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6日目の夜と7日目の朝に

大都は、何か言いたそうにしていたが、しかし結局何も言わず、その夜吊られて行った。

大都と涼太郎の二人は一弥に入れていたが、共有者の二人は大都に投票し、そして一弥は大都に投票したので、あっさりと吊られた。

大都は、由弥のように落ち着いた様子ではなく、怯えて震えていたが、一瞬で脱力して、意識を失って椅子から崩れ落ちた。

そこまで怖いのなら、一言でも言い置いて行けばいいものだが、大都は本当に、一言も残さず死んだ。

それが、言い訳も何もない人外なのではないかという印象でしかなく、白い印象など全くないのだがそれも大都には分からなかったのだろうか。

それとも、良心の呵責に耐えられず、何も残せなかった人外なのだろうか。

どちらにしろ、大都と涼太郎がペアセットで残っていた限り、涼太郎が黒いと、大都も黒くなってしまうのだ。

大都を運ぶのは、とても骨が折れたが、仕方なく一弥、涼太郎、一敬、太月の4人で、休み休み二階の5号室まで、大都を運んで行った。

…明日は、どうなるのだろう。

太月は、思った。

たった3人だけになった村で、一人を吊ってゲームが終わる。

その時、いったいどちらが勝つのか、そして、その瞬間に負けなら自分は皆と同じようにその場で死ぬしかないのか、そうなった時に、誰が運んでくれるのか。

何も、答えは出なかった。


大都を部屋へと運び終わった後、一弥は何も話さずにさっさとすぐ隣りの6号室へと入って行った。

こちらと目を合わせることすら、もう一弥はしなくなっている。

太月に対する、不信感が湧いていて、もう顔も見たくないような印象を受けた。

涼太郎もさっさと三階へと帰って行き、それを見送った一敬が、言った。

「太月、少し話そう。」太月は、一敬を見た。「まだ時間はある。お前の部屋に行こう。」

太月は9号室なので、二階だ。

一敬は13号室なので、三階だった。

太月は頷いて、先に自分の部屋へと入って行き、一敬が入って来るのを待って、扉を閉じた。

太月が下を向いてただ立っていると、一敬は言った。

「今夜、オレが噛まれる。」太月が驚いて顔を上げると、一敬は真っ直ぐに太月を見て、言った。「オレが涼太郎を吊ると断言したからだ。そしたら、迷わず涼太郎を吊れ。分かるだろ?あいつは迷ってるお前を残すぞ。しっかりしろ、亜佳音ちゃんが噛まれた意味を考えろ。初日から涼太郎と大都にはラインがあった。初日に囲って恐らく楓馬か眞耶の内一人居た、狼を庇って投票していたんだ。一弥は何も矛盾していない。恐らく狼だった一人に確実に投票し、恐らく狐だった祐吏を呪殺している。夏菜ちゃんがリア狂という意見は大都から出た。珠緒ちゃん呪殺という涼太郎の主張は夏菜ちゃんリア狂でないと成立しない。オレ達は迷っていろいろチャンスがあったのに潰して来たんだ。最後に、亜佳音ちゃん噛み。あれは決定的だった。一弥が狼なら、噛まずに昨日はオレかお前を襲撃していた。亜佳音ちゃんはおかしい。この噛み筋は、全部涼太郎狼と言っている。お前が残されたら、その意味を考えるんだ。本来オレ達は最終日には立ち会えないはずだった。残された意味を考えて、必ず涼太郎に投票するんだ。」

太月は、それでも言った。

「全部、罠だったら?最初から仕組まれていたらどうしたらいいんだよ。」

一敬は、首を振った。

「裏考察はやめろ。ここまで来たら、もうそんなものはない。何度も言うが、オレ達が残っている意味を考えろ。亜佳音ちゃんは噛まれるはずはなかったんだ。一弥真ロックしている亜佳音ちゃんを、何の疑いもなく共有二人を噛む事で残せたのにそれをしなかった。仮に、勇佑が残っていたら護衛成功を嫌ったと考える事もできたが、違うだろう。噛み放題だったんだ。亜佳音ちゃん襲撃は決定打だった。涼太郎を吊れ。オレが責任を取る。もし、みんながもう一度目を覚ます事があったら、オレのせいだと言うから。分かったな、太月。」

