我ら科学部! Final
「我ら科学部!」シリーズの最終回ということで…。
「我ら科学部!」および「我ら科学部! 春」読み終えてからどうぞ。
今回も実話です。作者が酷い目に会っているということを理解して下さい。はい。本当に大変なんですから…。
その日、俺は普通に登校していた。
岡品 谷津。高校3年生。
片菜高校の科学部に所属している。
役職は副部長。とは言っても、名前だけである。正式なものではない。
俺はいつもの通り部長の乗ってる電車に乗った。
野御丸 仁。高校3年生。
片菜高校の科学部の部長である。
俺は電車内で一緒になった部長から衝撃的な一言を聞いた。
「あ、今日で部活引退だから。先生と相談してこうなった」
「え?嘘!?聞いてないぞ!」
俺は驚いて聞き返した。
「え?あ、うん。言ってなかった。他の人には伝えといたから心配するな!ノープロブレム!」
「そういう問題じゃ…。いや、何で俺だけ知らないの!?俺実は浮いてる?」
「いや、驚かせようかと思って…。他のみんなはあんまり親しくないからちょっと遠慮した」
「部長なんだから親しくしなさい!」
「で、まぁ、そういうことだから。何か一言言ってもらうよ」
「いいけど、今日俺、奨学金なんちゃらの説明会」
「ああ、どうせ15分で終わるよ」
「お前のクラスは昨日だったのか…」
そんな会話をしつつ学校へ向かった。
そして放課後。化学室。
ガラガラガラッ!
勢いよく扉を開けて入ってきたのは谷津。
「悪い!奨学金なんちゃらの説明が15分で終わるどころか40分かかってね」
事実、15分なんかでは終わらず。
こいつに嘘言われたと思っている俺。
「え?そう?昨日は早かったんだけどなぁ。まぁいいや。メンバー揃ったし、引退式やろう!」
そう言って黒板に書いてある行程表を見た。
そしてすかさず俺は叫んだ。
「ちょっと待ったぁ!4番の『谷津(笑)ば~か』って何だよ!」
「え?気にすんな」
部長が答える。
「おかしいだろ!それと最後の!『谷津の谷津による谷津のための熱いフリートーク(40分)』って何!?何で俺だけのコーナーがあるの!?おかしくね!?」
「うるさいなぁ。いいじゃん!」
「よかないよ!んで!さらにだ!端っこにちっちゃく書いてある『好きなジュースを谷津に奢ってもらう(全員)』って何!?おかしなことだらけじゃん!」
「え?まさかのダジャレ…?岡品ばっかりの行程表がおかしなことだらけって…」
「ダジャレなんか言っとらんわ!」
「あ~もういいから。ほら!始めるよ!」
強引に話を進める部長。
「腑に落ちねぇ~。絶対奢らねぇぞ!金無いんだから!」
そんな言葉は無視して、部長は会を進めた。
「まずは、3年生全員から一言ずつ言ってもらいます。えっと、しゃべる内容は、名前・クラス・志望大学・一言です」
そう言った後、部長は続けた。
「まずは奥から行きます」
部長は前に出て教段に上がった。
「えっと。野御丸仁です。3年1組です。志望大学は、まぁ…偏差値が高すぎて入れるか分かんないんですが…山堕留大学の教育学部を目指してます。えっと…。部長として1年間頑張ってきました。次の部長さんも頑張ってくれると思うので、是非、この部活を有名にしてください。ありがとうございました」
山堕留大学…。有名国立大学である。特に教育学部は凄い。仁には無理じゃね?というのが正直な感想。
「えっと。じゃあ次、座ってる順でいいや。言ってって」
部長が他の3年に声をかける。
どんどん進んでいく最後の言葉。
次は俺の番。そう思った時。
「谷津抜かして次お願い!」
部長がそう言った。
「!!!??何で!?」
俺は質問した。
「いや、だって…。ねぇ…うん」
「いやいやいやいや!おかしくね?最後とか嫌なんだけど…」
「いいからいいから。聞いてろって!」
強引に押し切られた。
そして、俺以外の全ての3年が一言言い終わった。
「最後に谷津ね」
部長が言った。
「いいか!40分トークがあるんだからあんまり喋るなよ!」
「マジでやんのかよ!…。分かったよ…」
そう言って俺は教段に上がった。
「えっと…。谷津です。3年8組です。志望大学は、倍率が低くてそこそこ頭がよくて入ってから楽で就職率がよくて暇な時間が多くて苦労しない理系大学がいいです。一言は…M-1から解放される幸せがすさまじいです」
やっとM-1から解放された…!やった…!やったよ…!
