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ショートショート5月〜4回目

矢印

作者: たかさば
掲載日:2023/05/02

 目の前に、矢印がある。

 ……なんだい、これは。


 左側を指している。


 左の方には、何もない。

 右の方にも、何もない。


 とりあえず矢印の方向に進むと決め、念のために反対方向にゆっくり進んでみる事にする。


 …とん。


 …いきなり壁に当たってしまった。

 なにもないのに、なにかある。


 なんだ、矢印の方向でないと進むことができないのか。


 矢印のところまで戻り、左の方へと歩き始めた。


 しばらく歩くと、今度は棒のようなものが現れた。

 よく見ると、まっすぐ進めという矢印の…お尻の部分だ。


 真っ直ぐこのまま行くしかなさそうだ。

 矢印に従い続けるのもしゃくだが、どうしようもない。


 横にそれようとしても、どうせ壁ばかりなんだろう。


 そのまま矢印に従ってまっすぐ進むと、右方向の矢印と左方向の矢印が現れた。

 どちらに進んでもいいということらしい。


 右か左か、どちらに行こうか。


 右の方向は薄暗く、左の方向はなんとなく雲行きが怪しい。

 正直どちらも行きたくない道だ。


 さてどうするか。


 悩み込む僕の目に、何か…違和感のようなものが映った。

 正面に、色の違う部分がある。


 ……なんだい、これは。


 近づいて確認してみると、隙間のようなものがあるのを発見した。


 そっと指を入れると、少し空間が広がった。

 そのまま慎重に、空間を広げてみる。


 なんとか進めないことも…ない。


 狭い空間の先に見える景色は、落ち着いた色合いをしている。


 少々骨が折れるが、狭い隙間を通って行くことにした。


 硬い壁、ぬかるむ足もと、息のつまる空間、深い闇、坂道、崖…道をこじ開け前に進む。



 遠くに見える、居心地の良さそうな場所を目指して、ただひたすらに。



「ひろ君、おかえりなさい!」

「パパ、お帰り!」

「弘、帰ったのか? お疲れ様」

「パパー、一緒にゲームやろ!」

「わん、わんわん!!」


 家族の笑顔が、僕を待っていた。


「…ただいま」



 今の今まで、藻掻きながら道を切り開いていたはずなのに。


 辛かったことが、全て吹っ飛んだ。

 疲れがすうっと、消えた。



 ああ……、癒される。



 僕が切り開いた、自分の運命。


 自分で選んだ、僕の未来。



 ここに…来ることができて、本当に良かった。



 ……僕は、大切な思い出をギュッと抱きしめて。



 矢印の見当たらない、晴れ渡る空に溶け込んだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 人生とは選択や苦難の連続で、しかしそれを切り開いてこそ自分の未来が待っているんですよね。 強い気持ちになれる作品でした。
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