第27話 あおいちゃん
陽架琉の姉の倉西あおいのお話です。
たけしの姉のきよかは、陽架琉の姉のあおいの良き相談相手だ。
そして、あおいはきよかのことを姉のように慕っていた。
あおいは、小学校までの人間関係は中学校に入ってもうまくいかない苦しさがあった。
彼女は、とても繊細で小学校の時も同じように悩んでいた。
でも、今回は思春期でなんとなく親がウザく感じた。理由なんてなくて、なぜかイラついてしまう。
あおいは、優しい子でもあったからその気持ちを親にぶつけずに抱えていた。
陽架琉とあおいには、兄の竜輝がいる。
竜輝は、思春期や受験のことや素直に慣れない気持ちで揺れ動いてる。
あおいは、両親が兄の対応や幼い弟の世話があるから自分は迷惑をかけたくないと思い悩んだ。
もしかしたら、両親に自分の醜いと思う心をぶつけてしまうかもしれない。
あおいはそう思ってしまうと、なかなか心を開くことができなくなってしまった。
2
ある日、あおいは学校の下校の時に陽架琉とよく行っている公園で立ち止まった。
だんだん空は暗くなってくるのに、あおいは一人で公園のブランコに乗っていた。
「あおいちゃん! 」
「えっ? 」
あおいは、名前を呼ばれた方向を見てある人物に驚いた。
「きよかちやん!? 」
きよかは、優しい笑顔を浮かべる。彼女は、あおいの元へ歩いていく。
「たまたま、公園の横を通ったらね。あおいちゃんがいたからびっくりしたよ。もう、空は暗くなってきたね」
あおいは、俯いていた。
「ブランコ、久しぶりだな〜 」
きよかは、もう一つのブランコの椅子に座ってスーと前や後ろに漕いだ。
「あおいちゃん、せっかくのブランコだから。一緒に楽しもうよ。勢いをつけて漕ぐと楽しいよ! 」
きよかは、今度は思いっきり勢いをつけてブランコを漕いだ。地面との距離は、かなりの高さがあった。
「すごいね! 」
あおいは、その様子をみて笑顔になった。
「ふ〜、漕いだ漕いだ」
きよかは、ゆっくりとブランコの振り幅を縮めて降りた。
「ほら、次はあおいちゃんの番! 」
「えっ? 」
きよかは、ブランコに座ったまま止まってる彼女の後ろに行った。
「私が、あおいちゃんの背中を押すよ」
「うん」
きよかは、宣言通りにちょうど良い力加減であおいの背中を押した。
あおいは、背中を押されるたびに前に進んで、そして後ろに戻るを繰り返した。
「きよかちやん! 」
あおいは、大きな声を出して呼んだ。
「どうしたの? 」
「もう、降りるから。止めて! 」
「分かった」
きよかは押す力をゆるめて、あおいはゆっくりとブランコから降りた。
二人は近くベンチに移動をして座った。
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「あおいちゃん、もうすぐ暗くなるけど。公園にいる理由を聞いても良いかな? 」
「うん」
あおいは、俯いてから話しだした。
「私、みんなが求めてることが出来ないんだ」
「みんなって? 」
「学校の先生や同級生かな」
あおいは、深呼吸をした。
「授業中に課題を必死に頑張っても、教師は認めてくれない。人間関係とかその場のノリが難しくて。最初はみんな仲良くしてくれてたのに……」
あおいの目からは、涙がポタポタと雨のように落ちた。
「授業でグループになるのも嫌な感じでね。先生に言われて嫌々いれる。それなのに私の聞こえるところで、悪口をワザと言ってるのも知ってるの」
きよかは黙って、あおいの言葉に耳を傾けて受け止めている。
「同じ小学校や保育所の子たちが、なぜか率先して私を弱者にするの」
あおいは、持っていたタオルで顔を拭いた。
「私、担任の先生に相談をしたの。それで、その子たちと話した結果を教えてもらったらね。こう言われたんだ」
あおいは、きよかに担任とのことを話しだした。
『あおいさんが言ってた数名の生徒と話しをしました』
『はい』
あおいは、担任を信用して公平に考えくれると思っていた。
『彼女たちには悪気がないし、あおいさんの気にしすぎかなって。先生はそう思ったよ』
