第29話 嫌なひ
僕は、法律や警察と消防関係の知識はテレビのドラマぐらいです。
難しいことは、考えれないので濁してるところもあるのでご理解ください。
あのひ以来、倉西家・宮本家・秋原家が嫌なひがある。
倉西純とすみれと竜輝とあおいが亡くなった連続放火が再び起こること。
それによって死傷者が出ることもつらいのだ。
毎年やってくる命日の度に、当時の警察関係者と消防関係者が倉西家に訪れることもある意味嫌なことだ。
彼らが来る時は、陽架琉をせがれとたけしたちに預ける。
そして、二人の父親たちと一緒に彼らと対面をする。
警察や消防関係者は、仏壇に手を合わせた。
『魂蔵さん、犯人を逮捕出来ずに申しわけありません』
警察関係者が頭を下げる。
「あなたたちが、必死に捜査をしてるのをワシらは分かってる。頭をあげてください」
魂蔵は、深呼吸をしてからまた話しだした。
「ワシは、正直まだ犯人を捕まえないのかと思う感情はある。でも、あなたたちが嘘偽りなく必死に捜査をして、ワシらになるべく負担をかけないように気遣ってくれてるのを知ってるから」
警察の中には、嘘を事実に変えるものや被害者が悪いかのように言う者もいる。
倉西家を担当する警察関係者は、魂蔵たちの心情や一人生き遺った陽架琉のことも考えて事件のやりとりをしていた。
『もしよかったら、陽架琉くんに渡してください』
警察関係者たちは、陽架琉ように絵本やおもちゃと子供用のおかしを手土産にして持ってくる。
警察官ではなくて、一人の人間として手土産を持ってきている。
陽架琉が家にいない時間帯や魂蔵たちが都合の良い日程を合わせてくれる。
「ワシが陽架琉と亡くなった竜輝とあおいの友達には、できる限り関わって欲しくないってのを了承してくれた。本当は、捜査のために色々聞きたいこともあると思う。それでも、必要最低限の聞き取りで済ましてくれた。感謝しかない」
魂蔵は、あのひのことで警察とのやりとりで苦しむのは大人である自分だけで良いと思った。
それは、たくさんの死を見た経験と子供にとっては大切な人を失った孤独の苦しみを必要以上に感じて欲しくなかったからだ。
あのひのことを大人以上に多感な時を生きる子どもたちをより苦しめないかと不安でたまらないから。
でも、宮本家や秋原家の父親は「乗りかかった船だから」と魂蔵の隣で一緒に警察関係者と対面をすることになった。
「どうか、被害者と被害者遺族のためにもできる限り早い解決をして欲しい。心の底から早く安心をしたいんだ」
受験生連続放火殺傷事件は、もう十件以上の広い範囲で起こっている。模倣犯の可能性も含めると倍以上になる。
捜査が難航している要因は、いくつかある。
一つ目、被害者同士の共有点が受験生という以外ない。
二つ目、地域がバラバラ。同じ街で数軒あったと思ったら、別の場所でも放火もあるため広範囲で事件が起こる。
警察の管轄も違うことがあるため、捜査が複雑。
三つ目、事件発生時間帯が人通りが少ない深夜が平均的に多い。
四っ目、監視カメラが少なく、怪しい人物がいても顔がメガネやマスクに帽子やフードで隠れていることが多い。
男と女と身長がわかるが、身元につながる情報がない。
近年感染症対策として、マスクをする人が多く事件の関係者と決めつけるのが難しい。
五つ目、闇バイトの可能性が高い。下っ端を捕まえても芋づる式に捕まえるのが難しくボスまでなかなか辿り着かない仕組みが多い。
六つ目、どの事件も放火が共通する。被害者が逃げ遅れてケガや死亡する事例が多い。
深夜の放火のため、被害者宅の住人は寝てる場合があるため犯人の目撃が難しい。
七つ目、被害者や遺族と報道陣への対応。事件が頻繁に起こるためその都度の対応が必要になる。
八つ目、犯行手口が巧妙である。犯人を特定する証拠が残されなれてない。
と、いったことなどがあげられる。
そして、その連続放火殺傷事件は竜輝が受験生の時に起こってから、何年も犯人が捕まらずに悲劇が止まらない。
事件が難航してる理由がいくつかあって、事件の季節がバラバラなのだ。
