意外な趣味
そんな女湯でのドタバタに気づくことも無く、俺は、身体を温めると湯から上がり、
服を着て、集合場所の娯楽室に入った。
籐編みの椅子が何脚もあり、お約束の扇風機も置いてある。
「ほぉぉカラオケまであるじゃないか!! あ・・通信カラオケか・・使えねぇ・・
せめてレーザーカラオケならなぁ・・・ あれ? あれは・・・」
俺は娯楽室の片隅に放置されたそいつを手にして
「ふ~ん、こんな物がこの時代にあるなんてなぁ。ああ、でもさび付いてるか・・おっ
未使用のセットがあるじゃないか、じゃあ、張り替えれば使えるか」
俺はさび付いた奴を全部外し、片手にまとめて捨てようとしていたとき、娯楽室に
アーニャが飛び込んできた。
「おお、アーニャ、温泉は良かったかい?」
さび付いた6本の弦を束ねて片手で持ったまま笑顔で語りかけると、アーニャは、
震えながら
「や、やっぱりお前も鞭で私を叩くんだなぁぁ」
「あ???」
予想外のリアクションを俺がしていると、アーニャの後からセブンが飛び込んできて
アーニャを拘束し、手枷、足枷を施しながら
「だから、逃げるなと言っておいただろうに、大人しくしろアーニャ!」
「やめろぉ やっぱり女は男の奴隷なんじゃないかぁ!」
「それは違うと言っているだろうが」
「一体何なんだセブン」
俺はセブンに説明を求め、女湯での出来事を報告させた。
「なるほどな・・ゼウスの信者洗脳増産計画・・・か」
「多分、脳に埋め込まれたチップが関係してると思う」
「前にもその話したよな、アーニャのゼウスに対する信仰心。まあそのあたりは、
奴らの本拠地を叩くときに調べてみよう」
「あああぁ!いたいたいたぁ ハァハァ アーニャさん足、はや~い」
残りの連中も娯楽室に息を切らして入ってきた。
「おいおい、そんなに汗をかいたら温泉に入った意味が無いだろうが」
「はぁはぁ それより、おっちゃんの持ってるそれ何?」好奇心旺盛の翔子が俺の
握っている物に早速目をつけ聞いて来た。
「ああ、これか? ギターの弦だ」
「ギター? ギターって何?」
「ああ、こいつのことだ。」
俺は、さっき娯楽室の片隅から見つけたギターを手に取り
「こいつは、大昔に音楽を奏でるために作られた楽器でギターという。ピックガード
が付いているから、フォークギターって奴だな」
「ふ~ん で、おっちゃん、それ使えるの?」
「俺の青春時代では、昔のフォークソングやニューミュージックが結構リバイバルで
歌われててな、俺もこんなギターを弾きながら歌ってたんだよ」
「へぇぇぇぇ 意外な過去だね じゃあ、聞かせてよおっちゃんの歌」
「あん ああ、そうだな。まずは新しい弦を張らないとなんだが・・・ちょっと
待ってろよ」
そう言うと俺は、新しい弦のパッケージから次々と弦を出し、ギターにつけていく。
そして
「ナイン、440Hzで『あ~~~~』って、発声してくれないか」
「はい。あ~~~~~~~~~~~」
「ビーンビーンビーン・・」ギターの弦を何度か弾く
「うん、もう良いぞ、ありがとうナイン」
「いえ・・・」
「今のは何?」興味津々で翔子が聞いてくる。
「ギターってのには6本の線が張ってあってな、それぞれに音階があるんだ
で、その基準になるのが5弦でな、これが440Hzなんだ。ここさえちゃんと
音階を合わせればその後は・・・こうやって・・・・ほら、これでOK」
俺は、5弦を中心に他の弦を合わせ終えてから得意顔でジャラランとギターの
弦を弾いて見せた。
「「「おおぉぉ」」」
「んでんで、何か歌ってくれるのよね?」
翔子がワクワクした目で聞いて来た。
「そうだなぁ じゃあ、昔よく弾いた曲を何曲か聞かせてあげるよ、ボクの
オリジナルもね」
「わ~~~い」
「じゃあ、みんなも適当に椅子に座って寛いでくれよ」
「耳が腐らないでしょうね」
笑いながらみんな椅子に座ってくれたので、まだ覚えている曲を何曲か歌って
その夜は、みんなから驚きとちょっと尊敬と笑いを誘って更けていった。
翌朝一番にアルタイルは、沖縄へと発進した。
ちなみにギターは娯楽室に置いていこうとしたら、みんなから持って行くように
言われたため、俺の自室に立てかけてある。 まあ、暇な時とか弾き語りでも
しようかなと思っている。




