下げられていて広間を照らしているが、実際にはほとんどのランプが消えていて広間は仄暗い。
壁にはずらりとドアが付いているが、全て黒い鎖で閉鎖されていて開きそうにない。
「うーん、これはもう鎖ごとドアぶっ飛ばすか?」
『なんか思考が暴漢みたいになってるよー。まあ、なにもかも破壊すればいいって思うのはやめた方がいいと思うよー。鎖はともかく、ドアは元からここの世界の一部かも知れないんだから、下手に壊すとどんな影響があるか…。』
「…おい、その壊すとどんな影響があるか分からない無意識の世界に俺たち大穴開けてるんだが…。」
『…。』
「…。」
『ま、まあ今何ともないんだしいいじゃん。』
「ちっ、後で覚えとけよ。」
『取りあえず、鎖だけ壊してみよーよ。』
「ああ。」
俺は肩慣らしにハンマーを一振りする。
自分の無意識の世界から出て感覚も変わるかと心配したが、幸いリョウハンマーは変わらず俺の手になじむ。
これなら俺の無意識の世界で鍛えた成果が使える。
俺は手近なドアに近づく。
鎖はドアに密着しているが、構わず俺はハンマーを振り上げ、鎖めがけて思い切り振りおろす。
現実ならばドアごとぶっ壊しているところだが、ここは無意識の世界。
俺は強い意志を持てば、思うがままにリョウハンマーを扱うことが出来る。
「ぶっ壊れろ。」
狙い通りにハンマーは鎖だけに当たり、黒い鎖は甲高い音を発して砕け散った。
「よし、これでこのドア開けられるな。」
これで先に進める。
俺はドアノブに手を掛けてひね…れない?
「…へ?」
『どうやらもともと鍵がかかってるみたいだねー。』
「えー…。」
訂正。まだ先には進めないらしい。