『えっ? 』
あおいは、担任の言葉に驚きが隠せれなかった。その様子に、担任は眉間にシワを寄せていた。
『それに、あおいさんの態度にね。むしろ、その子たちは傷ついたから言動が悪くなっただけ。だからね、発端はあおいさんで彼女たちは被害者だよ』
あおいは、驚きと困惑で何も言えなくなった。それを良いことに、担任は話しを続けた。
『あなたは、自分がした行いに対して気が付かないで、被害者たちの言動を気にしすぎただけ』
担任の声は、少し怖くなった。それは、あおいが完全に悪いのにそのことを分かってないのに苛立っていたからだ。
『彼女たちは、自分が悪いって認めて反省してるから。あなたからの謝罪は要らないって。良かったね。はい、これで解決。次は気をつけてね! 』
あおいの事実は、完全に彼女を攻撃した同級生と担任によって作り変えられた物語に書き換えられた。
担任は、一人の生徒の言葉よりも複数の言葉のほうが信憑性があると思ったのだ。
事実として、もしかしたらあおいは同級生たちの気が障ることをしたかもしれないが、被害者ということには代わりはない。
加害者というのは、群れを作り自分たちの都合が良いよう、に本当とウソを上手いぐわいに混ぜって物語を作る才能の持ち主だ。
その天才が大好きなのが、教師である。天才の言葉を信じる理由は、加害者の事情や複数人への指導や一人の被害者のケアなどの面倒をみたくないからだ。
教師が、救うべき事実を防いで、解決に導くことが難しいと判断をするとしよう。
そうなると、それが出来ない自分が悪いと周りから思われたくないからなのだ。
結局は、教師や学校側が救うべき事実に対して被害者ヅラをして、守るべき人を悪人にしたいだけという話だ。
誰もが、揉め事に関わりたくなくて、早期解決は守るべきモノを悪人して黙らすことであってしまった。
なぜなら、真の被害者が事実を教師に伝えなかったら、問題として対応をしたり責任を問われたり必要がなかったからだ。
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一人の被害者のケアや人生よりも、複数人の加害者の方が大切なのだろう。
そして、教師自身のキャリアや立場を守りたいからだ。学校は、不祥事をもみ消すのが好きなのもある。
あおいは、小学校や中学校でも被害者になって見放された。
今回は、親に言えずに一人で事実を教師に訴えた。
でも、教師から言われることはどれも似たり寄ったりだった。
『あおいさん。先生は、前にも何度も言いましたよね。あなたの勘違いや気にしすぎだからね。いちいち大事に思わないことが大切だからね! 』
『あの子たちにも、事情があるから。優しいあなたに当たると思うの。気にしないことが大切だからね! 』
『そう何度も言われると、先生があの子たちに話しを聞くことになるでしょ。あの子たちが本当の原因じゃないの。あおいさんに原因があるからね。先生もあの子たちも気分があまり良くならないのは分かりなさい。気しないことが大切! 』
『あの子たちにも、そうしてしまう理由があるだけ。あおいさんは、被害者のフリをしない! 』
教師にはそう言われるし、同級生たちは小さな嫌がらせが続いている。
あおいは、薄暗くなっていく公園できよかに心にたまったものを打ち明けた。
「私のことが嫌いならそれでいいから。関わらないでほしい。無視をして欲しい。だって、関係ない人たちも怯えてるんだよ」
あおいだけは、周りが見えていた。被害にあってる時の周りの関係ない人たちが怯えてることを分かっていた。
そして、中学で出会った友達が被害にあいたくないからと離れていくのがつらかった。
「みんながね。私が教室にいるだけで嫌なら、別室でいたい。授業や学校外の活動でのグループも入らなくていい。ただ、学校で勉強してつらいことがあっても楽しい生活をしたいの」
あおいの孤独な心を、きよかは黙って受け止めた。
彼女は正論を求めてるわけでなく、誰かに心を受け止めて欲しかったの分かっていたからだ。
