5日目の投票と6日目の朝
3 亜佳音→5
5 大都→11
6 一弥→5
9 太月→11
11由弥→5
13一敬→11
15涼太郎→11
結局、由弥が吊られることになった。
「そんな…!」
亜佳音は、涙目で由弥を見たが、由弥は立ち上がって言った。
「ちょっと運営の人、聞いて。部屋に帰るから、そこで追放して欲しい。この人数で僕を運ぶのは無理だよ。どうせ見てるんでしょ?とにかく、部屋に帰るまで待って。」
すると、少し間があって、機械的な声は答えた。
『…待ちます。』
由弥は、頷いてリビングの扉へと急いだ。
亜佳音が、その背に叫んだ。
「由弥さん!」
由弥は、チラと振り返ったが、微笑んで駆け出して行った。
逃げる場所などない。
だから、本当に部屋に戻って行ったのだろう。
亜佳音は、振り返って太月を睨んだ。
「絶対白なのに!どうして由弥さんを吊ったの?!何が安定進行よ、こんなのおかしい!」
太月は、答えない。
亜佳音は、由弥の後を追おうと駆け出したが、いくらも行かない間に、声が告げた。
『…No.11追放されました。夜時間に備えてください。』
…由弥が死んだ。
皆が悟った。
それでも亜佳音は歯を食い縛って、由弥の様子を確かめるためにリビングを出て行った。
リビングは、重苦しい空気に包まれていた。
由弥は、ベッドの上で動かなくなっていた。
後で皆が確認に向かうと、亜佳音がその側で涙を流してシーツを掛けようとしているところだった。
そんな亜佳音に声を掛けることもできなくて、皆は覗いただけで、部屋を後にした。
亜佳音と由弥は、特に仲が良かったわけではない。
だが、亜佳音からしたらもう、奈央や千隼など、白い人達をこうして見送って来て、精神の限界が近付いていたのだろう。
気持ちは嫌になるほどわかったが、共有達には掛ける言葉もなかった。
どちらが真でも何とかなるように、考えた結果だったからだ。
こうなったら、早く噛んで欲しかった。
そうでないと、太月と一敬の方が精神的に耐えられない気持ちだったのだ。
その日は、共有同士の通信すらせずに、二人は悶々と過ごした。
次の日の朝、そうあって欲しくないと思っていたが、太月は目を覚ました。
重い気持ちで起き上がると、狼は一敬を選んだのかと恨みたい気持ちになる。
しかし、ノロノロと準備をして廊下へ出ると、そこに一敬が立っていて、告げた。
「…亜佳音ちゃんだ。」
確白の…?
確かに亜佳音は、もはや共有と同じ立場だった。
3人の確定村人の内、狼が選んだのは亜佳音。
これをどう捉えるかだ。
普通に考えたら亜佳音から完全にロックされている涼太郎が噛んだのだろうが、そんなに分かりやすい事をするだろうか。
一弥が、言った。
「…大都黒。オレ目線じゃ、この二人が人狼だ。」
やはりそうなったか。
太月は、頷いた。
「涼太郎は一弥黒だろうな。」
涼太郎は、頷く。
「そうだ。オレからしたらもう、そこしか占う場所はないからな。」
一弥が、言った。
「オレからしたらもう、どっちを吊っても良いけどな。どうせ、明日残った方とオレの一騎討ちになるんだろう。昨日大都を吊って置けばオレ目線じゃ涼太郎だけになったけど、由弥を吊ったからな。残念だけど、明日まで終わらないよ。」
一弥目線ではそうだろう。
涼太郎が、言った。
「オレ目線じゃ一弥で終わりだ。今夜はオレを決め打って一弥を吊って欲しい。そしたらゲームは終わる。」
一弥は、フンと鼻を鳴らした。
