8話 うさぎ討伐作戦
ぺいっ
「あ゛あ゛あ゛ぁぁぁあああああ…」
修行後の風呂は最高だ…やはり日本人は風呂に入らないと死んでしまう種族なのかもしれない…いやホントに、この宿に風呂があってよかった…じゃないと俺の日常がハードすぎて倒れてるところだ。
例のピザ事件から1か月、ようやくほかの店でもピザを販売し始めたおかげでうちの店にくるお客さんの数はかなり減ってきたように感じる、まぁそれでも多いものは多いのだが…
この一か月の間にはほんとにしんどかった…朝起きて基礎修行をして、店に行って仕込みをして、開店してから必死で働いて、閉店したら店長にボコられてリンさんに癒される、この生活サイクルをずっと続けたのだ。おかげで俺の武術レベルは素人レベルから下の中になったと店長から褒められた。そう!!褒められたのである!!!どうやら武術に関して俺はまぁまぁの才能を持っていたようで想像よりいいペースだとアールブさんと店長が話していた。
正直かなりうれしかった…俺の地獄は無駄ではなかったのだ!!!!たまに行われる模擬線にてリンさん(魔法禁止)から一本を取ることができたし!!!うおおおおおお俺成長してるぜえええええ!!!まぁそのあとアキにフルボッコにされたのだが、あいつ早すぎるんだ、普段脳筋タイプである店長としか戦っていなかった俺ではスピードで翻弄してくるアキに手も足も出なかった。(店長相手にも手も足も出ないが)店長やリンさんは魔力を全身に回して身体能力強化するタイプなのだがアキは魔力のほとんどを脚に集中させて速度を上げてくるタイプなのだ。
え?おれはどんな身体能力強化してるのかって??HAHAHAHA俺にそんなアキみたいな細かいことできるわけないじゃないか、魔力がデカすぎて操作すらできないんだぜ!!ちなみにリンさんはテクニックタイプなので俺自慢の大量の魔力を使った身体能力強化でごり押して勝った。あれはひどい勝負だった…
とこのような結果を出したおかげで俺は師匠である店長から冒険者登録をして依頼を受けてもいいという許可をもらったのである!!!!やったあああああああ!!!!
冒険者!!冒険者だ!!!!この世界にもラノベお約束の冒険者ギルドがあるのだ!!!入った瞬間に荒くれものに絡まれる例のあれができるのだ!!!もちろんランク付け等もあるらしい!!!うおおおおおおおおテンション上がってきたああああああ!!!!
「はい、これで登録完了です。ではこちらのギルド既約をお渡ししておきますね。―――次の方どうぞーー」
なんか薄っぺらい冊子を渡されて、速攻で終わった。テンプレ展開は何もなかった。ギルド内に酒場とか併設されてるわけでもないので酔っ払いもいないし…魔力量を測定してなんだこの魔力量は!?てきな流れもなかった。普通に登録用の用紙に必要事項書いて(代筆も可)冒険者カードGランクを渡されて終わった。ちなみにGランクは最低ランクらしい
「お、タイチ君終わった?じゃあそこのクエストボードにある白うさぎ狩りにでも行こうよ、案内するぜ!」
キランっとした白い歯を見せながらサムズアップしてリンさんがそう声をかけてきた…白うさぎ…確かよく屋台で白うさぎの串焼きとか売られてたな…あれうまいんだよな…肉自体は結構たんぱくな味でたれの味が引き立つんだよなぁ、
「それって倒した場合肉とかもらえる?」
もしもらえるなら個人的に焼いて食べたい、店長特製のステーキソースかけて食べてみたい
「あー多分もらえるよ、この依頼農家の人から出てるし畑を荒らしてくるから何とかしてくれっていう依頼だからね、たまーに肉を下ろしてくれって備考欄に書いてる依頼もあるけどこの依頼は書いてないから大丈夫だよ」
「よし受けよう!今日はうさぎ肉でサイコロステーキ食べよう!!」
「おっけー!!いいじゃん!!!気合入れていくよ!!!」
というか店の定休日だからってリンさんに付き添い頼んだけど週に一回の休みなのに俺の付き添いしてていいのかこの人…はっ!もしかして友達がアキしかいないのか?
