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セット   作者: 実月
1/2

第一話 「最低なあたし」

あたしと潤平じゅんぺいは幼馴染。


「おーぃ!真由まゆ!おっはよぉぉ!」


潤平は元気な声でそう言って毎朝あたしの家まで迎えにきてくれる。


あたしはわざと遅れるんだ。


「ごめん!今日も寝過ごしたぁぁ!昨日のドラマがおもしろくってさぁぁ!」


何かと理由を付けて。ね。


「おっせぇよ!」


潤平はそういいながらも、優しく待っていてくれる。


あたしはそんな潤平が大スキなんだ。


でも、えない。


だって、この関係が崩れたら、嫌なんだもん。


だって、潤平と一緒にいれたら、いいんだもん。


「ごめんってばぁぁ!」


あたしは、この時間が最高に幸せ!


「いいから、早くいくぞ!ほらっ。後ろ乗って!」


潤平はそう言ってあたしを自転車に乗せてくれる。


その時の潤平の背中は、大きくてあったかいんだ。


そして、あたし達は自転車の前と後ろで、時間いっぱいおしゃべりをするの。


このまま時間が止まればいいのに。


この自転車が、あたし達を違うところに連れて行ってくれればいいのに。



なのに、


なのに。


学校についちゃった。


あーあ。


あたしと潤平の席は遠いから、話せないよ。


なんだか、心も遠くなった感じ。


つまんないなぁ。。。


「真由!どうしたの!今日はテンション低いねぇ!」


この子はあたしの親友の、怜果れいか


怜果はずっとケイタイを見ているような人だけど、あたしの理解者。


今日もケイタイをずっと持っているけど、あたしの変化に気付いてくれた。


「あたしね。潤平が好き。」


あたしは思い切って怜果に言った。


そしたら怜果はね。


「告れ!告ればいいじゃん!」


って言ったの。


「そう簡単に出来るのなら、してるよっっ!あたしは、あたしは、潤平との関係がくずれるのが嫌なの!!」


あたしはそう言った。


どっちかっていうと、怒鳴った。


「そうか、そうか。」


でも、怜果はちゃんと受け止めてくれる。


「うん。。。」


あたしはもう半泣きだった。


「じゃあ告れ!!」


「はぁぁぁ!」


あたしは泣くのも忘れちゃった。


だって、聞いてくれたのに「告れ」だよ??


「なんでよぉぉ」


あたしは聞いた。


「だって、告らなきゃわかんないよぉ!」


「無理だよぉぉ!」


「無理じゃない!ウチが潤平のこと呼んでおくから!」


「・・・分かった。」


怜果はいい人だ。


いつもあたしの背中を押してくれる。


怜果は、昼休みに屋上に潤平を呼び出してくれた。



いよいよ昼休み。


すごい緊張。


こんなに緊張したことってないかも。


ドキドキする。


胸が張り裂けそう。


「怜果ぁぁ。やっぱり無理ぃぃぃ。。。」


あたしはそういった。


「何言ってんの!がんばってきなって!」


そういわれてあたしは教室を出た。



潤平はちゃんと屋上で待っていてくれた。


「話って何ぃ?もしかして、好きな人ができたから、俺に協力してくれって?高いぜぇ!」


潤平はいつもどおり。


そうだよね。


あたしのこの気持ちなんて、知らないもんね。


ねぇ、潤平。


あたしが潤平のこと好きって言ったら、何て言ってくれるの?


「おぃ。真由ぅ?」


「あっ。ゴメン!」


あたしは我に返った。


「あのね。あたし、あたし。。。」


「なんだよ?」


あたしのいつもと違う態度に、潤平もびっくりしてるみたい。


どうなるんだろ。


「あたしね。潤平が、潤平が好きっ!!」


あたしはそういった。


潤平は、すごくおどろいていた。


「うん。真由の気持ちは受け止めた。」


「。。。うん。」


あたしはもう、ドキドキが止まらなかった。


「でも、俺、好きな人がいるんだ。」


あ。そうなの。


ひっかかったね!


これはアンタの好きな人をさぐるための作戦だよ!!


そう言って、ごまかしたかった。


そう言って、もとに戻りたかった。


でも、言葉が出なかった。


「。。。。」


あたしの目からは、ひたすら涙がふくれあがって、頬を伝って行く。


そうだよね。


あたしなんかよりもいい人がいるんだよね。


「。。。ゴメンな。」


潤平。そんな顔しないで。


あたしが、あたしがあのままでいればよかったんだ。


あたしのせいだよ。


やっぱり告らなきゃよかった。


こんなにつらいなんて思わなかった。


涙が止まらない。


けど、やっとのことで言った。


「あたしこそ、ごめん。 潤平の好きな人って誰なの?」


小さな、小さな声しか出なかった。


聞いてどうするつもりなんだろう。


もっとつらいだけなのに。


「。。。怜果。」


潤平は、あたしに負けないくらい小さい声で言った。


それだけ言うと、「じゃあ」って走り去ってしまった。


あたしの涙は、もっともっとあふれだした。


そっか。


怜果なんだね。


怜果はいい人だもん、しょうがないよね。


あたしも怜果好きだもん。


潤平を困らせちゃって、ごめん。


ごめん。


怜果、潤平を幸せにしてあげてね。


あたしは、その場に立ち尽くしたまま、昼休みずっと泣いていた。



そしたらね。怜果があたしをむかえに来てくれた。


「負けたんだね。真由。大丈夫、大丈夫だよ。」


怜果はそう言ってあたしの頭をなでてくれた。


すごく暖かくて、気持ちが落ちつく。


それと同時に、くやしかった。


あたしは怜果にも負けたんだって。


怜果はいいなぁ。


あたしは、ねたんだ。


怜果は何も悪くないのに。


何も知らないのに。


こんなことを考えているあたしを慰めてくれる。


「教室に戻ろう。顔はもう大丈夫だからさ。」


怜果は言った。


「。。。うん。」


あたし達は無言で教室まで向かった。


涙はもう消えていた。


「怜果、ありがとね。」


あたしは本当にそう思っているのかな。


わかんないよ。


「別に。真由がつらい姿なんて、みていられないっての!」


潤平が好きになったのは、納得がいくなぁ。


「ねぇ、潤平って怜果のこと好きなんだって。」


無意識に言葉が出た。


それは、皮肉にも近かった。


どうしよう。こんなこと言うつもりは無かったのに。


あんなにはげましてくれて、いい友達だったのに。


それに、潤平の気持ちはどうなるの?


あたしが余計なことを言うから、潤平がまた苦しんじゃう。


潤平。ごめん。


潤平。


潤平。


潤平。


「ホントなの?」


怜果が言った。


びっくりしている。


「うん。ホント。怜果が好きだから、あたしのこと断ったんだって。」


あたし、また余計なこと言ってる。


なんで。


なんであたしは人に迷惑しかかけられないの?


最低。


ホントに最低。


自分がこんなに嫌なやつだと思わなかった。


「。。。そうなんだ。」


怜果もあたしの態度が嫌になったみたい。


そういい残すと、行っちゃった。


あーあ。


あたしの周りには、だれもいないよ。


一人ぼっち。


自分からそうなったんだ。


ありえない。


バカじゃないの。


もう、嫌だよぉぉ。

















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