第15話:よしきより
特別章『よしきより』
夢を見た。
また、あきが出てきた。
あの頃と同じように笑って、でも少しだけ、大人びた顔をしていた。
きっと、これは夢なんだろうなって、ちゃんとわかってた。
でも、会えてうれしかった。
ただそれだけで、胸があたたかくなった。
あきのことが、好きだった。
ずっと。
小さな頃から、君の存在は、僕にとって特別だった。
家が近くて、自然とよく一緒にいたけど、
本当はその「自然」が嬉しくて仕方なかった。
あきの家で一緒にゲームをして、
僕が得意げに教えてあげたり、
苦手な野菜を、さりげなく僕の皿に移してきたとき、
しょうがないなあって言いながら、こっそり食べてた。
お揃いのキーホルダーをもらったときは、
誰にも見せたくないくらい、飛び上がるほど嬉しかった。
クラスが一緒になったとき、
「やったね!」って笑ってくれたこと、
あれ、何度思い出しても胸がじんとする。
あきは、僕にとって眩しい人だった。
何にでも一生懸命で、誰とでも仲良くできて、
みんなの前で堂々としてて、
きっと、自分から「好きだ」なんて言ったら壊れてしまいそうで、
なかなか言えなかった。
それでも、卒業式の日に呼び出されたとき、
君が想いを伝えてくれたことが、本当に嬉しかった。
「僕なんかを、あきが…?」って、
照れ隠しだったけど、あれは本心だった。
中学で別々になっても、
気持ちは変わってなかった。
駅で再会できた日は、きっとまた話せると思ってた。
けれど、その日のうちに、君からの別れのメールが届いた。
理由はうまくわからなかったけど、
あきが何かに悩んでいることだけは伝わった。
だから、責めようとは思わなかった。
むしろ、ちゃんと向き合えなかった自分が情けなかった。
僕は、君に手紙を書いた。
引っ越し先の住所を聞いて、切手も貼らずに、自転車で届けに行った。
本当は、ピンポンを押したかった。
顔を見て、話したかった。
でも、勇気が出なかった。
あのとき勇気を出せていたら。
今でも、時々そう思う。
君が僕に気づいてくれたことで、
僕の初恋は、本物になった。
それだけで、救われたんだと思う。
夢の中でまた会えて、
あの頃の君と、今の君が、どちらも愛おしく思えた。
あのとき、何も言えなかったけど――
今なら、ちゃんと言える。
ありがとう、あき。
僕の初恋を、大切な思い出にしてくれて。
どうかこれからも、自分のままで。
まっすぐで、優しくて、ちょっと不器用で、でもいつも光のある、あきのままで。
夢の中でも、現実でも、
あきが笑ってくれているといいな。
── よしきより
「もし、あのとき…」
そんな思いは、きっと誰の心にもひとつはあるのかもしれません。
この特別章は、物語の主人公・あきではなく、
もうひとりの軸となる人物・よしきの視点から綴られた手紙です。
直接交わされることのなかった言葉。
けれど、時を超えて夢の中でつながった“想い”は、
どこかで心を支え合っていたのだと信じたくなります。
大人になってから気づく、本当のやさしさや愛おしさ。
この章が、読んでくださったあなたの心にも、
静かに何かを灯せていたら嬉しいです。




