第一回魔王決定抽選会
以前部誌に投稿した作品です。
第一回魔王決定抽選会開催!!
この度、第一回魔王決定抽選会を開催することになりました。
開催理由は、異界の勇者が魔王に会いに、フェルメリアに来てくれたからです。遠いトレオからわざわざ我が国に来てくれたのに、残念ながらフェルメリアには、お探しの魔王の肩書を持つ者はいません。そのため、いないのは仕方がないので、くじ引きで決めたいと思います!
魔王になりたい方は、一週間後の、イフリートの月の第一日、正午から王城前広場に集まってください。なお、抽選会に参加するには、事前の申し込みと参加費五百マナが必要なので、御了承ください。
~外れくじなし☆豪華景品プレゼント!!~
ちなみに、参加者全員にはもれなく『魔王軍の証』を差し上げます。『魔王軍の証』には守護結界の呪式が組み込まれているので、うっかり魔物に遭遇しても、これさえあれば、大丈夫(^_-)-☆
そして、めでたく魔王に選ばれた方には、『魔王グッズ三点セット(魔王の剣・魔王の鎧・魔王のマント *竜公『黒き闇の王』の鱗を原料とした、至高金属製)』と、さらにさらに『魔王七つ道具』として、お好きな魔法具(もちろん一級品!)を七個プレゼント!!また、この抽選会に参加された方々をメンバーとする、『魔王軍』の代表となっていただきます。(『魔王軍』の活動は、『魔王軍』交流会、街中の清掃、魔物の討伐等幅広いものを予定しております。)
その上、今回の抽選会では、魔王補佐や魔王参謀も決めます。もちろん、魔王補佐と魔王参謀用の景品(魔法合金製の装備や、魔法具など)もありますよ(^O^)
腕に自信がある方、友達を増やしたい方、偉くなりたい方は、ぜひぜひ参加してくださいね!
( b^v‐)‐☆
P.S.次の魔王決定抽選会開催時期は、俺の気分です。
フェルメリア国王
クライドロ・D・シアリオス・フェルメリス
「こんな感じでいいかな」
ウキウキと宣伝文を考えていた国王陛下に、
「遊んでないで仕事をして下さい、陛下」
有能な秘書は容赦なく突っ込んだ。
他国からは異端扱いされる、多種族国家・フェルメリア。そこは、何か違うところに力を入れるのが、お国柄である。そして、現フェルメリア国王クライドロは、まさにそんな人物であった。
◆◆◆
あ、死んだ。
――そう思ったところで、彼は目が覚めた。
目を開ければ、無機質な白が目に入る。彼は、額に手をやり、溜息をついた。ここ二、三日は本当に散々だった。
知らないうちにひき逃げされて、記憶が飛んだ上に入院する破目になるわ、意識を失ったときに訳の分からないとんでもない夢――何故かバリバリファンタジーな世界に勇者として召喚され(設定がベタベタだ)、魔王を倒さなければ元の世界に戻れないと脅され、無理やり旅に出され、魔物に襲われたり盗賊に襲われたりして、ようやくフェルメリアとかいう魔王がいる(と言われた)国に着いたものの、普通に出てくる魔物が何処かの秘境の主(ゲームで言えばラスボス)並みに強く(難易度高すぎ!!何処のクソゲーだ!)、うっかり全滅しそうになったところをフェルメリア人?(とりあえず人型ではあった。角があり、鱗があり、毛皮もあったが)に助けられ、王城に連れて行ってもらったが、フェルメリアの王様(自分と大して変わらなかった)に「魔王は今から決めるよ」と真顔で言われ(フェルメリアの王=魔王であると、自分を召喚した人間から聞いたのだが……)、よりによってくじ引き(しかも、募集は一般から……)で決めた魔王と戦うことになり、瞬殺(装備していた勇者グッズは、全く役に立たなかった)され、フェルメリアの王様に慰められ(じつは、くじに細工をして参加者の中で最も魔力の高い者を選べるようにしていたらしい。で、初代魔王は実は魔族の族長だったそうな。……詐欺だ……)、元の世界に帰りたいと嘆いたら、あっさり返してもらって、ハッピーエンド、になったのだろうか?――をみるわ、まあ、碌な事がなかった。特に夢が。あの夢は、嫌にリアリティーがあふれていて、それなのに、自分が今まで作り上げてきた常識ではありえなさ過ぎて、おかしくなりそうだったのだ。
長い夢から覚めた今でさえ、終わった筈の悪夢の残響がまだ繰り返され、憂鬱になる。
吐き気を覚えて口元に手をやると、手首からシャランと澄んだ音がした。
「――まさか、な」
手首にあったのは、洒落た腕環だ。幾つもの玉を連ねた意匠で、なおかつその一つ一つの玉には、人間技とは思えぬほど緻密で美しい文様が彫り込まれている。それは、夢の中でフェルメリアの国王が残念賞だと言って自分に与えた、『勇者の証』に酷似していた。というか、そのままではないだろうか?そして、彼はそれが以前からの自分の持ち物であったかどうかを、思い出すことができなかった。
呆然とする元勇者の手首で、腕輪を形成する玉の数々は不思議な輝きを放っていた。
◆◆◆
後に歴史に名を残すフェルメリアの『魔王軍』。
その結成秘話は、笑い話として長く伝わることとなる。