そう思ったその時…。
「え?今年も出させますよ!科学部代表で」
後輩が余計なことを言ってきた。
「いや、絶対出ないよ!あんた出なさいよ!」
「俺は絶対出ませんよ」
「ですよね~。分かります」
去年のM-1でも無理やりエントリーさせたらボイコットした奴である。絶対出ないよな…。
「次は、ひきつぎです。鴨川、前に来て」
そう言って部長が呼んだ二年生。
鴨川 聖。
次の科学部の部長である。
因みにこの人、めっちゃ化学に詳しかったりする。科学部で誰よりも化学に詳しいのである。
「えっと…。科学部をお願いします」
部長が言った。
「はい。頑張ります」
新部長がそう返した。
「以上で、ひきつぎを終わりにします」
部長が〆た。
「短っ!」
思わず突っ込んでしまった俺。
「次は~…。谷津(笑)ば~か…はどうでもいいや。先生から一言あります?」
「おーい!おかしくね!?じゃあ書くなよ!」
「はい、谷津うるさい!先生が話すんだからだまって聞けよ!」
「…あ~…」
とりあえず黙る。
先生が喋りだした。
この人が科学部の顧問である。
佐藤 幸子というおばちゃん先生である。
かなり特徴のある授業の仕方をする。
シャーペンの芯のことを「芯こ」と意味のわからない「こ」を付けたりする。これがきっかけでうちらの間では「しんこさん」と呼ばれてたりする。本人は知らないけど…。
他にも、人の名前を呼ぶときに「へぇ、じゃ、次の問題いくぜ。ん!岡品くん」などと言う。「へぇ」や「ん!」の意味は未だに分からない。擬音語が好きなのだろうか?
夏休みに「親子理科実験教室」と言うのがある。小学生とその保護者が化学の実験を体験しにくる企画である。うちらはその補助に回る。
俺がその補助をしている様子を見たのかどうか…。しんこ先生はおれのことを「マダムキラー」と呼び出したのである。
とことん変わった先生である。
説明してる間に話が終わった。
「次は~…。お待ちかね!谷津の谷津による谷津のための熱いフリートーク(40分)!谷津頑張ってね」
無責任に振ってくる部長。
とりあえず教段に上がる。
「え~と…。思い出的なものを喋りますか…。まず、この学校に入学し、この部活に入ったわけですよ。えっと、最初はよくわからずにはいったんです。はい」
ここまで喋ったら部長からヤジが飛んできた。
「熱くないぞ!」
「あ~?熱くない?そう?じゃあ…」
そういって一旦黙る。
そしてちょっと声を大きくして喋りだす。
「まず、親子理科実験教室!夏休みの!忘れもしない外は日食だった日!結局ね、曇っててなんだか分からんかったね!これ思い出!」
「残念な思い出だな…」
部長が言った。
「悪かったね!次!片菜祭!えっと、インフルがどうのこうので一般公開が無しでした。つまらんでした。これも思い出!」
「M-1についてコメントは?というかあのネタやってよ」
部長からの無理難題。
おととしのM-1もネタ無しで挑んだのである。
「M-1?もう!知らんよ!あんなの。ネタねぇ。よぉ~!やぁぁ~!」
謎の掛け声と同時に握りこぶしを前に突き出す。
一昨年はこんなことをして予選を突破してしまった。
「はい次!えっと…。二年になりましたぁ!そこにいる野御丸仁が実権を握りましたぁ!」
「実権って…」
しんこさんが何か言ってるけど無視。
「えっと…。二年目の親子理科実験教室ぅ!ショウノウ船の船の形を作るのが一番苦労しましたぁ!日食は無しでしたぁ!」
