そして未来に来てしまったのか?
んんん・・・ 背中の痛みで目を開けると空と白い雲が見えた。
俺、生きてるのか? たしか、女子高生を助けようとして、その子が
目の前から消えて・・俺は・・ 駅に向かう途中の歩道橋から落ちた
・・んだよな・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
思考停止30秒・・・
パソコンオタク&アニメオタク&ラノベ好きの思考回路から結論は・・
俺、転生したってことか?!!
しかも55歳ってそのまんまで? 転生してもツキが無いってかぁぁぁ
しかし・・よくよく周りを見れば、少し雰囲気が違うけれど、ここって
俺が歩道橋から落ちた荻窪駅近くの国道だよな・・・ってことは転生した
ってわけじゃ無いのか?
と・・とにかく誰かいないかな。俺はトボトボと駅の方へと歩いて行く。
しかし、誰もいないし、車も走っていない。信号が点いているから、電気は
来ているのだろうが誰もいない・・・キョロキョロと周りを見ながら
駅に着いたのだが、ビックリすることに駅の改札システムが変わっている
自動改札なのだろうけれど、俺の知っている姿では無いのだ。なんというか
改札と言うより金属探知機みたいな? 利用者がいないからどうやったら
改札を通れるのか分からないままにその探知機のようなゲートをくぐろうと
すると、ポーンと音がして、目の前に見えない壁が出来たように先に進めなく
なってしまった。
「なんだぁ?」俺は仕方なく、自動改札の脇にあった有人改札っぽいゲート
(俺の頃もあったなと思いながら)をすり抜けるようにして駅構内へなんとか
入ることが出来た。
ホームへ上がってみても人影は全くない。どうなってんだ?
「まもなく1番線に電車がまいります。黄色い線の内側に入ってお待ちください」
アナウンスが流れ、やがて1番線に電車が入線してくる。
おいおい、なんか俺の知っている中央線じゃ無いぞ 無人運転か? まあ、
俺の知ってるところでは、神戸やお台場でモノレールっぽい無人運行の電車が
あったが、一般の路線では無かったよな やはり、ここは、未来なのか?とにかく
八王子の研究所へ行ってみよう
電車に乗り込んでも乗客が一人もいない・・・どうなっているんだ?
俺は座席に腰を落ち着けると、あの日のようにドアの上にある電光掲示板を見上げた。
しかし、そこには運行情報もニュースも映し出されていず画面は真っ暗だった。
仕方なく車窓を眺めることにする。見慣れた街並みがあるはずのそこには、
綺麗に区画整理された俺の時代の街並みとは全然違う世界がそこには広がっていた。
研究所・・・残ってるのかなぁ・・不安になってきた。
八王子駅に無事到着し、俺は今、研究所の正面玄関に立っている。
研究所は、老朽化し廃墟の様な形で存在していた。
しかし・・・
なんだこれは・・扉のガラスは粉々だし、壁には・・これ、銃痕か?
何があったんだ?
俺は、壊れた扉をくぐるようにして研究所内に入る。
ズボンのポケットからIDカードを取り出し、入場ゲートのスロットに通す。
エラー音と共にゲートに取り付けられた液晶ディスプレイにメッセージが
表示された。
やっぱ、このカード使えないか・・ん? 俺は表示されたメッセージを見て
眉をひそめる。そこには
『登録番号0002:坂井弘幸様 セキュリティーカードの更新を行ってください』
と、表示されているのだ。
俺のデータがまだ残っているのか、しかも更新しろだと? あの日、歩道橋から
転落し、多分、その時から俺はあの時代から消えたはず。当然、研究所は行方不明
として扱い、一定期間を経た後、抹消するはずだが、ずっと、俺の来るのを待って
いたような感じだよな、これは。なぜだ? まあ、とにかく更新してみるか
入場ゲートの横にある受付カウンターの上で端末が点滅している。
俺は、その端末の点滅しているパネルにIDカードをのせる。
『右のパネルに右手を開いてのせてください』合成音声がそう告げるので、俺は
言われたとおりに右手をのせると、2回ほどスキャンされた。そして
『生年月日を西暦でどうぞ』と聞かれ、俺は「1976年2月5日」と答えると
『初期登録時のパスワードを音声でどうぞ』と、再び合成音声が告げる。
初期パスワードだと。あれは確か・・・あれか・・いや・・でもな・・・
仕方ない・・・・
「きのこのさとさいこう」くぅ・・もっとまともなパスワードにすれば良かったぜ
今更言うと、恥ずかしいよなこれ・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
って、なんだよ・・・この沈黙は・・・
『本人確認完了しました。カードの磁気データを更新します。しばらくお待ち
ください』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『更新完了しました。カードをお取りください。これでこのカードは当施設内全ての
システムを操作するマスターキー権限が付与されました。無くさぬようご注意ください
マスター』
はっ? 今なんて言ったこいつ。俺のことマスター・・だと? 訳が分からん・・・