受験シーズンの時もあれば、四月や六月などと違うのだ。そして、受験生であれば小中高と関係がない。
受験生だから塾が関係があるかと調べられたが、関連が見えなかった。
塾に通ってる者や通ってない者と家庭教師を雇っていて、同じ塾や家庭教師の人もいなかった。
『受験生連続放火殺傷事件』はまだ未解決であり、犯人を見つけない限り悲劇は止まることがないだろう。
消防関係者も、同様に倉西家に想うことがあるのだ。
もっと早く出動をし、素早く作戦をたて放水や救助をしていれば助かっていたかもしれない。
でも、彼らの想像を超えることが二つあった。
一つ目、要救助者である純たちが想定よりも出入り口に近い位置に倒れていたこと。
それによって、放火による被害者の中では綺麗な状態で魂蔵たちに会わせることが出来た。
二つ目は、陽架琉が現場にいなかったことだ。近所の人が通報した時に「五人家族の家が燃えている。小さい子もいたと思う」と言った内容があったからだ。
救助隊が純たちを発見して、人数を素早く確認をしたが小さい子が見当たらなかった。
救助隊が素早く、様々な可能性を頭に浮かべながら純たちを救助した。
そして、家の外で魂蔵が心の叫びと中に入ろうとする姿やその横でちよこが小さい子である陽架琉を抱きしめていたのを見たのだ。
それを見て、救助隊は複雑な心境だった。被害者を全員救助出来た安心感。
まだ燃えている家や目にしたくない被害者の無言の対面。
被害者遺族に、よく分からない状態で見せてしまった罪悪感。
幼い陽架琉に悲惨な現場を見せてしまったのが、心を苦しめる。
『今までも、様々な現場を見てきました。倉西純さんたちが玄関の近くにいらしたのに、もっと我々が早く救助をしていれば救えるのではないかと思いました。我々、消防隊が火事の原因を早く究明することで被害を減らせれるように尽力します』
消防隊は、魂蔵たちと対面する度にそう誓った。
「消防隊のみなさんは、ワシの要望もあるが、あのひのことを伝えてくれる。それでも聞くのも、つらいものがある。だけどな、原因解明をして遺族の心を気遣いながら説明するのも酷なことだろう」
魂蔵は、自分の家で火事が起こり息子たちを失った。その悲しみは言葉にはあらわしたくない。
魂蔵なりに、戦時を知ってるから避難のことも考えながら家を建てていた。
だから、なんとか純たちが早く発見されることになったとは思った。
魂蔵は、これから建てる家に住む人たちが少しでも生き延びれるようになるように、火事のことを苦しみながら聞いて設計図を書いているのだ。
それを元に宮本工務店では建物を建てている。
「我々に、消火訓練や勉強会をしてくれてる。古い知識が、アップデートされて救われる命が増えるから。すごく助かっているんだ」
消防関係は、魂蔵の呼びかけや連続放火殺傷事件を受けて消火訓練や勉強会を積極的にやるようになった。
「被害は、まだ起こってる。でも、ボヤが起きた時にすぐに安全に対処が出来る人が増えた」
連続放火殺傷事件は、犯人を捕まえない限りこの先何年も起こるかもしれない。
でも、知識を得れば命を守ることが出来る人が増えるのだ。
少しの間、沈黙が流れた。
「なぁ、俺から聞いても良いですか? 」
せがれの父親の勘助が手を挙げて言った。
「おう」
魂蔵が許可をした。
「今の捜査では、単独犯や複数犯とかめぼしい証拠は掴めてるのかってのを知りたいんだ」
この面談は、遠慮は出来るだけせずに話すことを互いに約束をしている。
「まぁ、ワシらが変な気を起こさないように犯人を特定する情報は言えないだろう。でも、勘助が知りたいって気持ちは分かる」
警察関係者は、一度下を向いて深呼吸をして口を開いた。
「魂蔵がおっしゃるとおり、犯人を特定する情報は言えません。私の推測でよければ、お伝え出来るのは単独の可能性は低いです。事前にお伝えしたように被害者同士に共通点がないからです」
被害者同士に共通点があれば、犯人を特定したり規則性を見いだしたりが出来るかもしれない。
でも、その共通点がないのだ。被害者たちが事件前に接触していないのは、警察の足取り捜査で分かっている。
