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星の真理は切なくて、全てを滅するバ火力魔法!  作者: オマエもネコだニャ
第二章 変態どもへ捧ぐ、幻痛の天象儀
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13 目指す場所は遥か遠く

「――――ルミナさまなんてキライです」


 あっさり仲違いしました。


「いじわる。ひどい。冷血漢。美少女なのに乙女心わかってません。……巨乳好き(小声)」

「いや男だっつの。あと乙女心関係ないだろそして今なんつった」


 へたり込んで膨れる私に、ルミナさまは呆れたように言う。


「キライで結構。言っとくけどこれでも、すごくすっごーーーく! 手加減してるからな? それでもオレとフィオレの力量差ってのは、到底埋められるもんじゃないの。雲泥なの。そんなんわかってただろ? だってフィオレ――――ド素人なんだし」

「う、ううう……」


 なぜ仲睦まじい師弟だった私たちが、こんな醜く悲しい争いをしているかというと。


「で、でも……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「アホか痛いわ」


 戦闘訓練と称したイジメを受けたからです。具体的に言うと模擬戦ですけど。



      ◇



 ひと悶着の後。街の外まで来た目的を果たすべく、それじゃあそろそろ戦闘訓練を始めようかという段になり。きっと戦い方のイロハを講釈してくれる、と思っていた私に対して。

 講師にして師匠であるルミナさまは、割と大雑把なことをおっしゃいました。


「さっき町で買った武器があるだろ? それでオレに殴りかかってくるといい。全力でな」

「え、ええっ!?」


 ここに来る前に、町の武器屋さんで手に入れたもの。長さ百二十センチ、太さ四センチほど。カラーリングは銀。何の飾り気もない棒状の――というか金属の棒そのものな武器。

 通称、マギアロッド。武器のカタチをした魔機具(マギア)の一種です。魔術師の杖的なやつ。殴打専用ですけど。真ん中あたりでぽきって折れるので、携帯するのも簡単。

 いわゆる護身用の簡易的な武器で、強度上昇の変異式(コード)が刻まれている。敵に近づかれたら魔力を込めて、これでぼかすか殴るというスタイル。うーん、シンプルあんどバイオレンス。

 

 ”まあフィオレには魔力放出を教えてるからな。極論、殴ったり蹴ったりするだけでも魔獣くらいならぐしゃってなるだろうけど。……さすがに素手は可哀想だし”


 というお気遣いをいただき、ルミナさまが買ってくれました。簡易的な武器と言っても魔機具(マギア)なのでお高いです。大事にしよう。

 ……ですが。


「ほ、本当に殴っていいんですか? あ、あの。怪我とかさせちゃったら……」

「――――怪我ぁ? おいおいフィオレくん。まさかこのオレに攻撃が当たるとでも思っているのかね」

「なんですその口調」


 急に尊大な態度を取るお師匠さま。いえまあ、師匠なのでおかしくはないのですが。いえやっぱりおかしいですね。


「まあまあ。とにかくやってみるといい。ああ、ちゃんとその防御魔術、起動したままにしておけよ? ――怪我するから」

「――っ」


 空気が変わる。ひりつくような視線。

 ルミナさまは不敵に笑っているけれど、その目は私の手を、足を、全てを射抜かんと鋭く細められている。

 気持ちを切り替える。そうです、私の目の前に立つのは。

 複数人で戦うのが定石とされる魔人とすら、単騎で圧倒してしまうようなお方。私の攻撃なんて簡単に避けてしまうでしょう。なら。


「――――行きます」


 全力で、と言うならそうしよう。きっと掠りもしないかもだけど、でも私、負けず嫌いなので。


「先に謝っておきます。うっかり当てちゃったらごめんなさい、ルミナさま――――!」


 そうして意気揚々と棒立ちのお師匠さまに武器を振りかざし、


「え?」


 視界の端に煌めいた白い軌跡によって、()()()()()()()『境界線』を五回割られる私だった。



      ◇



「はあっ…………はあっ…………! う、ううう……! 反撃してくるなんて聞いてません……!」


 荒い呼吸を何とか整えようとするけれど、上手くいかずに喘ぐ。ほんのわずかな時間しか動いていないのに、全力疾走を続けた後のように手足が重い。冬の寒空の下、体温は今にも発火しそうなほど急上昇。

 つまり、疲労困憊ばたんきゅーです。


「キライ。キライ。ひどい。ルミナさまのばか」

「おおう……そこまで罵倒されるとは。負けず嫌いにもほどがあるだろ。なんだよ。ちょっと二分切るくらいの速度で、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「それがひどいんです!」


