あとがき
この作品を最後まで読んでくださった皆さまへ。
感謝の気持ちをこめて、あとがきを綴りました。
『あとがき』
よく、夢を見ました。
同じ人が出てきて、同じような風景の中で、ただ静かに話している夢です。
夢の中で、彼に会えました。
それだけじゃなかった。
彼と会うことで、ずっと奥底にしまいこんでいた“本当の自分”にも出会えた気がしています。
私は、本当に医師になりたかったのか。
なってから、どんな気持ちでこの道を歩いてきたのか。
それすら曖昧なまま、ただ忙しさに押し流されてきたけれど――
夢の中の会話が、そっと私に問いかけてきました。
たくさんの出会いがあって、たくさんの別れがあって。
大切な思い出も、苦しかった記憶も、全部が静かに私の中に溶け込んでいる。
そう思うと、
人生って、出汁みたいなものだなって思うんです。
そのときは目に見えないけれど、時間をかけて、いろんなものが少しずつ染み出して、
やがて確かな“味”になっていく。
恋した記憶も、悔しさも、やさしさも――
全部が重なって、今日の“私の味”をつくっている。
そして私は、今日もまた白衣に袖を通します。
医師として、母として、そしてひとりの人間として。
あの頃の私に。
夢の中でそっと背中を押してくれた“彼”に。
心から、ありがとうと言いたい。
この物語を最後まで読んでくださって、本当にありがとうございます。
忘れられない誰かの記憶が、
これからのあなたを静かに照らす灯りでありますように。




