表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/10

番外編 戦地にて

少し長めになってしまいましが読んでくださるとうれしいです。


 

 これはまだ幹也と千歳が戦地で戦っていた時の物語。



 

 転がる死体。落ちている手足。血の匂い。火薬のにおい。人の悲鳴。爆発音。銃声。


 そんなこの世の終わりのようなものがすべてこの戦場にはあった。

 


 「殺さなければ殺される」



 それがこの戦場に来て幹也と千歳が覚えた最初の(ルール)だった。


 常に死と隣り合わせ。


 そんな状況で元一般人の幹也と千歳が正気でいられるわけがない。


 

 銃を撃つたびに震える手足。


 敵を殺すたびに削られていく自分の倫理観。


 そして


 時々見える、見えてしまう・・・敵の涙。



 それでも幹也と千歳は戦った。


 あの時、車の中で話した仲間たちと共に。


 時に鼓舞しあい、時に励ましあいながら。


 もちろん逃げ出そうとしたこともある。


 それはもう数えきれないほどに。


 しかし、その度にドアノブにかかる手が止まってしまう。


 

 本当にここで逃げ出していいのか?と。



 そしていつしか、幹也率いる特別機動小隊第一班は「終戦の英雄」と呼ばれるようになっていた。



 ◇◇◇



 「今日もお疲れっと。ほれ幹也」


 「おっ危なっ!ありがとな千歳」


 「いいっていいって。そんくらい」



 千歳から缶コーヒーを受け取る。


 この缶コーヒーはここの支部に来てからの俺のお気に入りだった。



 「それにしても・・・長かったな」


 「あぁ。ようやくだ。ようやく明日でこの戦争が終わる」



 長かったようで短かったような。


 約二年。たくさんの犠牲を出しながらもようやくこの戦争が明日終わる。


 そう、今日の朝に作戦本部から指令があった。


 軍の総攻撃をもって今追い詰めている敵の本部を討つ作戦だ。



 「ところでさ。幹也」


 「なんだ?千歳」


 「久々に聞くけどさ、彼女とは今どうなの?」


 「それは・・・本当に久しぶりに聞かれたな」


 「まぁね。今までは生きることで精一杯だったからさ」


 「それもそうだな」



 本当によく生きていると思う。


 二年前に日本の戦力補強のため、特別派遣された一般人は約二千人。今ではもうその二割程度しか生きてはいないだろう。



 「俺たちは生き残ったんだな」


 「そうだな」



 言葉にすると一気に実感が湧いてくる。


 生き残ったことに対する嬉しさ。


 そして死んでいった仲間たちの思いも。


 それでも俺たちが生き残ったことに変わりはない。


 といっても、明日まで何があるかわからないが。



 「それで?彼女の話だったか?」


 「あっ・・・あぁ。それで?結局無事に帰れたらそのまま別れるのか?」


 「あぁ。そう思っているよ」


 「そうか。理由を聞いても?」


 「彼女が俺と一緒にいて幸せだとは思えないんだ。証拠に今までの言動だってある。それに・・・もう愛想をつかされているかもしれないしな」



 俺は昨日のメッセージのやり取りを思い出す。


 「今日も生きてるよ。そっちの調子はどう?」って送ったのだが、彼女の返信は「べっ別に、死んでいたなんて思ってなかったし。安心したわけじゃないんだからね!」だった。



 「もういいよな。もう我慢できない。もう見てられない!俺・・・言うよみんな!」



 どうしてか昨日のメッセージの内容を千歳に話すと、千歳は叫び出した。



 「幹也。お前の彼女はツンデレだ!」


 「・・・・・・・・・・は?」



 雪菜がツンデレだと?


 ていうかツンデレってなんだ?



 「なぁ千歳。そもそもツンデレってなんだ?」


 「ふっそう言うと思っていたよ。ずばり、ツンデレとは自分が思っていることと反対の言葉を言ってしまう女の子のことだ。他にもまだまだ種類はあるが・・・幹也の彼女は間違いなくこのタイプだ」



 自分が思っていることと反対の言葉・・・・・つまり今までのは全部本心ではないということ?


 いやでもそれは・・・・・



 「ないんじゃないか?」


 「ほう。そう思う心は?」



 なんか千歳がイラつくが冷静に考える。


 

 「彼女の今までの行動。あれは間違いなく本心だからだ」


 「どうしてそう思った?」


 「どうしてって。だって決まって彼女がそういう行動をする時は顔が赤くなっていたからな!」


 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



 千歳は何も言えなかった。


 そこまでわかっていても気づかない幹也の鈍感さに脱帽した。


 これ以上はもう何も言うまい。


 きっと幹也なら気づくはず。


 頑張れ!彼女さん!応援してるよ!



 「幹也よ。もう俺が言えることは何もない」


 「はぁ?お前から聞いてきたんだろう?」


 「明日で最後の作戦だ。早く寝ようぜ」


 「ん?あっああ」



 なんだ?千歳の奴。叫んだり、真面目になったりおかしな奴だな。


 まぁいいか。帰る前にまた聞こう。


 そのためには、明日の作戦も生き残らなければならない。



 ◇◇◇



 後日。


 作戦は幹也たち特別機動小隊第一班の活躍もあり、無事に成功して敵本部は一時間たらずで陥落した。


 長かった戦争の幕引きにしてはあっけない終わりだった。



 幹也たち特別派遣組の帰宅許可が下りたのはそれから一週間後のことだった。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

参考とモチベーションのためにも評価とブクマの方お願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