まぁ助かるからいいけどね!!
とそんなことを考えながらリンさんの案内についていき、目的地の近くまで行く乗合馬車に乗って2時間ほどで依頼があった農場についた。うん!遠い!!2時間移動でなおかつがったがた揺れる馬車だったからお尻が3っつに割れた気分だよ…リンさんは自分用のクッションを持ってきていたようで平気そうだ…というかこの人クッションどこに収納してたんだ…
「リンさん…そのクッションどこから出したの?」
「んー?空精霊に頼んで収納してもらってたのを出しただけだよ?」
「――俺の分は??」
「ない!!!!」
「――おっけー、覚えとけよ!」
「なんで!?」
自分だけクッション使いやがって…ていうか馬車に乗るなら俺もクッション買っておいたのに…
と、まぁそれに関しては置いておこうまずは依頼だ。依頼主の農家のおっちゃんにはさっき挨拶して事情を聴いてみたのだがかなりの数の白うさぎが1週間ほど前からかなりの数森から出てきて畑を荒らしてるそうだ。それを何とかしてくれというのが今回の依頼だ。リンさん曰くFランクに該当する依頼らしい、おれはまだGランクなので本来Fランクの依頼は受けることができないのだがBランクのリンさんとパーティーを組んだことにより受けることが可能になったようだ。リンさんは「あんまりランクが高い人に頼りすぎるとランクが上がりにくくなるから今回だけついていくよ」と言っていたのでリンさんと一緒に依頼に行くのは今回の依頼が終われば当分いけなくなりそうだ。
「さて、タイチ君どうしようか」
「どうするとは…?」
「んー?どうやって白うさぎを狩るかだよ、私がやってもいいならパパっとやっちゃうけど」
あーなるほど、どうやって狩るか…正直リンさんに全部任せたらすごい楽だろうけどさすがにそれは完全に寄生だしなぁ、なら…
「――罠とか?」
「え、今から罠作るの?たぶん日が暮れるよ?私は別に付き合うけど」
「…リンさんのおすすめは?」
狩りをしたことない一般男子高校生なので罠くらいしか思いつかないっす。明日もバイトなんで今日中に帰りたいっす。正解教えてくださいりんえもん!!
「おすすめかぁ、私がこういう依頼を受けたときによくやってるのは精霊にお願いして探してもらう、だけどタイチ君にはできないからなぁ…いやーそのこと忘れてたよ…」
やっぱり精霊ってチートだと思う、ずるいっす、俺ぼんやり見えるから精霊魔法使えるかもとアールブさんに指導してもらったけど、魔力量が多すぎて見えてるだけだって言われたし…使いたかったぜ…
「たしか、普通の人は罠使うか、白うさぎのすみかを見つけに森に入るか、白うさぎが来るのを待って、畑を荒らしに来たらうち漏らさず全部倒すだったと思うよ、ただこれだと時間がかかりすぎるからっていう理由でこういう害獣駆除系の依頼は人気ないんだよねぇ…私からしたら簡単だけど」
あーなるほどリンさん居なかったら今日中に帰れなかった奴だなこれ?あっぶね、次依頼を受けるときはちゃんと考えて受けよう…今回は寄生とかきにせずに全力で頼ることにしよう…明日のバイト出なかったら店長泣くだろうし、後リンさんがウエイトレスとしていなかったらリンさん目当てで来てる客が暴動起こす。絶対に
「なら今回はリン先輩の実力を見せてくださる回ってことだな、今日中に帰れなかったらまずいし」
「あー確かに、叔父さん泣いちゃうね、じゃあ精霊にお願いするよ、ちょっと待っててね」
リンさんはそう言って精霊を呼び出し会話し始めた。それを観ながら10秒ほどぼーっとしていると
「あっ、見つかったって、じゃ行こっか」
「はっや!?まじで!?」
流石に早すぎないか!?おかしいだろ!!10秒くらいしかたってないぞ?