「お父さんのことは、なんか急に嫌になってね。お母さんに相談したくても、陽架琉がまだ小さいからお世話が大変。お兄ちゃんもお兄ちゃんで忙しそうでね。家族に相談出来なくて……」
あおいは、思春期と家族想いがあって家族に相談ができなかった。
みんな、大変なのに自分だけのために時間を割いて欲しくなかった。
家族が、自分の様子をみて心配をしてくれてるのも、ちゃんと分かってた。
でも、言えなかった。何かが壊れるかもしれないって怖かった。
「先生が言うように、私だけが悪いのかな?気にしすぎなのかな? 」
あおいは、涙が混じって震える声で言った。
「違うよ!どんな理由でも、あおいちゃんが傷ついた事実があるよ。あおいちゃん、今まで良く頑張ったね〜! 」
きよかは、あおいの震える手の上に自分の手を重ねた。
「あおいちゃんは一人で事実を伝えたのに、みんながそれを見なかったことにしてね。取るべき責任から逃れたかっただけ。あおいちゃんだけが加害者じゃない。あなたは、一人の被害者だと思う」
「でも、私のせいって」
「あおいちゃんや他のみんなだって、嫌に思う言動を無意識にしてしまうことがある。加害者たちは、それが嫌だという理由で、あおいちゃんを何度も苦しめるのはおかしいことだよ」
「でも、私が原因で被害者のフリをするなって」
「それは、加害者と担任が被害者のフリをしてるのに気がついてないだけだよ」
きよかは、深呼吸をした。
「あおいちゃんの話だけしか、今は状況が分からない。でも私は、あおいちゃんが苦しんでる状況が変わらないのに、教師の『被害者のフリをしないで』の言葉はおかしいと思う。その人が、片方だけの意見しか見ないのもね」
「私の事実は、変じゃない? 」
「変じゃないよ」
あおいは、きよかに抱きついた。きよかは、彼女が落ち着くまで背中を擦った。
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辺りが、一層暗くなり始めた頃。きよかは、倉西家に電話をかけた。
「もしもし、倉西さんのお家で間違いないですか? 」
「はい」
「私、秋原きよかです」
「あっ、きよかちゃん!久しぶりだね。今日はどうしたの? 」
電話に出たのは、すみれだった。
「実は、カクカクシカジカであおいちゃんと公園にいまして」
きよかは、簡潔に事情を説明した。あおいから少し離れていても、彼女の様子が見える場所に移動をして電話をしていたのだ。
「教えてくれてありがとうね。私たちの方からあおいと向き合う時間をもっとつくればよかったね。きよかちゃんにお願いがあるんだけど。良いかな? 」
「はい? 」
きよかは、すみれからお願いを聞いて快く引き受けた。
「あおいちゃん。一緒にあおいちゃんのお家に帰ろうか」
「えっ? 」
「あおいちゃんのお母さんにね、私と一緒にお家に帰ってねって頼まれたの」
「うん」
あおいは、きよかから伸ばされた手を握って立ち上がった。
あおいの顔は、まだ少し暗かった。
なぜなら、「お母さんは、やっぱり忙しくて私を迎えに来てくれないんだ」って落ち込んだから。
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きよかは、あおいの手を握ったり片側で荷物を持ったりして公園を一緒に出た。
「すっかり暗くなったね。いろんなお家からいい匂いがするね〜 」
明るくきよかは話してるのに対して、すみれは暗かった。
「あおい! 」
「えっ? 」
あおいが聞き慣れた声の方を見て驚いた。
「お兄ちゃん!? 」
目の前には、少し息を切らした竜輝が立っていた。その手には、袋にが握られて中に何かがいっぱい入っていた。
「なんで? 」
「あおいが、なかなか帰ってこないって。父さんたちが心配してて。俺は、コンビニの帰りに探しに来たんだ。それで、きよちゃんから母さんに連絡をもらって……」
竜輝は、空いてる手で髪をクシャクシャにした。
「お兄ちゃんも、私のことを心配してくれたの? 」
「当たり前」
竜輝は、くるっと後ろを向いた。
「竜輝くん、そこは照れないの」
