the invitation of her nightmare 2
目を開けると、見たこともないほど広い草原にいた。
目の前には、小川が一本流れている。
太陽が高く昇っていれば一面の緑を目に出来たかもしれないが、その太陽は今まさに地平線の向こうに沈もうとしていて、目に見えるものすべては緑の代わりに赤く染まっていた。
「これは…現実、か?」
『違うよー。』
「リョウ!」
『いやー、ビックリしたよー。どうなるかと思った。』
リョウはハンマーから小さなドラゴンに戻って、俺の肩の上に乗った。
「お互い無事だったみたいだな。
…ここが現実じゃないのは確かなのか?」
『うん。前にも言ったけど、僕は表にも出れない弱い人格なんだ。そんな僕が表に出て、何よりこんな風に実体を持っているなんて、外の世界ではありえないよー。』
「そうだな。てことはここは俺の無意識の世界のままなのか?大分様変わりしているが…。」
そう言って俺は辺りを見渡す。
『それが違うんだよねー。
あの時僕たちは、君の無意識の世界ごとこの世界に呑みこまれたんだ。』
「はっ?じゃあここは、一体…?」
『多分、ここは他の人の無意志の世界だよー。』
「おいおい、それって大丈夫なのか?俺の無意識の世界は無事なのか?」
『今は大丈夫。でもいつ戻れるか分からないや。』
「そうか…。でもどうしてこんなことになったんだ?他人の無意識領域に呑まれるなんてありえるのか?」
『今までそんなことは一度もなかったよー。こんなことが出来るのは…そうだね。君をこんな風にした、メールの送り主、かな?どうやったのか、何のためかはさっぱり分からないけどねー。』
本当、何がどうなっているんだか。
「とりあえずどうする?こんなところで立ち尽くしていても何も始まらないぞ。」
『そだねー。とりあえず川沿いに歩いてみる?』
「ああ、川上と川下、どっちがいい?」
『なんとなく、川上!』
「了解。」
しばらく歩いたところで、上流から何か流れてくるのが見えた。
近づくにつれて、それが小舟だと分かる。
夕暮れの中では、誰が乗っているかまでは分からない。
「…リョウ。」
『うん、念のため、ハンマーになるね。』
「頼む。」
その小舟には三人の少女が乗っていた。
三人の白いドレスは夕日で赤く染まっている。
こちらをじっと見る少女たちは。
「な、んだ…これは…。」
まるで罪人のように黒い鎖に繋がれ、頭には黒い布で目隠しをされていた。
三人を乗せたカヌーはゆっくりと近づいてきて、やがて俺の目の前で止まった。
少女の一人は少し偉そうに言う。
「あの子は黒い縛めに囚われてしまったわ。」
少女の一人は優しげな声で言う。
「私たちも黒い鎖に囚われてしまったの。」
少女の一人はやんちゃそうな口ぶりで言う。
「あの子は囚われた世界を、廻り続けなくちゃいけないのよ、あの黒猫と一緒に。」
三人の少女は言う。
「「「だからお願い。私たちを、あの子を、アリスを助けて。」」」
その言葉を聞くや否や、俺の足の下の地面が突然消えた。
「なっ!」
『あれ?』
俺たちはそのまま暗い穴の中へと落ちていった。
「うおおおぉぉぉぉぉ。」
『うわああぁぁぁぁぁ…あ、僕空飛べるんだった!』
「お前も落ちろおおおぉぉぉぉぉ。」
『あ、やめて、尻尾掴まないでえええぇぇぇぇぇ。』
「…みんなを悪夢から救ってきなさい。必ずよ。」
「…お願いします。」
「…お願い。」
少女たちは何もできず、そのまま流されていく。
彼女たちが解放されるときは果たしてくるのか…。