太月は、まだ不安だった。

だが、ここで一敬が襲撃されたら、確かにそうだろう。

迷っている太月を残し、涼太郎にロックした一敬は噛む。

どちらにしろ、もし、太月が噛まれたらその選択は一敬に委ねられることになる。

太月は、頷いた。

「…分かった。オレが残されたら、お前が言った通りだったと涼太郎を吊る。それでいいか?」

一敬は、ホッとしたように体の力を抜くと、やっと表情を弛めて頷いた。

「ああ。頼んだぞ、太月。しっかりしろ、もう終わるんだ。明日涼太郎を吊ったら、どちらにしろゲームセットだ。一弥を、いや祐吏を信じろ。あいつが狐だ。今だから言えることだがな。」

太月はもう一度頷いて、出て行く一敬を見送った。

そして次の日の朝は、もう一敬とは話すことはできなかった。


7日目、最終日の朝だ。

18人居た人達は、たった3人になった。

三階で一敬の死を確認した太月は、後ろに気だるげに立つ二人を振り返った。

「…涼太郎を吊る。」涼太郎も、一弥も驚いた顔をする。太月は続けた。「一敬が襲撃されたら涼太郎に入れると決めていた。噛み筋から見て、涼太郎でしかない。初日からの投票といい、この状況なら必ず楓馬と眞耶の内一人が狼だが、その両方に一弥は入れていて、涼太郎と大都は入れてない。夏菜ちゃんリア狂の情報も大都から。呪殺は珠緒ちゃんでなく祐吏だったと考える。涼太郎、お前が狼だ。」

涼太郎は、首を振った。

「初日から壮大な罠だったんだ!オレは狼じゃない、一弥なんだ!」

一弥が言った。

「罠ったって投票はお前が決めて入れたんだろう。大都がほとんど抵抗もなく死んだのもおかしい。由弥の方がよっぽど村人っぽかった。何度も言うが、ここに共有が残ってるのがおかしいんだ。亜佳音ちゃん噛みなんか、狩人も居ないのにどうして起こるんだよ。噛み筋が稚拙なんだ。一昨日亜佳音ちゃんを噛んだのが間違いだったんだ。オレなら絶対に噛まないからな。言っただろうが!」

涼太郎は、ブルブルと震えた。

そして、言った。

「…亜佳音ちゃんは思考ロックが過ぎるんだよ!」涼太郎は、涙を流しながら叫んだ。「なんであの子が確白で残ってるんだよ!共有は安定安定でグダグダしてたのに…あの子が残ったら、絶対オレに入れるじゃないか!どうしてギリギリまで大都と二人で残ったのに、負けるんだよ…なんでだよ!」

…狼なのか。

太月は、目を見開いた。

何を迷っていたのだろう。

太月は、死んで行った皆の顔が頭に浮かんで、ひよっていた自分を恥じた。

安定進行の名のもとに、何人を犠牲にして来たのだ。

だが、勝てる。

これで勝てるのだ。

一弥が、涼太郎の肩に手を置いた。

「…お前は頑張ったよ。役職を騙るのは、破綻もあるし狐が居るこのレギュレーションでは大変だったろう。よくやった。でも、申し訳ないがオレ達は負けることはできない。13人分の命を背負ってるからな。今夜は、お前を吊る。ごめんな。」

涼太郎は、その場に座り込んだ。

もう、終わる…解放される安心感と、これからどうなるのだろうという不安感が押し寄せて来て、立っていられない。

「…オレ達は、死ぬんだな。」涼太郎は、泣きながら言った。「大都はずっと楽になりたいと言ってた。千隼が死んでからはずっとだ。口数も少なくなって、由弥が死んだ辺りじゃもう、禄に話も聞いてないみたいだった。初日に楓馬を失ってたからな…あいつに期待してたから。キツかった。」

太月は、床の絨毯の上にしゃがんだ。

「…じゃあ、楓馬が狼か?」

涼太郎は、頷く。

「そう。オレ、大都、楓馬が狼だった。初日は占い師を探して噛んだが、この様子だと秀一は素村だ。祐吏が狐だと言った時、夏菜ちゃんが狂人だったのかと思ったよ。頭が真っ白になって、狂人だと叫ぶ事しかできなかった。残っているのが狂人だと信じたかったけどな。」

涼太郎は遠い目をして、そしてこの一週間の事を話し始めた。

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