「えっ? 」
「ほら、帰るぞ!きよちゃん、あおいの荷物は俺が持つから渡して」
竜輝は、後ろを向いたまま手を伸ばした。
「はいはい」
きよかはそう言って、竜輝の手にあおいのカバンを渡した。
「あおいちゃん、竜輝くんは素直になれないお年頃でね。あおいちゃんのことをすごく心配してたみたいだね」
きよかは、またあおいの横に戻って少し小さな声で伝えた。
「きよちゃん!! 」
「竜輝くん、聞こえてた? 」
「別に…… 」
「お兄ちゃん、迎えに来てくれてありがとう」
「おう! 」
竜輝は、振り返って嬉しそうに笑った。
「お兄ちゃん、コンビニで何買ったの? 」
あおいも、少し恥ずかしくなって話題を変えた。竜輝が持っている袋を見て言った。
「帰ってからのお楽しみ」
竜輝の声は、少し弾んでいた。普段は、家族の中では陽架琉以外にはそういう感じはあまりなかった。
そのことが、あおいはなんだか嬉しかった。
7
三人は、倉西家に帰った。
「竜輝、あおい、おかえりなさい」
「「ただいま」」
「お邪魔します」
「きよかちゃん、今日はありがとうね」
「私は、ただ公園であおいちゃんとブランコをして、おしゃべりをしてただけですよ。ねっ、あおいちゃん」
「うん」
あおいは、少し複雑そうな顔をした。
「あおい、手を洗ったらね。制服、着替えてね」
「うん」
あおいは、下を向いて洗面所に向かった。
「これ、リビングに置いてて。あっ、でもひーくんには見つからないようにして」
「分かったけど、どうして見つからないようにするの? 」
「だって、あおいに買ったやつだから」
「そうなの。ありがとうね」
「当たり前のことをしただけ」
竜輝は、そう言ってくるりと身体の向きを変えて洗面所に向かった。
すみれとあおいは、竜輝が照れている表情を見ていた。
「あの、今って陽架琉くんはどうしてますか? 」
いつもなら、すみれと一緒に玄関まで出迎えてくれるが今日はまだ会えてなかった。
「おばあちゃんが、来てくれてね。陽架琉と一緒に遊んでるんだよ」
「そうなんですか? 」
「うん。元々、あおいが帰って来るのを待ってから、おじいちゃんの家に行く予定だったの。でも、なかなか帰ってこなくてね。おばあちゃんに連絡したら、心配して来てくれたの」
この当時、少しずつ純の両親に助けてもらっているところだった。
魂蔵とちよこたちとは仲が悪いわけでなかった。
でも、自分たちも親だから両親の手を借りずに子供たちの問題を解決をしたいという想いが強かった。
頼りたいけど、頼りたくないという気持ちが純とすみれにあった。
魂蔵がその思いを汲みながら、手を差し伸べたのだった。
8
この日は、あおいが帰宅して準備して魂蔵の家に行く予定だった。
竜輝と純は、魂蔵の家に向かう途中に合流する予定だった。
でも、あおいが下校して時間がかなりかかっていて心配をしていた。
純は、まだ職場で少し残業をしていた時にすみれからの連絡の内容にすごく心配をした。
純は、少し席を外して会社の廊下に出て竜輝に電話をかけた。
『竜輝、今って外にいる? 』
『うん? 』
純が思ってるよりも、早く竜輝は電話に出た。そして、竜輝は父親の純の焦りが混じった言葉を不思議に思った。
『いるんだな』
『うん。さっきまで、たけしくんたちと一緒に遊んでた』
『分かった。悪いんだけど、頼みたいことがあるんだ。良い? 』
『うん』
『落ち着いて聞いて欲しいんだ』
『うん』
『あおいがまだ家に帰ってないって、母さんから連絡が来てね』
『えっ? 』
あおいは、下校後に竜輝と違って寄り道をせずに家に帰って陽架琉を抱きしめているのが、この家の当たり前になりつつあった。
だから、竜輝がまだあおいがそれをしてないのに驚きが隠せなかったのだ。
『びっくりするよね。父さんもだよ。それで、あおいが下校する道の途中のコンビニや寄り添うな所に行ってほしいんだ』
『分かった。あおい、最近様子が変で心配だった』
『うん。父さんたちも気づいてたけど。あおいが少しずつ話せるように待とうって思ってたんだ』
