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星の真理は切なくて、全てを滅するバ火力魔法!  作者: オマエもネコだニャ
第二章 変態どもへ捧ぐ、幻痛の天象儀
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22 一番弟子の初陣

『なーんだ』と私、あのトカゲに対する興味を完全に喪失。

 胸を震わせていたトキメキは冬の空と同じくらい冷え切っている。もうカチンコチンです。


「逃がすな! 討伐しないと報酬がでねぇ!」

『おおッ!!』


 重い尻尾を切り離したことで身軽になったのか。見違えるくらいの速度で、ちょっと情けなくなるくらい脇目もふらず逃走するリザード。峠の向こう側へ一目散にズシンズシンと駆けていく。

 あと一息だと追いすがる、ヘンリーさん以外の四人。


「あ、待てお前ら! まず魔術で――」

「ダイジョーブっすボス! コイツ、トカゲなのに臆病者(チキン)っすから!」

「――っ」


 もはやリザードは満身創痍。全身から血液の代わりに魔力光――魔人より色が薄い――を垂れ流し、今にも崩れそうなくらい弱っている。確かに、一気に仕留めてしまった方が早い気もするけど……

 と、そのとき。


「逃げられたら厄介だな……しょうがない。足止めくらいは協力して――――なに?」


 ルミナさまがリザードの退路を塞ぐべく魔術を放とうとし、驚愕に目を見開いた。


「え? どうし……」

「そこの四人!!! 今すぐソイツから離れろ!!!」

「!?」


 鋭い声。緊迫感に満ちたそれは、一刻の猶予もない状況なのだと嫌でも理解できるものだった。と、いうか。


「…………蒸気?」


 私でも一目見てわかる異常が起きていた。

 全身傷だらけのリザード。その傷口から――湯気が出ていた。

 まるで体内が燃え盛っているかのようなその現象。先ほどまでの戦闘で受けた魔術により、中に火がついたというわけじゃない……はず。どうして――と困惑したのも束の間。

 突如リザードが動きを止め、左後方から迫って来ていたロックさんに爪が砕けた前脚を振るう。――――あ。


「へっ。そんなん当たらな――――あれ?」


 きっと、完全に油断していたのでしょう。『もうすでに鋭い爪は砕いた。間合いも把握した。簡単に避けられる』――という。だから。


「――――――――ぐ、ぼ」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「ロックさんっ!!!」

「――ち。あの位置は……」


 リザードの動きは止まらない。

 さっきまでの鈍重さは何だったのか、と怒りたくなるほどの機敏な反転。ロックさんを放り捨て、残りの三人に両脚を振るい薙ぎ払う。


「が、はっ……!」

「う、あぁ……!」

「……………………っ」


 魔機具(マギア)を盾にし、なんとか直撃を避けた三人。だけど数十メートルもの距離を、まるで石ころでも蹴り飛ばしたみたいに一気に吹き飛ばされてしまう。転がる三人は、動かなくなった。


「あ、あ……お前……ら」


 一瞬の滑落。転がり落ちるように地獄絵図に。()()()()()()()()()()()()()()()魔獣は次に、放り投げたロックさんの方へ――


「――――――――」


 ルミナさまはとっくに駆け出している。()()()を並走している。あの異常なリザードを仕留めるために。でも、それは。


「ってフィオレ!? 危ないから下がって――」

「いいえ、ルミナさま。それじゃダメです」


 ロックさんの傷はどう見ても致命傷。生存は絶望的。そして魔獣はまだ生きている。

 ……だけど。まだ、助かる可能性はある。ロックさんの命はまだ潰えてはいない。

 ルミナさまがこのまま魔獣と戦闘に入るとしたら、治癒魔術で治療を試みるのは私となる。――無理だ、と判断した。


 あれは私では治療不可能な傷。流血を止める間にロックさんは失血死するでしょう。当然、魔獣を討伐後にルミナさまが治療を開始したとしても。

 治癒魔術は万能じゃない。死ななければどんな傷でも癒せる、なんて奇跡は人間には手に余る。――だけど。


 以前。足に空いた私の傷を一瞬で癒したルミナさまなら、あるいは。


「本気か!? ……ってこの問答も無駄だな。わかった、そっちは任せるから。絶対に無茶しないように!」

「わかってます。――――ああでも。別にあの魔獣を倒しても――――」

「それ死亡フラグだからやめろ!!」


 よくわからない言葉を残しつつルミナさまはロックさんの元へ。そして私は、もちろん。


「――――やっぱり。近くで見ると迫力が違いますね」


 蒸気を上げながら緩やかに再生を続けるドラゴン()()()の前に立つ。その姿は何度見ても物語の中の竜そのもので。私はある種の根源的な恐怖に打ち震えてしまう。

 リザードは突然目の前に現れた私に標的を変更したらしい。ズシンズシンと四足移動をやめ、その真紅の眼球で私を見つめている。――なんだか、焼き尽くされそう。


『――――!! グオオオオオオオッ!!!』

「っ!」


 大気を震わす咆哮。全身が砕けそう。足が笑いそうになる。

 喉の渇きを魔術の水で誤魔化す。まやかしの、なんの意味もない行為。――だけどその冷たさは、意識の切り替え程度には役に立つ。


「――――すう、はあ…………」


 こんなの魔人に比べたらなんてことない。ルミナさまの剣に比べれば(にぶ)すぎるくらい。

 そう。私にとっては取るに足らない相手のはず。目指す場所は、こんなものではないのだから。


「それじゃあ。――――お相手をしてあげます、トカゲさん」


 視界の端に立ち尽くすヘンリーさんの姿が見える。……今するべきことは、ひとつ。

 ルミナさまの一番弟子、フィオレ。

 武器を手に、遥か巨大な敵に立ち向かうとしましょう。

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