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復活の魔女  作者: 杉山薫
魔法の種編
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3話

 僕は店内に入るなり驚愕する。人の配置が変わっているのだ。ちょっと、雇い主の女と喋って戻ってきただけなのに。


警官Aと警官Bの間に左端で通貨の話をしたオジサンが立たされいる。他の人は全員椅子に座っている。一瞬でか?


僕は壁にぶつかって歩いていた女の人に声を掛ける。


「よかった。ガルが捕まった」


へえ、左端に立っていた人はガルって名前だったんだ。通貨の名前じゃなくて、自分の名前がガルっていうんだ。


念のためもう一度。


「よかった。ガルが捕まった」


よかったね。


今度はずっと僕の席に立っていた女の人に声を掛ける。


「答えは泥棒」


は?

もう一度。


「答えは泥棒」


ああ、金庫破りは泥棒ってことか。

だから、どうした!


今度はずっと座っていたオジサンに声を掛ける。


「⋯⋯」


念のためもう一度。


「⋯⋯」


ん?

寝てんのかぁぁい!


最後は右端にいたオジサンに声を掛ける。


「ガルは泥棒だけど何処に隠したか忘れたらしい」


念のためもう一度。


「ガルは泥棒だけど何処に隠したか忘れたらしい」


そんなの嘘ついてるに決まってんだろ。さっさと嘘発見器にかければいいんだよ。


僕は警官Bに声を掛ける。


「警部、そうなんですがね。今、嘘発見器が壊れてるらしいんですよ」


今度は向こうが先かよ。


念のためもう一度。


「警部、そうなんですがね。今、嘘発見器が壊れてるらしいんですよ」


警官Aに声を掛ける。


「覚えていないなんて嘘ついてるに決まってんだろ。嘘発見器持ってこい」


その通り。


念のためもう一度。


「覚えていないなんて嘘ついてるに決まってんだろ。嘘発見器持ってこい」


最後にガルに声を掛ける。


「⋯⋯」


黙秘かぁぁい!


念のためもう一度。


「絶対にバレるもんか」


やっぱりお前が盗ったんか。

魔法の種。


僕はずり下がったメガネのボタンに手をやる。


ポチッ!


え、今ポチッっていう音したよな。


その瞬間、この店内での会話のすべてが僕の頭に走馬灯のように駆けていく。


わかった!


僕は左端の窓口に行った。


「いらっしゃいませ」


窓口の女の人がそう言うと目の前に浮かぶ文字。


預入。

引出。

貸出。

返済。

その他。


僕は引出を押す。


ピコっという音で文字が変わる。


名前。

ガル。

パスワード。


そうだよな。

絶対あるよな。

ええい、思い切って空欄。


引出物。

魔法の種。


確定。

エラー。


そうだよな。

パスワードが空欄のわけがない。


もう一度。


「いらっしゃいませ」


窓口の女の人がそう言うと目の前に浮かぶ文字。


預入。

引出。

貸出。

返済。

その他。


僕は引出を押す。


ピコっという音で文字が変わる。


名前。

ガル。

パスワード。


どうする?

あっ!

ガルが最初に言っていたセリフだ!


通貨。

引出物。

魔法の種。


確定。

エラー。


じゃあ、なんだよ。


僕はずり下がったメガネのボタンに手をやる。


ポチッ!


その瞬間、この店内での会話が走馬灯のように駆け抜ける。


「この世界の通貨はガル。左端の窓口で預けたり引き出したりできるよ」


そうだよ。

通貨ではなく通過だね。

通過の言葉でパスワード。

ダジャレかよ!


もう一度。


「いらっしゃいませ」


窓口の女の人がそう言うと目の前に浮かぶ文字。


預入。

引出。

貸出。

返済。

その他。


僕は引出を押す。


ピコっという音で文字が変わる。


名前。

ガル。

パスワード。

ガル。

引出物。

魔法の種。


確定。


なんか目の前に出てきた。

これが魔法の種か⋯⋯。


それを受け取ると窓口の女の人の声。


「ご利用ありがとうございました」


 僕は警官に報告に行こうとする。


あれ、なんかみんな立ってる?


壁にぶつかって歩いていた女の人。


「ガルが捕まった。夜も安心」


念のためもう一度。


「ガルが捕まった。夜も安心」


次はなぞなぞ女。


「ガルは犯人じゃない」


冤罪ってこと?


念のためもう一度。


「ガルは犯人じゃない」


次は。

寝ているオジサンはいいか⋯⋯。


次は右端にいたオジサン。


「魔法の種を使えば非エリートもエリートになれる」


そうなんだ。

僕も正規になりたい。


念のためもう一度。


「魔法の種には副作用があって直後の記憶が消えちゃうんだ」


え?

怖っ!

その副作用こわっ。


僕はガルに声を掛ける。


「オレはやっていない」


ハイハイ、犯人はみんなそう言います。


念のためもう一度。


「オレはやっていない」


僕は警官Bに声を掛ける。


「警部、これで署に帰れますね」


よかったね。


念のためもう一度。


「警部、これで署に帰れますね」


最後に警官Aに声を掛ける。


「お手柄だな。名探偵」


民間人に頼るな!


僕は事件が解決したので入口に戻る。


「ご苦労様。あたしはミホ。次もお願いね」


雇い主の女の声。


「僕はかおる。事件を解決するって気持ちいいね」


「そうね。じゃあ、またね」


そう言ってミホは消えた。

いや、最初から消えていたが⋯⋯。


 警察署の取り調べが終わったらしい。事件の顛末はこうだ。ガルは魔法使いになりたくて安価な魔法の種『金庫破り』を購入してメガバンクの貸金庫を破って高価な魔法の種を盗難。その後、自分の貸金庫にその魔法の種を隠したらしい。


『金庫破り』の魔法の種で既に魔法使いなんだがね。


なぞなぞ女の最後の言葉も気になるが、もういい。僕には関係のないことだから。



「ミホ、いつまでゲームやってんの! さっさと寝なさい」


「ママ、うるさいよ。かおるがグズだから時間かかったんだよ!」

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