純たちも、あおいの様子がおかしいのには気がついていた。
でも、あおいの繊細さを思ってなかなか聞き出せずにいたのだ。
『竜輝、落ち着いて周りを見て探して。ケガをしないようにね』
『うん。コンビニで、あおいが好きそうなのを色々買っても良い? 』
『良いよ。後で、払うからレシートをもらってね』
『分かった』
『父さん、残ってる仕事を早く片付けて帰るからね。母さんにも、父さんから伝えておくから』
『うん。またね』
『またね』
純と竜輝は、電話でやりとりを終えた。
竜輝は深呼吸をしてあおいの下校ルートを見回ったりコンビニに行って買い物をしたりした。
三十分ぐらいしてから、竜輝のスマホにすみれから電話がかかった。
『竜輝、あおいが見つかったって』
『えっ? 』
『たけしくんのお姉ちゃんのきよかちゃんが、公園で見つけてくれたんだって。色々と話しを聞いてくれたみたい』
『良かった〜 』
竜輝は、心の底から安心をしていた。
『だからね、竜輝がその公園に二人を迎えに行ってそのまま家に帰ってきてくれないかな? 』
『俺、今日は二人にこきつかわれてるね』
『あっ、そうだね。ごめんね』
『さっきのは、冗談。謝らなくていいから、俺は当たり前のことをしただけ』
『そっか、そうだね。竜輝、ありがとう! 』
『おう! 』
『気をつけて帰ってね』
『は〜い』
竜輝は、電話を終えると二人を公園に迎えに行ったのだった。
9
竜輝とあおいが洗面所で何か話してる声を聞きながら、きよかとすみれは今までのことを簡単に話しをしていた。
その後に、すみれがポケットからスマホを取り出した。
「きよかちゃん、私とメッセージを交換をしてくれないかな? 」
「良いですよ」
「あおいのことでやりとりをして欲しくてね」
「はい、分かりました」
しばらくしてから、きよかが帰ったときのこと。
「お母さん、心配かけてごめん」
「うん。そういう時もあるよ」
「うん」
「あっ、父さんに連絡したよ」
竜輝が陽架琉を抱っこして言った。
「竜輝、ありがとうね」
「おう」
竜輝は、少し恥ずかしそうに言った。
「俺とばあちゃんとひーくんは、じいちゃんの家に行ってくるから」
「「「えっ? 」」」
「う? 」
竜輝の唐突な言葉に、女性陣は驚いた。そして、陽架琉も、それに反応をした。
「だって、じいちゃんが家で待ってるから。それに、あおいの話を母さんと父さんが聞いてあげる方が良いでしょ」
竜輝なりに、色々と考えた発言だったのだろう。
「あっ、父さんが嫌なら今のうち言えよ。じいちゃんに向かうように連絡するから」
「父さんが、かわいそうでしょ」
すみれが、少し笑って言った。竜輝があまりにも直球過ぎる言い方をしたからだ。
「お父さんがかわいそうだから、じいちゃんの家に行かなくても良いよ」
「分かった。そう伝える」
「ちょっと、お兄ちゃんってばやめてよ! 」
「良かった、あおいが笑ってる」
「えっ? 」
あおいが少し笑いながらやめてと言ってるのに、竜輝が安心したように言った。
「だって、さっきまで苦しそうだったから」
「さすが、お兄ちゃんだね。竜輝、さっきはワザとあぁ言ったのね」
「いや、もう送ったよ? 」
「えっ?」
竜輝が一度陽架琉を降ろしてから、スマホの画面を見せた。
『あおいの話を母さんと二人で聞いてあげて。俺は、ひーくんとばあちゃんと一緒にじいちゃんの家に行ってくるから』
『あっ。もしも、あおいが父さんがいるのが嫌って言ったら、じいちゃんの家に来たらいいよ』
『あおいが、「父さんがかわいそうだから、じいちゃんの家に行かなくても良い」って』
竜輝は、メッセージにそう書いていた。
『えっ?竜輝、何で俺がかわいそうになってんの? 』
と、少し状況が分かってない純が返信をしていた。それを竜輝は既読無視をした。
「竜輝、せっかく褒めようと思ったのに」
すみれが、少し怒った声で言った。
「だって、父さんがメッセージをしつこく送ってくるからさ」
純が、あおいのことを心配して竜輝に何度も連絡をしていた。
それを竜輝が嫌になって、少しだけ仕返しをしていたのだ。
