狼の邂逅
初日は、オレ達はやる気満々で集まった。
とはいえ、部屋を出たのはいいが大都が来ないので、楓馬と二人であいつの部屋に行ったんだ。
あいつは、ベッドでスヤスヤ寝てたよ。起こしても起きないし、仕方がないので楓馬と二人で襲撃先を決めて、オレが襲撃先を入力した。
だから初日に大都が元気だったのは、当然なんだ。
全く起きなかったから、あいつは充分睡眠時間を取れたわけだ。
楓馬と話し合い、大都があんな感じなのでオレが占い師に出て囲うことにした。
楓馬はグレー位置で積極的に話して、吊りを逃れる算段だった。
次の日にでもまたオレが囲えれば、楓馬はある程度生きられる。
だから、初日だけは吊りを逃れられるように、あいつは頑張ると言っていた。
最初は上手く行っていると思ってた。
何しろ大都がいい仕事をしてくれてたんだ。
充分寝てたからメタで千隼や祐吏、由弥に白置きされたから、オレの真目が上がったんだ。
あいつが寝ないとダメなやつだとは知らなかったから、困ったなとは思ってた。楓馬を囲えば良かったか、と思ったが、今さら変えられない。
仕方なく成り行きに任せることにした。
なのに、楓馬が投票対象に上がった。
そんなはずはないと思った。
何しろあいつは頑張っていた。
黙って寡黙に議論を見ているだけの村人もたくさん居たのに、見るからに白い由弥と、楓馬で投票対象になったんだ。
少し意見が違っただけだ。
それでも楓馬が挙げられたことに理不尽さを感じたし、このままでは初日から囲った大都と、騙りの自分が残されてしまうと焦った。
夏菜ちゃんには、なんて事をしてくれたんだと思った。
もし狂人なら、代わりに吊られてくれたら良かったのにとかなり恨んだ。
霊能者ローラーで縄を消費するのはセオリーだ。
なのにあんなに偽っぽく死んで、あれじゃあロラストップさせてくれと言ってるようなものだ。
お陰で、何とかもう一縄霊能者に使って生き残ろうとした楓馬は、その隙を突かれて投票対象に上がり、吊られた。
後もう一人が間違ってくれたら、楓馬は吊られなかったのにとそれは恨んだ。
その日の夜は、さすがに大都は起きていた。
段々ヤバいと実感してきたようだった。
大都には仲が良い友達が居るから、そいつらを抱き込んで欲しかったが、由弥に入れていたことで後ろめたさからあいつらと話さなくなった。
オレは何度も説得したが、目を見て話せないと大都は拒否した。
なので仕方なく、黒結果を見せたくなかったので光祐を噛んだ。
これで村には何の色も見えなくなるだろう。手探りで進むしかなくなる。
だが、それによって楓馬が黒だったのではと投票していなかったオレ達が一気に黒くなった。
とはいえ、まだ半分は同じように投票してくれていたので、大丈夫だろうと強気だった。
グレー吊りをしている限りは大都もオレも安泰だ。
なのでとりあえず白い方を吊って、次の日黒い方を吊ってと縄を消費させることを考えて投票した。
そしたら、2日目の投票は偏った。
眞耶があんなに疑われているとは思わなかった。
あいつはとにかく必死だったし、言えば言うほど墓穴を掘ってるだけで、素村だったので気の毒だったよ。
お陰でオレ達は、まとめて一気に変な投票をしている二人としてラインができてしまった。
だが、グレーは広い。
共有の片割れも、狩人二人もまだ出て居ないがどうやらグレーに居るようだった。
どこを噛めば良いのか分からなかったが、オレ達目線じゃ狂人か狐が狩人に出ている事は見えていた。
どこだかわからないが、一弥に占われて呪殺が出たらヤバい。
一気に二人捕捉されて吊られてジ・エンドだ。
まだ夏菜ちゃんが狐ではなかった可能性もあった。
一弥に指定されたのは、千隼か理人。
千隼は共有だろうとオレ達は思っていた。何しろ太月が千隼千隼であれじゃあこれが相方ですと言ってるようなものだからだ。みんな思っていたと思う。
結果的に騙されていたわけだが、一弥も同じだろうから占うのは間違いなく、理人。