「ああ、終わるだろうな。狼2匹残りで村人と同数だ。亜佳音ちゃんを噛んでおいてよく言ったもんだよ。本来共有から行くはずだろ?最終日はオレ、お前、亜佳音ちゃんだ。それだと具合が悪かったんだな。亜佳音ちゃんはオレ真ロックしてたから、必ずお前に投票する。だから、昨日噛んだんだ。勝ち急いだな、怪しい事この上ないぞ。オレが狼だったら、絶対亜佳音ちゃんだけは残す。共有に反対してでも大都に入れていたからな。いくら安定進行固持の共有でも、こんな材料を与えられて間違えるはずがないだろうが。絶対勝ちたいオレが、貴重な村の票を捨てると思うのか。」
涼太郎は反論した。
「そう言うためにお前が噛んだんだろうが!オレを陥れるために!」
一弥は、首を振った。
「あのな、オレが狼だったらラストウルフだぞ。たった一人で戦うのに、何でわざわざ味方をこんな早くに噛むんだ。まだ共有が二人共残ってるんだぞ?味方は多い方が良いに決まってるだろうが。」
太月が、割り込んだ。
「待て。」と、ため息をついた。「とにかく今夜は大都を吊る。何しろ由弥を昨日吊ってるし、それが安定だからだ。後は明日だ…どっちが残されるかわからないが。」
一敬が、言った。
「この噛みは確かに一弥が言うように不自然だ。あまりにもおかしな噛み。確かに一弥が狼なら絶対亜佳音ちゃんだけは残す。共有を噛んでも不自然ではないからだ。これは涼太郎と大都狼で確定させていいんじゃないか。明日は涼太郎を吊ろう。」
涼太郎は、抗議するように言った。
「なんでだよ!一弥の思うつぼだぞ!共有にそう思わせたいから亜佳音ちゃんを噛んだんだ!」
だが、一敬は首を振った。
「それはおかしい。そもそも、涼太郎にはおかしい所が多過ぎるんだ。こんな事なら昨日は亜佳音ちゃんの言う通りに、大都を吊って置いたら良かったんだよ。太月、明日は涼太郎だ。そもそも、一弥が言う通り、いくら涼太郎を嵌めようとしてても亜佳音ちゃん噛みはおかしい。明らかに噛み位置じゃないのに、わざわざそこを噛む理由が一弥には無い。オレ達を噛んでも何ら不自然じゃないのに、亜佳音ちゃんを吊る必要なんかないんだよ。この噛みは、最終日に向けた涼太郎の噛みだ。お前が残っても、絶対涼太郎を吊るんだ。オレが残っても、涼太郎を吊るからな。」
太月は、それでも迷うように黙っている。
一弥は、ため息をついた。
「…って事は、今夜は一敬が噛まれるな。」一弥が、呆れたように言った。「ここまで優柔不断な共有も珍しい。最初は頼りになると思ったのに。千隼をあんな風に利用して生き残って置いて、それで負けたらあの世でどう申し開きをするつもりだよ。もういい、オレには責任はないからな。ここまで明白なのに、迷ってる太月が全部悪いんだ。もうオレは、会議には参加しない。勝手にやってくれ。」
一弥は、そう言うと廊下を自分の部屋へとズカズカと戻って行った。
涼太郎が、言った。
「太月は間違ってない。あいつらに陥れられようとしているのはオレだぞ。一敬がおかしいんだ。オレは占い師なんだよ。」
一敬は、涼太郎を睨んだ。
「どうせオレを噛むんだろうが。太月がこんなだからな。お前が人狼だ。何で昨日迷ったのかと今になって後悔してる。大都も、よくも騙してくれたな。千隼と仲が良かった癖に、お前も同罪だ。今夜は絶対お前を吊る。」
一敬も、その場を離れて行く。
太月は、取り残されて涼太郎から弁明を聞いてはいたが、もう何もかもが嫌になって、何も考えたくなかった。
だったら、一敬が言う通りにすればいいのだろうが、その決心もつかない。
ここまで、自分の言う通りに皆がやって来て、最終日に間違ったらと思うと怖くてどちらが真だと断定できないのだ。
だが、明日は嫌でも決め打たなければならなかった。
一敬が言うように、迷っているのだから恐らく残されるのは自分。
そうなった時、やっぱり一敬を噛んだから涼太郎だと決められるのだろうか。
それとも、一弥がそう偽装しているのだと思うのだろうか。
太月は、自分でも怖いぐらいに決心がつかずに居た。