「じゃあ、竜輝と陽架琉がおじいちゃんの家に行くので良いのかな? 」
ばあちゃんがそう言った。
「うん。そっちでゆっくり飯を食ってから風呂に入って帰る」
「うん。分かったわ。竜輝、陽架琉と自分の着替えを用意してね。陽架琉のお風呂後のケア用品は、向こうにあるから」
「分かった」
「二人で、話を進めないでください」
「すみれちゃん、大丈夫だからね。純とあおいちゃんと一緒に美味しいものを食べて心の栄養つけたら良いいのよ。それとあおいちゃんとこれからのことを話したら大丈夫よ」
ちよこは、優しくそう言った。
「はい。分かりました」
すみれは、頷いた。
「あっ、父さんがごはんを何かを買って帰るって」
竜輝が、部屋を出る前にそう言った。
10
しばらくして、純が牛丼を持って帰ってきた。
「食べながらでも、食べ終わってからでも良いからね。あおいの話を聞かせてくれるかな? 」
純が、優しくそう言った。
「牛丼屋にあったプリンを買ったから、食後のデザートにしようか」
「そうね」
純の言葉に、すみれが賛同をした。
「うん。分かった」
あおいは、牛丼を食べながらどう話そうかと頭をぐるぐるさせていた。
「あおい、ティッシュを使って」
すみれが、あおいにティッシュを渡した。
「うん」
あおいは、口周りを拭いてもたいして汚れてないのに、ティッシュが丸く湿っていた。
そこで、初めて自分が泣いてるのに気がついたのだ。
「私ね……」
あおいはポツリポツリと、きよかに話したを両親に伝えた。
「つらかったね」
「頑張ったね」
あおいは、流れる涙を拭いた。
「あおいって、日記を書いてるよね? 」
「うん」
すみれは、あおいが文字を書くことを好きなのを知って、日記帳を小学校の時にプレゼントをしていた。
あおいは、今も日記を書き続けている。それも、事細かく書いていた。
将来は文字をたくさん書く仕事をしたかったから、その練習として事細かく日記を書いてるのだ。
すみれが、将来の夢を叶えるためには書く練習をしたら良いと教えていたから。
「その日記を、あとで見せてくれるかな」
「うん」
「明日の放課後に校長先生に会えるようにするからね。日記帳の内容を何枚かコピーして、校長先生に見てもらう」
「えっ? 」
「もちろん、あおいの言葉をちゃんと伝えるから、そこは安心してね。出来る限り、学校の責任者として動いてもらうからね」
「う、うん」
すみれは明るく言うが目は変わったので、あおいは少しビビっていた。
「お父さんも、一緒に行くからね」
「分かってる。俺もそのつもり」
「ごめんね」
「あおいが謝ることない。お母さんは、こういうことがつらいのを知ってるし、許せないからね」
すみれは、幼少期に嘘偽りのないことやイジメに遭っていた経験があるので、こういうことに全力で対応をする。
「あおいの意思を尊重してもらうようにするし、お母さんが暴走しないように、俺が見とくから安心して」
「純くん、最後の方に何か言ったかな? 」
「安心してねって言っただけです」
「フッ 」
両親のやり取り、あおいは笑った。それを見た純たちも安心して笑ったのだった。
11
純とすみれは宣言通り、放課後に学校に言って校長先生に会った。
「あおいが、今日学校をお休みした理由について話したいです。あと、お互いのために会話を録音をさせてもらいますね」
すみれが、開口一番にそう言った。あまりの気迫に、校長と同席した教頭は頷くしかなかった。
「あおいが、クラスで孤立をしてることはご存知ですか? 」
校長たちは、驚いていた。すぐに確認をしたくても、担任は同席をしていなかった。
なぜなら、すみれが担任の同席なしであおいの現状を話したいと言うことを校長が断りにくい感じに言ったからだ。
そして、電話の対応をした教師に、担任にはこのことを話さず知らせずに、校長と話し合いをしたいと頼んでいた。
それは、担任の言葉やこちら側の言葉を何も知らずに平等に判断をしてもらえるのを狙っていたからだ。
「これは、あおいが書いてる日記の一部です。ご拝読ください」
