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第18話 ばあちゃんの退院

 倉西ちよこばあちゃんが、退院したのは一ヶ月半経ったの時だった。

 退院するよりも、顔は少しふっくらとしていた。表情も明るくなった。主治医やカウンセラーなどの相性が良かったから。

 ばあちゃんの心は、少しずつ修復をしていった。服薬も相性が合うのもあった。


 たけしの父の正智(まさとし)がじいちゃんを連れて、ばあちゃんの退院後の迎えに行った。

 二人は、車の後部座席に座って話をしていた。


「おじいちゃん、ご迷惑をおかけしました」


「ばあちゃん、迷惑だって思ってないよ」


「そうですか? 」


「ワシも入院したし、秋原家とせがれたちにたくさん協力してもらった。ワシとばあちゃんは、休憩をする時が来ただけだからな」


「そうですね」


「ワシだって、あれからすごく恐ろしいんだ。それを一生懸命考えないようにして、陽架琉(ひかる)とばあちゃんとこれからを生きようと思ってた」


 じいちゃんは言葉を選びながら、妻に想いを伝える。


「正智やみんなにも言ってるんだが」

 

 じいちゃんは、そう言って運転をしている正智を見た。

 正智は、ルームミラー越しにじいちゃんを見て目を一瞬伏せた。


「あの()は、誰も予測不可能なことだった。それぞれの人生の分岐点でもあってな」 


「はい」


()は、みんながその分岐したうちの一つを選んだ結果なんだ。そして、あの時にこうすればよかったと後悔をしたんだ」


「はい」


「選んでない方が、どんな未来になったのかは誰も分からない。これもまた予測不可能なことなんだ。ワシは、別にそういうふうに割り切れって言ってるわけじゃないのは分かってほしい」


「はい。分かってますよ」


 二人は、仲良く手を重ねて握る。


「ちよちゃんの苦しみを、全ては理解出来ないかもしれない。でも、ワシなりには、これからも支えて受け止めるから。遠慮せずに言ってくれよ」


「はい、ありがとうございます」


 ばあちゃんは、昔の呼び方でじいちゃんが言ってくれたのに照れていた。


 あと、もう少しで倉西家に着く時に正智が口を開いた。


「ばあちゃん、確認なんですが」


「はい」


陽架琉(ひかる)くんは、ばあちゃんが入院したことを、ずっと一緒にいれるためのパワーアップのお泊りって思ってます」


「口裏を合わせますね」


 ばあちゃんは、そう言った。




 三人は、倉西家についた。


「ただいま帰りました」


 ばあちゃんの声に、陽架琉がドタドタと音を立てて玄関に走ってきた。


「ば〜! 」 


 陽架琉は、ニコニコでばあちゃんに飛びついた。少しよろめく、ばあちゃんをじいちゃんが支えた。


「陽架琉、ただいま」


「おか〜り! 」


 陽架琉は、ニコニコだった。


「ばあちゃんは、陽架琉とずっと一緒にいれるように、パワーアップしてきましたよ」


「パーアップ! 」


「陽架琉が、元気でよかった〜 」


 ばあちゃんが、入院する前に見た陽架琉は高熱に苦しんでいたからだ。


 陽架琉は、ばあちゃんが帰ってきてすごく喜んだのだった。


 その日のごはんは、いつもよりも豪華だった。


 そしてみんなは、ばあちゃんがあの()の前のような感じに戻ってきたのに安心をした。

 ずっと一緒にいれるようにパワーアップをしたばあちゃんなら、まだ長く生きてくれるのだろうと誰もが思っていた。

読んでいただき、ありがとうございます!

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