「んーまぁ精霊だしね…私も深く考えないことにしてるよ…じゃあ気を取り直して!しゅっぱーーつ!!」
「…おぉーーー」
精霊すっご…
「タイチ君静かに」
「うっす」
リンさんの案内に従って歩くこと数十分白うさぎが10匹ほど集まっている巣を発見した。わぁ…まじで見つけちゃったよ…
「じゃあタイチ君頑張ってーー」
「んえ!?」
「んえ!?じゃないよ、タイチ君…前衛なんだから戦闘は任せたよ、私は逃げ出したうさぎを狩るから」
「いやでも、リンさんの魔法でやったほうが早くないか?」
「んーやってもいいけど、叔父さんからの指示で戦闘は極力タイチ君にやらせるようにって言われてるんだよね」
なるほど…なら仕方ない、頑張ろう
「わかった、リンさんじゃあサポートは頼んだ」
「まっかせなさい!初めての実戦頑張って!」
「うっす!」
さて、今回俺が持ってきた武器は今のところ一番練度が高い槍と、サブウエポンとしてまぁまぁ使い慣れてきた短剣を持ってきてる。ただ白うさぎ達がいる地点はかなり木が密集しており槍なんか振り回してら絶対引っかかる…魔力全開で振り回せばたぶん木ごと切り倒せるけどさすがに怖いのでやらないでおこう…なら今回は最初に槍ぶん投げて混乱してるところに短剣で突っ込んで処理する方がいいかな?うん、これで行こうじゃあ…槍を白うさぎに向かって狙いを定めて…
「っし!!!!!」
ぶん投げる!!!!!俺のバカみたいな魔力で強化した肉体から投げられた槍はバカみたいなビュオおおおお!!!という風を切る音を立てながら白うさぎのいるところに着弾した…
「うっわ…」
なんかリンさんのドン引きした声が聞こえた気がしたが気にせず短剣をさやから引き抜いて、全力で突っ込む!!!!槍が着弾した位置では血を流した白うさぎが3匹ほど倒れており、小さめのクレーターができていた。それを見たほかの白うさぎはぴゅいぴゅい言いながら混乱しているようである。
うんチャンスだ…ただ心が痛む…がここで集中を乱すと俺が危ない、白うさぎは頭のてっぺんにドリルのような突起が生えているので万が一突進してきて体に刺さった場合普通に死ぬ可能性があるのだ…なので全力ダッシュし白うさぎのそばに到着すると同時にそばにいた3匹を即切って捨てる。
うん、やっぱりこの短剣の切れ味えっぐいな…確か店長が昔使ってた短剣だっけ…?攻撃力いくつくらいあるんだろ…
そんなことを考えつつできる限る全力で白うさぎを斬っていると、まだ生き残っている白うさぎが全羽同時に俺に向かって突進してきた。
ので全力でジャンプして木の枝に飛び移る。よし回避成功、しかも俺が急にいなくなったせいで白うさぎ達何匹か同士討ちしてる、ラッキーだ、すぐさま木の枝から飛び降りほかの生き残ってるうさぎを斬る。
「ふぅーーーーー終わったかな?」
何匹斬ったかわからないが視界にいた白うさぎは全部やれたと思う。さて確かここから血抜きをして肉を冷やして依頼者に報告だな。
「おつかれーータイチ君、いやー…際いい手際というか叔父さんの弟子らしい脳筋戦法というか…普通槍投げで地面は陥没しないんだけどなぁ…」
リンさんがそう言いながら白うさぎを5羽ほど宙に浮かべた状態で近づいてきた。
「うち漏らしてたのか…」
ちょっとショックである、これが店長にばれたら修行量が増える…
「あはは、違うよーこれは巣から離れたところにいた個体だよ、気づかないのも無理ないって!」
うん、それでも近くにいた敵に気が付かないのは問題だな…店長に索敵の仕方を教わろう…
「それにしても初めての実戦で15羽討伐とはやるねーー、よし後処理は任せて!精霊たちにお願いするよ、じゃあ帰ろっか!!」
「いえーーい」
とこんな感じでおれの初依頼は終了した。白うさぎは全羽持って帰っても食べきれる気がしないから依頼者の農家のおっちゃんと近くに住んでいるおっちゃんに買い取ってもらった。1羽5千マニで10羽買い取ってもらったのでなかなかの大金である。
ちなみに店に帰って白うさぎを食べたのだがかなりうまかった…やっぱこの世界の食材全部日本のものよりおいしい気がする…なんでだろう…