すみれが主導権を握って、次から次へと事実を話したり、純があおいの意思を伝えたりした。
校長たちの顔は、みるみるうちに青白くなった。
「申し訳ありません。私どもは、現状を把握出来ておりません」
校長がそう言ったあとに、彼は頭を下げた。
「あおいさんの担任は、職員室で雑務をしてるので。至急、話を聞いています。その時に、話の内容を録音をしますので、少々お待ちください」
教頭は、自分のスマホを持って慌てて校長室を出ていった。
「あおいさんに悲しい思いをさせているのに、気づけずに申し訳ありません」
「校長に責任が全くないとは言えません。しかし、こちらが朝に連絡してすぐに対応をしていただきました。こうして、話し合いの場を設けてくれたことには感謝します」
すみれがそう言った。
しばらくして、校長室に教頭が戻ってきた。
「お待たせしました。事実を確認をしました」
教頭は、録音をみんなに聞かせた。彼は担任にうまい具合いに話を聞き出した。
そして、担任に否を認めさせた内容だった。
校長と教頭は、また純たちに謝罪をした。
「担任を部屋の外に待たせております。倉西さんがよければ、担任を部屋に入れさせます」
「担任を許さなくても良いですよね」
すみれの言葉に、教頭だけが驚いた。
「一番謝ってほしいのは、娘のあおいです。だからといって、謝られて許すことは出来ないと思います。信じていた担任に裏切らて傷をつけられました。それは、一生消えることができない傷なんですよ! 」
「すみれ、落ち着いて」
すみれが声を張り上げるのを、純が止めた。
「許るさなくて構いません。私も、許せませんから」
校長は、そう言った。教頭は、自分が驚いてしまったことを悔いた。
少ししてから教頭が呼びに行って、担任が部屋に入って話をした。
12
すみれたちの学校訪問後に、事態は急速に解決へと動きだした。
あおいに対して、スクールカウンセラーの派遣と加害者の主犯格関係者が更生するまで別室過ごさせることを約束をさせた。
一部は、遠方に転校をする者もいた。自分たちの否を認めたのが、居づらくなったのか理由は分からない。
担任は、懲戒免職の処置をした。過去に何度か同じようなことをしていたので、まともな教師でないという烙印をおされた。
前担任は、他の教師たちにはバレないように、物語を作り必要な対応をしたと見せかけていたのが、調査の結果で発覚したのだ。
だからといって、あおいがクラスで快適に過ごせるわけじゃない。
加害者側に行った元友達やクラスメイトとは、ギクシャクをしながら過ごすことになった。
代わりの担任が決まるまで、教頭が担任を務めることになった。
副担任は、担任に雑務を押し付けられて生徒と思うように関われなかった為、クラスの異変に気がつけれなかったことが発覚。
そのため、お咎めは特になく前担任がいなくなったことで、教頭共にクラスをまとめるようになった。
13
あおいは、学校を時々休みながらも楽しい生活になるようになった。
きよかが、良き相談相手として友達や姉のようにあおいと接していたからだ。
きよかが「あおいちゃんが学校を頑張ったから、一緒にどこかに出かけようね」というご褒美をあげようと思っていた。
それが、あおいが亡くなる前日にきよかと連絡のやり取りをして楽しみにしていたことだった。
この話は、長めなので数字を振りました。
でも、いつもよりも考えました。
それは、倉西あおいの亡くなった年齢にしたかったからです。
あおいは、13歳を超えることがもうできないのです。
彼女は、亡くなる前に学校でのイジメに苦しみ、そして周りに救われて前に進もうとした時に、事件に巻き込まれました。
補足
竜輝とあおいは、同じ学校に通っていた。学年が違うのとお互いが想って、学校では特に関わらないようにしていた。
竜輝はあおいがそこまで思い詰めてる状態に気が付きにくかったのだ。
竜輝は、あおいが苦しかったことをすみれからの電話で少し聞いていてつらくなった。
竜輝は、必死に走って、自分なりに考えて、あおいの心に閉じ込めていたものを解放が出来るように動く優しいお兄ちゃんだ。