「現在も、複数の署で連携して捜査をしております。単独犯や複数犯、闇バイトではないかと様々な観点で犯人の手がかりを探してます」
警察関係者は、真剣な眼差しをした。
「我々、消防からはどのような放火の手段かを研究をしてます。今現在では、手口には共通する部分がある可能も考えてます」
消防関係者は、複数の被害があった建物の燃え方や火元を照合をしている。
一部だけ一致する部分があるのは分かっているが。
毎年のように『受験生連続放火殺傷事件』は、起こっている。年に1度や数回の頻度で時期が、バラバラだ。
『受験生連続放火殺傷事件』関係か全く別の放火や火事なのかの判断が必要な場合がある。
そして、自然災害だったりと日々の事件事故があったりするため、思うように捜査が出来なかった。
それを言い訳にする気は、警察と消防関係者はなく日々『受験生連続放火殺傷事件』と向き合っている。
彼らの知り合いにも、その被害者がいるからより事件の早期解決をと勤しんでいた。
「俺からも良いですか? 」
たけしの父親の正智が手を挙げた。
「おう」
魂蔵が許可をした。
「俺が言うのもおかしいかもしれないけれど」
「正智、気にしなくて良い」
正智は、うなづいた。
「『受験生連続放火殺傷事件』って、言葉なんですが。聞く度に受験生が不安になると思うんです。事件に遭われた受験生がケガをしたけど無事だったり、その家族だけがケガや亡くなる場合があったりする。その言葉を変えることは、もう出来ないから」
正智は、深呼吸をしてからまた話しだした。
「もう、してるかもしれないけれど。不安になる受験生へのフォローをもっとして欲しいです。被害者やこれから受験生になって被害者になるかもとおびえる彼らの心に寄り添って欲しい。報道は、不安を煽るモノもゼロではないから」
「正智が言いたいことは、警察や消防署たちに受験生がいる家庭の被害者や被害に遭うかもしれないという不安を感じる人への心のケアや身を守るための対策を考えて実行して欲しいってことだな」
魂蔵は、正智の考えを汲み取ってそれを確認した。
「はい」
「それと、やっぱり報道が不安を煽ることがあるからな。ワシもそれを気にしている。今はほとんど減ったが、嘘偽りのことを広めるのもいるからな。その対策をして欲しい」
「出来る限りのことで良いので、お願いしたいです」
正智は、警察や消防関係者に頭を一度下げた。
「もう、起こったことは変えれないから。それが続かないようにして欲しいんだ。だって、陽架琉くんがまだ三才で両親やきょうだいを亡くしたんだ。そんな世の中はおかしいんだよ」
勘助が、少し涙の混じった声をして言った。
「じっちゃんたちが家族を失って、毎日必死なのに被害者が減らないし犯人が捕まらない。それと、被害者を苦しめる報道や外野の人たちを、俺は許せないんだ」
勘助は、少し怒りを込めた声で言った。
「勘助、気持ちはワシが痛いほど分かるから。落ち着け」
「悪い」
「おう」
「もう、そろそろ時間だな」
魂蔵は、時計を見て言った。
「ワシや勘助と正智が、あなたたちに伝えたことを忘れないでくれよ」
「「はい」」
警察や消防関係者と少し話した。そして彼らまた仏壇に手を合わせたてから帰った。
魂蔵にとって、命日は悲しくて苦しくてたまらないひだ。
警察や消防関係者が嘘偽りなく日々あのひと向き合って尽力をしてるのを知っている。
しかし、いつまでも経っても犯人は捕まらずに、被害者たちは増え続けるのが腹の底から許せずにいる。
本当は顔を合わせたくもないし、面談の時にもっと怒りに任せて怒鳴り散らしたい。
でも、そうしたって犯人が捕まるわけないから、意味がないのを知っているから。出来るだけ感情を落ち着けていたのだ。
魂蔵は、勘助と正智が一緒に、警察や消防関係者と向き合ったり自分の気持ちを代弁をしてくれるのが心の底から嬉しかった。
魂蔵は、早く嫌なひじゃなくて、嫌なひだったと思えるようになりたいと切に願うのだ。
読んでいただき、ありがとうございます。