理人は潜伏臭バリバリで、狩人でもおかしくはなかったし、狐である可能性も充分にあった。
なので、噛み合わせようとそこを噛んだ。
オレは祐吏か一敬を指定されていたが、一敬は狐っぽい位置なので祐吏に白を出すことにした。
まさかそれが、あんな結果になるとはその時には思いもしなかった。
そう、祐吏に白を出した途端、祐吏はオレに牙をむいたんだ。
祐吏は、村人を勝たせたいと思っていた、妖狐だったんだ。
あの時は、頭が真っ白になった。
祐吏が狐だった。だったら夏奈が狂人だ。
あの狂人のせいで、どうしようもない事になってしまった。
そんな事が頭の中をぐるぐる回っていたので、祐吏が何やら長く演説している間、ずっと必死に考えていた。
狂人だったら、破綻していないはずだ。
祐吏狂人で押すしか、オレには方法がなかった。
だが、それが上手く機能した。
村は祐吏が命懸けで訴えているのにも関わらず、もし狂人で一弥を庇っているのだったらどうしようと悩んでいる。
なら、ここでいっそ呪殺を出したらどうだろうか。
引き続き、オレに対する視線は重かったが、それでもまだみんな真を切れないようだった。
大都が夏菜とキッチンで話したというのは本当だ。
あれでオレ達には夏菜ちゃんの正体が分からなかった事もある。
村人達ならもっとだろうと、大都は機転をきかせてオレに呪殺偽装の機会を作ってくれたのだ。
ここで思い切って祐吏を噛み合わせず、必ず噛める位置を占って噛めばどうだろう。
仮にそこを守られていたとしても、護衛成功が出たとは誰も思わない。
祐吏を噛み合わせて来たのか、一弥が呪殺を装うために噛んだのかと思うだろう。
なので、賭けに出た。
その夜は、ひよった共有のお蔭でかなり白かった奈央ちゃんを吊れることができて、ホッとした。
次の日は、やっぱり祐吏は呪殺された。
オレ達目線では、祐吏は間違いなく狐だった。
珠緒ちゃんを噛んで呪殺を装う事にしたが、臭い芝居だとは自分でも思っていた。
それでも、共有達が全く決断できないせいで、何とか生き延びた。
このまま、最終日まで行けたら大丈夫かもしれないと希望が持てた。
驚いたことに、ここへ来て真狩人と共有者が判明して、あれだけ白くて誰もが共有者だと疑わなかった千隼が、完全グレーだった。
一敬が共有者だと知った時、一敬でなく珠緒ちゃんを呪殺偽装して良かったと思った。
間一髪で、トラップに掛からずに済んだのだ。
あの日の占い指定先はそこだったからだった。
しかも、あれだけ白い千隼が、完グレだからと吊りを飲んだ。
狼にとってはラッキーだったし、共有者は扱いやすいと思った…全く決断できずに、白ばかりを占われていないという理由だけでどんどん吊ってくれるからだ。
狼にとっては、ありがたい共有者で、襲撃しようとは欠片も思っていなかった。
次の日、勇佑を噛んで由弥に黒を出した。
白を出して由弥目線を混乱させることも考えたが、それだと残り3縄で占い師をローラーして大都を吊ればゲームセットになる。
なので、由弥が激しく抵抗するだろうと思いながら、仕方なく黒を打った。
やっぱり共有者は、オレ達の味方だった。
村目線での安定は由弥吊りで、まだ一弥が占っていない大都は一弥目線では色が分からなかった。
なので、安定進行信者の共有が、そうするだろう事はオレ達には予測できていた。
オレ達にしては予想外だったのは、由弥があっさり吊りを飲んだ事だ。
そして、確白になった亜佳音ちゃんが一弥真を思考ロックして、大都吊りを強く推した。
大都に投票までした。
これでは、最終日まで行ったとしても、絶対に亜佳音ちゃんはオレに投票する。
できたら最終日は、共有者の一人と一弥とオレという図式にしたかった。
なので、由弥が吊れた後、確白なのだからおかしくはないだろうとさっさと亜佳音ちゃんを噛んだ。
それが間違いだったと知ったのは、次の日の朝一敬がオレが偽だと言い出した時だった。