因みに船の形を作るっていうのは、プラスチックの薄い板をただ切るだけの作業。船の形(五角形)に挟み一つでやる作業が苦手でした。不器用だから。
「二年目のぉ!文化祭ぃ!一般公開しました!ダイラタンシーが大好評でした!まぁ、ダイラタンシーを作ったりブースの管理をしたりした俺のおかげなんでしょうが!」
「そんなわけないだろ!」
部長が口を挟んだ。
気にせず続ける。
「校門のとこに置いてあった人気投票でも30表くらい入ってました!どうよぉ!」
「いや、どうよと言われても…」
また部長が言ってきた。
無視無視。
「んで、最後!最後の思い出はいまここで立って喋ってることですかねぇ。何で俺!?おかしくね?」
「いいじゃん!別に!」
by部長。
「よくないわ!40分も持たんわ!」
因みに現在10分ほど経過。
「えっと…。思いで終了!何やればいいのさ!?」
「じゃあモノマネ!仁のモノマネやって!」
そう言ったのは同じクラスのやつ。
「えっと…。じゃあ…やるよ!いくぞ!」
そういってモノマネしてみた。
「ねぇ~今日地理やった?見せて~。いいじゃん~。減らないんだし~」
「うぜぇ!」
部長お怒り。
「でも似てない?」
「ん~…特徴は掴んでるけど似ては…」
クラスの奴の審査は厳しい。
「じゃあ次!沖縄行ったんでしょ!?シーサーのモノマネ!」
「へ?シーサー?ん~…。あくまで獅子だからな…。やってやるぜ!」
そういって机に両手を付けて姿勢を低くする。
「うががー!がおー!」
「あははは!何だそれ!?おいおいおいおい!」
受けは取れた。大事なものを失った気がするが…。
「次!えっと、佐藤先生のモノマネ!」
本人いるから!
「よしやってやる!」
それでもやる俺。
「ポッタリンコン!フリフリ!」
試験官に薬品を一滴垂らして振れ、という意味。
「うあ~…。先生!呼び出さないでくださいね…」
一応先生に言っておく…。
「…赤点だな!」
「NO--!それは無いですよ~!」
余計なことはするもんじゃないですね。はい。
「んで、もうやること無いから引っ込んでいい?」
部長に聞いてみる。
「え~?まだ15分しか経ってないよ」
「元からネタも無いのに40分は不可能だっつーの!」
そういって俺は教段から降りた。
「おし!今日はこれまでにするぜぇ」
佐藤先生が終わりを告げた。
これでもうこの部活に来ることはないのだ。
長いようで短かったな。
そう思った俺だった。
しかし、化学室を出るとき…。
「先輩、文化祭の時はどうするんですか?」
M-1すっぽかした後輩が聞いてきた。
「ん?多分暇だからここにいるわ」
「いいですけど…。思いっきりこき使いますよ?」
最後まで良い思い出のない部活でした。
でも、楽しかったからいいや。
そう思える部活でもあるのでした。
以上、「我ら科学部!」でした。
僕が化学部引退したんで、それに伴ってシリーズにもピリオドを打とうかなと思いました。
因みに、番外編としてやる予定もあります。
今年の文化祭。
多分化学部の方にずっといるのでネタがまた入ってくるわけですよ。
ま、一旦シリーズにピリオドを打ちますが、これからはずっと続けていけるようなペースでやっていきたいと思います。
(さらっと行ったけど水曜どうでしょうのベトナムの前に言ってたセリフですよ)
ありがとうございました。
まぁ、別の作品もあるので、そっちもよろしくお願いします。