resistants and teaching of the duchess 3
「公爵夫人は、とても教訓好きな人なんです。」
詩織が解説する。
教訓っていうか、ただのオヤジギャグなのでは…。
「教訓は、探せばどんなものにでもあるものよ。」
公爵夫人はドヤ顔で言う。
ぶっちゃけうぜえ。
「それはそうとあなたたち、わたしのネコを助けてくれたみたいね。どうもありがとう。」
公爵夫人のネコ…?
…っ、チェシャーネコのことか!
「そうだ、チェシャーネコ!チェシャーネコはどうした!」
俺は慌てて周りを見渡す。
「落ち着け、兄ちゃん。チェシャーネコの錠前はちゃんと全部破壊できてただろ。」
弾正さんが俺をなだめる。
そうだった。もう戦闘は終わっていた…。
「で、そのチェシャーネコはどこに行ったんだ?」
周りを見渡しても、あの巨体は見当たらない。
「知らない。私たちが起きた時には、もういなかった。」
鞘華が答える。
「あのネコならきっとそこらへんにいますよ。神出鬼没ですからね。」
公爵夫人が言う。
というか、なんで公爵夫人がそんなこと分かるんだ?
俺の顔を見て、俺の疑問を察してくれたのだろう。
詩織がそのわけを教えてくれた。
「公爵夫人は、チェシャーネコの飼い主なんです。」
ふーん…、…え?
「ええっ?!この人、あんなでっかいネコ飼ってんの?!」
俺は大声で驚いてしまう。
「荒木驚き過ぎ。馬鹿みたい。」
「ぐはっ…。」
鞘華の一言に俺は倒れ伏す。
なんでこんなに鞘華は俺の心をぶっ潰しに来るんだ…。
「でも確かに、あんな大きなネコ飼えるもんですかねー?」
鎧坂が俺の疑問を引き継ぐ。
「うーん、なんといいますか…。『不思議の国のアリス』の世界では体の大きさはあまり関係ないんですよ。いろんな要因で、しょっちゅう大きさが変わりますから。私たち自身も、気付いてなかっただけで実はこれまで大きさが変わっているはずなんですよね。」
詩織が疑問に答えてくれた。
俺たち自身、大きさが変わっているとは知らなかったな。
「それで、俺たちはどれくらい意識を失っていたんだ?」
俺は尋ねた。
「そうね、そんなに長くはないわ。ほんの数十分程度よ。」
数十分もか…。
「そんなに寝てたら、十分遅れている。みんな、もう大丈夫か?」
「ん、大丈夫。」
「おう、行けるぞ。」
「頭にたんこぶできてますが、大丈夫でーす。」
「行けます!疲れはもう取れました!」
よし。
「公爵夫人、俺たちは次にどこに行けばいい?」
「あっちよ。まっすぐ海岸に行って、ウミガメもどきに会いなさい。」
「分かった。運んでくれてありがとな。」
そう言って、俺たちは先に進もうとした。
「待ちなさい!」
不意に、公爵夫人に呼び止められた。
「まだ、今回の教訓を言ってないわ!」
もうオヤジギャグはいいよ!
俺たちは無視して先に進み始めた。
「ネコだと思って油断しないでえええぇぇぇ…!」
後ろから、公爵夫人の声が響く。
「もうネコはこりごりですよおおおぉぉぉ!!」
俺は叫び返して、先を急いだ。
「そういう意味じゃ、ないのだけれどね…。」
公爵夫人の呟きは、残念ながら俺たちの誰にも届かなかった…。




