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第8話:太陽だった頃の私へ
第2章『白衣の中の迷い』より
当直や待機で削られていく休み。
年末年始も仕事。
夫の誕生日も当直が入っていて、一緒に過ごせなかった。
食欲が湧かず、コンビニ弁当すら手をつけない日もある。
自炊なんて、もうずっとしていない。
自然と、笑顔が減っていくのがわかる。
「あきは、太陽みたい」
よしきが昔、そう言ってくれた。
あの頃の私は、もういないのかもしれない。
朝、タクシーで駅まで向かう。
職もあり、家庭もあって、周りから見たら「恵まれてる」と思われるかもしれない。
でも、毎日タクシーに乗り込み、誰かのタバコや消臭剤の匂いが鼻についたとき、ふと思う。
この生活、幸せって言えるのかな?
誰にも気づかれないまま、静かに疲れていたのかもしれない。
そんなふうに、心が静かにざわついた日の夜――
夢の中で、あの人に会った。
ただ目の前のことに追われる毎日の中で、
ふと、昔の自分を思い出すことがあります。
「太陽みたい」と言われたあの頃。
自分でも、そんなふうに笑っていた気がします。
いまの私は、どうなんだろう。
そんな問いが静かに浮かんだ夜、
夢の中で、彼に出会いました。