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第14話:未来のわたしへ

第8章『未来のわたしへ』



あきへ。

今、どこで、誰と、どんなふうに笑ってますか?


この手紙を書いているのは、32歳のあきだよ。

1歳と4歳の子どもたちに毎日振り回されながら、

夫と一緒に、にぎやかで愛おしい日々を送っています。


家事に育児に仕事に、毎日が嵐みたいだけど、

ふとした瞬間に、「あぁ、しあわせだな」って思える日もある。

それって、きっと充分なんだろうね。


 

ある夜、ふいに夢に現れたのは――よしきでした。


懐かしい声、変わらない空気感。

あの頃と同じように、隣にいてくれた。


びっくりした。でも、あたたかかった。


よしきが夢に出てきたのは、偶然じゃなかった気がする。

私はあの日から、少しずつ、自分自身と向き合いなおしていた。



「どうして医者になりたいの?」

あのとき、よしきが投げかけたひと言は、

私の中で、ずっと答えきれない問いだった。



高校3年の夏、受験の5ヶ月前――

「本当になりたいものって何だろう」って、ふと立ち止まった。

ずっと“なるのが当たり前”だと思ってたから。

夢というより、使命みたいに刷り込んできたから。


結局、AOも前期も落ちたけど、後期試験で国立の医学部に合格した。

がむしゃらに努力して、夢を叶えた――

それは確かに誇らしいことだったけど、

心のどこかで、何かが置き去りになっていた気がする。


 

それでも、どこかでよしきのことは、心のすみにいた。

進路に悩む自分を見つめながらも、

あの恋は、私の中でちゃんと息づいていた。


真剣な恋だったよね。

自分の名前に、よしきの名字をくっつけて書いてみたりして、

「うん、いい響きだな」って、ひとりでにやけてた。


あれ、恋をしたことのある人なら、きっと誰もが一度はやるよね?笑


でも、いつからすれ違ったんだろう。

勉強や部活、距離、環境、いろんな理由があった。

中学の私には、話し合う力も、立ち止まる余裕もなかった。


一方的に離れてしまったのは、

あの頃の私の精一杯だったのかもしれない。


夢の中のよしきは、

そんな昔の記憶をふわっとほどいてくれた気がした。


 

きっと、恋の終わりって、終わったあともどこかに残るものなんだね。

思い出が全部過去になることなんて、本当はないのかもしれない。


だから、あの恋はもう終わっているけれど、

あの恋があったから、

私は今、自分の人生をちゃんと見つめ直せている。


恋がなかったら、ここまで立ち止まることも、

こんなふうに自分と向き合うことも、できなかった。


 

もう、よしきとは会うことはない。

でも、私の中にはちゃんと、

よしきの言葉や、あの頃の私が生きてる。


「太陽みたい」って笑ってくれた、あの時のよしきの顔がふとよぎる。

未来の私は、自分らしく、活き活きと過ごせているかな?


 

改めて、未来のあきへ。

この手紙を読んでるあなたが、

今より少しでも自分のことを好きでいられたら嬉しい。


もしまた迷ったときは、

夢の中で出会えたあの人のことを、そっと思い出してね。


そして、今のあなたが見つけた新しい夢の話を、

また聞かせてあげてください。


未来のあなたへ。

今日も、ありがとう。



―― あきより


 


あの恋は、終わってもなお、私の中で何かを育てていた――

そんなことを、ようやく言葉にできた気がしました。


昔の恋を思い出すことって、後ろを向くことだと思っていたけれど、

実は「前に進むために立ち止まる時間」だったのかもしれません。


恋が私にくれたものは、それだけじゃない。

たくさんの感情も、迷いも、問いかけも――

そのひとつひとつが、今の私をつくっている。


この手紙は、“未来の自分”へのエールでもあり、

過去を優しく見つめ直す、ささやかな決意表明のようなものです。

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