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第16話:また夢で会えたら

終章『また夢で会えたら』



風が、やわらかく吹いていた。


木々の間からこぼれる光が、夕暮れのような色であたりを染めている。

どこか懐かしい景色。たぶん、あの公園の近くだ。

でも、どこか違う。

夢の中って、こんなふうに曖昧で、なのに心だけはやけに確か。



私は、ベンチに座っていた。

そしてその隣には――よしきがいた。


「また会えたね」

と、彼は笑った。


「うん、会えたね」

と、私も笑い返した。


それだけで、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。

もう、これが夢だってわかっている。

でも、構わなかった。


ふたりで並んで、しばらく何も言わずに風を感じていた。


「手紙、読んだよ」

よしきが、ぽつりと言った。


私は小さく笑った。

「読んでないでしょ、出してないもん」

「でも、読めた気がした」

「ふふ、ずるいなあ」


「手紙、また書く?」

「……ううん、たぶんもう、書かないかも」

「そっか」

「でも、書きたくなったら、また書く」

「それでいいと思うよ」


目を閉じると、どこからか風鈴のような音が聞こえた。

懐かしくて、どこか遠くて、それでいて今ここにあるような音。


「よしき、」私は言った。


「会えてよかった。夢でも」


「うん、僕も」


彼がそう言ったとき、目の前の光がすこしずつ、白く、にじみ始めた。


 


目が覚めた。

まぶたを開けると、天井がやわらかな朝の光に照らされていた。


隣で子どもたちの寝息が聞こえる。

いつもの朝。


私は、静かに起き上がって、小さく深呼吸した。


もう、手紙は書かないかもしれない。

でも、あの夜の言葉も、夢の中の静けさも、心の奥にはちゃんと残っている。


そう思ったら、少しだけ背筋が伸びた。


そしてふと思う。


よしきに、また夢で会えたらいいな。

そのときは、今度こそ、ちゃんと「ありがとう」と言おう。



私は、私の人生を生きている。

たとえ迷いながらでも、今日もまた、前を向いて歩いていく。



この物語を書きながら、

何度も過去と向き合い、何度も今の自分を見つめなおしました。


誰かに伝えたかった想い。

うまく言えなかった気持ち。

もう戻れないけれど、確かにあった恋。


“また夢で会えたら”――

そう思える誰かがいることは、

きっと、人生において大切な「灯り」なんだと思います。


たとえ、今は別々の道を歩いていても、

心の奥でそっと支えてくれている存在があること。

それだけで、明日もまた歩いていける気がしています。


最後まで読んでくださって、本当にありがとうございました。

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