 そう、私の魔力はもう空っぽ。二分も経たないうちに、ルミナさまの『星明かりのカタナ』によって『境界線』を九回、割られてしまったのです。あ、一回はさっきのデコピンの時にですけど。これで合計十回。

 よって私の魔力は底をつき、もう身を守るものはない丸裸の状態ということです。これが戦場なら即デッド、ですね。


「んで? マジの戦闘、ってのはこんな感じだけど。その上、これに魔術も入り乱れる混沌(カオス)なわけだけど。ホントに戦い方を教えてほしいのか? 護身用くらいに留めておいた方がいいんじゃない?」

「い、いや、です。私、強くなるんです。魔獣だって。魔人だって。私の力で倒せるくらいに、強く。そうしないと――――」


 お母さんの仇討ちなんて到底叶わない。本当にルミナさまにおんぶに抱っこの旅になってしまう。


「ま、そうくると思ったよ。安心しろフィオレ。これからもちゃんと稽古つけるからさ。そうやって一つ一つ積み重ねていけば、見える景色も変わるだろう。焦る必要はないよ」

「ルミナさま……。はい、よろしくお願いします」


 手足に活を入れ、なんとか立ち上がり頭を下げる。今の私の力はこんなもの。だけど、必死に努力していけば、いつか。

 お尻についた土を払う。うう、まさか最初の戦闘訓練がこんなあっさり終わるなんて。もう魔力はないし『境界線』も起動できないし……


「それじゃあルミナさま。明日からも……」

「明日? 何言ってんだ。まだ終わってないぞ」

「………………え?」


 耳を疑う。ルミナさまを見れば不思議そうな顔。たぶん私もおんなじ表情だと思います。


「あ、あの? ルミナさま、私もう魔力がないんですけど」

「うん、そうだな」

「”境界線”どころか、普通の強化魔術も使えないんですけど」

「ああ、そうだろうな」

「…………………………まだ、続けるんですか?」

「うん」


 …………………………えー。


「わ、私怪我しちゃいますっ。ていうか死んじゃうかもっ。い、いいんですかルミナさまっ。”愛弟子を殺害した極悪非道冷酷美少年”って世界中から白い目で見られてもっ」

「落ち着け落ち着け。大丈夫。そんなことにはならない。ていうか怪我なんかさせるわけないだろ。オレを何だと思ってるんだ」

「で、でも……」


 だって、それならどうするつもりなんですか? 魔力の自然回復を待つとか?


「簡単な話。魔力切れならオレが回復させるから。――――というわけで。フィオレにこれをあげよう」


 そう言ってルミナ様が差し出した手には、きらりと瞬く星がひとつ。

 私にだって見ればわかる。それはルミナさまの『星の魔法』の産物。それひとつが膨大な魔力を秘めた、常識外の真理の欠片。それをなんと、


「ほいっと」


 私に向かって放り投げてきた。……………………え。


「え、あ、ちょっ!?」


 あまりに無造作に放ってくるものだから、とっさに反応できない。私はそのまま、とんでもない力を持つ星を胸で受け取ってしまい、瞬間。


「――――――――――――」


 全身が、本当に発火するかと思った。

 駆け巡る熱量が神経を焼き焦がす。血液が沸騰し眼球がバチバチと火花を放った。脳が今にもドロドロに溶けて零れてきそう。――――そんな、燃え尽きるような錯覚。

 実際にはそんなことは起こらない。熱い、と思った時にはその感覚は消えていて。私の体から失われたはずの力が、完全に戻っているのを自覚した。

 つまり。魔力が全回復していた。


「おー……ホントにこれで全快か。とんでもない魔力量だなフィオレ。オレが出会った中で三番目に多い。魔人は除くけどな。……とにかく、これで大丈夫だろ?」

「は、はい」


 正直、狐につままれた気分だった。そういえばシルヴィアお母さんにも、ルミナさまは魔力を分け与えていたんでしたっけ。こういう感じだったんですね。


「よし。それじゃあ休憩はもういいだろ。訓練再開だ。今度はもっと手加減するから。フィオレは好きなように打ち込んで、なるべくオレの反撃を回避するように」

「わ、わかりました!」


 そうして。

 言葉通りさっき以上に手加減してくれたルミナさまと、まだまだ子供じみたチャンバラごっこに興じるのでした。

 ――――いつか、このひと振りが魔人に届くと信じて。


「ほらまた目ぇ閉じてるぞ! ちゃんと相手を見る!」

「は、はいぃぃぃ!」


 ……ほんと、いつになることやら。ぱりん。あ、十回目。

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