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星の真理は切なくて、全てを滅するバ火力魔法!  作者: オマエもネコだニャ
第二章 変態どもへ捧ぐ、幻痛の天象儀
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4 変態不審者さんによる声掛け事案発生

「……どうりで。この町に着いた時、町壁の周りにテントがたくさんあるなぁって思ってたんです」


 協会をあとにし、町の通りを歩く私たち。すれ違う人はみんな、うんざりした表情。山の魔獣のせいで足止めを食らっているんでしょう。

 テントは町の中にもある。広場とか、町壁のそばとか。それらは大体、戦うすべのない商人さんとかのテントで、町の外にあるのは代行者さんなど、魔獣に襲われてもなんとかなる人たちのものらしい。


「不幸中の幸いというか。食うものには困らなそうなのは助かるけどな。ホント、商魂逞しいよ」


 山の向こう側へ商品を納めに行く予定だった商人さんたちは、早々に諦めてここで商売を始めていた。これだけ人が溢れているのに食べ物不足とかになっていないのは、それだけ品物もここで滞留してしまっているからなんでしょう。


「でもどうしましょう。私たちも町の外にテントを張らないといけないんでしょうか……」


 魔機具(マギア)のおかげで快適な旅とはいえ、限度がある。やっぱり柔らかいベッドで寝たい。それに何より――寒い。

 もう冬真っ盛りと言っていい季節。魔術や魔機具(マギア)で暖を取れるし、テントで寒風をしのぐこともできるけど……

『建物の中ではなく外にいる』という状況。寒空の下、家々の灯りをただ指を咥えて見ているしかないという状況そのものが、気持ちをひたすらに冷えさせていくのです。ぶるぶる。


「元々、この町にしばらく滞在して山越えの準備をする予定ではあったけど。……まさか宿屋に泊まれないなんてなぁ。オレはともかく、フィオレだけでも宿屋に泊めさせてあげたいけど」

「! だ、ダメです私だけなんて! 私もルミナさまと一緒にいます!」

「でもさぁ……いや、そもそも一部屋も空いてないんだったか。……うーん、さっさと山の魔獣とやらを仕留めに行かないとどうしようもないな、コレ」


 そう呟くルミナさまは、だけどあまり乗り気ではない様子。さっき『山にいい思い出がない』と言っていたことと関係があるのでしょうか。


「もしかしてルミナさま、山はお嫌いですか?」

「ん~、嫌いってワケじゃないけど。いや殊更好きってこともないけどさ。単に山を舐めちゃいけないなってハナシ。季節柄、突然吹雪に見舞われたりもするかもだし。視界奪われたら流石に遭難する。準備とタイミングは万全を期したいかな」


 確かに。山の天気は変わりやすいと聞きますし、よく見ればエルド山は雪化粧してる。うかつに山に踏み込めば、魔獣と戦うどころか探すことさえできなくなるかも。


「……いっそ別のルートを探すか。山脈沿いにはほかにも町、あるんだろ?」

「えーっと……地図を見る限りあるにはあるんですけど……。たぶんここほど大きい町ではないと思います。この東エルドヴィレッジからの峠越えが一番安全という話なので。みんな、ここから向こう側に行くみたいですよ」


 昔、私とお母さんと後輩さんがコルトスに向かうため通ったルートも、確かここだった気がする。あんまり覚えてませんけど。


「……あと一番近くの町――いえ、村まで馬車で一週間くらいかかります」

「遠いな!? ホントに皆ここに集まって来てるのか! 周辺地域の過疎化が嘆かれる……ってそれはともかく」


 天を仰ぐルミナさま。道行く人のうんざり具合が伝染(うつ)っちゃったみたいです。


「くそぅ、この感覚。”交通機関が乱れた時に、待つべきか別のルートへ切り替えるべきか迷うとき”のものと同じ……! まさかこっちに来てまで味わうとは……!」

「? ルミナさま?」


 なんだかよくわからないことを言っている。ルミナさまって、時々変なことを言うんですよね。とってもみすてりあすです。


「…………はあ。仕方ない。とりあえず空いてるとこ探してテントを――――」


 そう、ルミナさまが切り出した時。


「――――ちょっと。そこのカワイイ子たち」


 すぐ横の路地から、なんだか抑揚のない女の人の声が聞こえてきた。

 思わず二人で、ばっとそちらを見る。するとそこには。


「ちょいちょい。こっちへ。はやく。かもん」


 びっくり。いつからそこにいたのでしょう。誰がどう見ても不審度百パーと判定すると確信できる、不審人物がいた。


『………………えぇ?』


 たぶん、女性。身長はルミナさまよりも高い。年齢は……たぶんまだ若い。たぶん、この町に住む人。

 さっきからたぶんばかりですけど仕方ない。だって。


「…………あのぅ。ひとつ、伺ってもいいですか?」

「ん、なに」


「――――なんで、紙袋を被ってるんです?」


 そう。その不審人物は。

 何故か、頭に紙の袋を被っているのでした。怪しすぎでは。


「これ? 照れ隠し。君たちみたいにカワイイ子に話しかけるの勇気いるから。顔、隠したくなって。でも手元にこれしかなかった」


 見ればその不審者さんの足元に果物やら野菜やらが転がっていた。どうやら買い物途中だったみたい。え、意味がわかりません。いえ、わからないことはもう一つ。


「…………何でもいいけど。アンタ、どうしてオレたちが可愛いってわかったんだ? フードで顔を隠してるのに」


 そう。今、私もルミナさまも外套のフードを被って顔を隠している。

 ”オレたちはぱっと見――というか、実際まだ子供だからな。舐められたり変な因縁をつけられないようにした方がいい”

 というルミナさまの助言で、初めての町では顔を隠すようにしているのです。ルミナさまもなるべく低めの声で喋るようにしていたりします。なので、さっきの会話が聞かれていたとしても、私たちの容姿について言及できる材料はないはずなんですけど……


「え、何言ってるの。そんなの――――」


 だけどその不審者さんは、”はーやれやれこれだから”とでも言いたげに肩をすくめてこう言った。


「――――匂いでわかるじゃない」


 変態さんかな?

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