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4日目夜から5日目の朝

千隼は、その夜吊られた。

いつもの『追放されます』という声と共に、手首がチクッとした感覚があった後、千隼は暗闇の中へと落ちて行って、何も分からなくなった。

しかし、皆は恐らく何が起こってこうなっているのか、全く分かっていないだろう。

だから残される村人にそれを知らせようとか、そんなことを慮っている猶予も、千隼にはなかった。


倒れた千隼の体に、由弥が手を掛けて言った。

「…運ぼう。」

太月が、涙を溜めた目で頷く。

千隼がこうなったのも、思えば太月と一敬が初日から白いと言って、共有者の相方を守るために、そして人外の占い師にトラップを掛けるために、彼をダミーとして扱ったからだ。

普通に村人をやっていたら、きっと誰かに占われていたと思うし、完グレとして吊られる事もなかったのだ。

そう思うと、千隼は村の為に犠牲になった村人としか、皆にも見えなかった。

少なくなった人数で完全に脱力した人を運ぶのは、とても大変だった。

重さが倍に感じるが、千隼だけは落としたくない。

由弥は、そう思って千隼を部屋へと運び込んだ。

そして、太月を振り返った。

「…君達が千隼を利用した結果がこれだ。」由弥の目は、怒っていた。「白いのにグレーだから吊られるなんて。結局トラップだって役に立ってないじゃないか。絶対勝ってよ。でないと、千隼が浮かばれないよ。このまま死ぬなんて、あり得ない。本当に絶対、あり得ないんだからな!」

ついて来ていた、亜佳音が由弥の怒りを感じてバツが悪そうな顔をした。

「…やっぱり私が吊られたら良かったのよ。そうしたら、一弥さんが千隼さんを占って、白が出て残りを…。」

由弥は、キッと亜佳音を睨んだ。

「駄目だ!一弥を真だって決め切れてない村なんだよ?どうせ涼太郎が千隼に黒でも打って、千隼が黒だって主張して結局安定のために吊られる未来しかなかった!千隼は、狼に利用されるのを嫌がったんだ。共有には利用されても文句も言わなかったのにさ!千隼は、絶対白だ!千隼が黒だったとか言った占い師は、絶対吊るからな!」

その可能性があるのは、涼太郎だ。

一弥は、そんな主張をする必要はない。なぜなら、楓馬や眞耶に投票しているからだ。

太月が、項垂れて言った。

「…千隼の遺志は継ぐよ。だから、一弥に亜佳音ちゃんを占うように言ったんだろ?一弥は亜佳音ちゃんを占ってくれ。白確したらいいし、そうでなければまだ間に合うから明日吊る。白確なら一弥目線涼太郎と大都を吊り切りで勝ち。涼太郎も明日の由弥が白だったら楓馬と眞耶で落ちてる事になるし、亜佳音ちゃんは白だから一弥吊りで終わり、由弥が黒だったら吊り切りで勝ち。間違えなければ勝てる。千隼を助けるためにも、オレ達は勝たなければならないんだ。それで行こう。」

涼太郎は、由弥に言った。

「黒だったなら大層な役者だよ。お前目線オレが狼にみえるんだろうが、オレは村人だ!大都もそう。明日分かる!」

そう言って、涼太郎は出て行った。

大都は、ベッドの上で微動だにしない真っ青な千隼の顔を見つめながら、涙を流していた。

狼であろうと村人であろうと、長年の友達が目の前で死んでいるのは心に来るのだろう。

勇佑が、言った。

「…後は頼む。」皆がそちらを見ると、勇佑は続けた。「オレは今夜襲撃される。千隼の後を追う形だ。間違うなよ。ここまで来たんだ。何としても勝って生きて戻るんだ。例え、戻ってから散々世間に叩かれるとしてもな。」

太月は、頷いた。

一敬も、神妙な顔をしている。

ついに明日は、7人になるのだ。


次の日の朝、太月は真っ直ぐに勇佑の部屋に向かった。

もちろん勇佑が、襲撃されていた。

これで、今夜からは狼は噛み放題になり、残っているのは一弥、亜佳音、太月、一敬、由弥、大都、涼太郎の7人になった。

皆で勇佑の死を確認してから、太月は言った。

「…占い結果は?」

一弥が、答えた。

「亜佳音ちゃん白。」

亜佳音は確白になった。

涼太郎が言った。

「由弥黒。だからオレ目線では、吊られた誰かと一弥、由弥で確定だ。」

由弥が、眉を寄せる。

こうなることは誰もが予想できたことだった。

「…オレ目線では大都がまだわからない。」一弥が言う。「黒なら吊った中で1人外、白なら吊った中に2人外居たことになる。安定はまだ2人外だと思って吊ることだな。」

太月が、頷いた。

「予想できたことだ。今7人、後3縄。とりあえず、黒が出た由弥を今夜吊って、明日一弥が占った先の大都の色によって黒なら大都吊り、白なら占い師のどちらかを吊ることになる。まだ間に合う。最終日の決め打ちを間違えなければな。」

由弥は、頷いた。

「いいよ、じゃあ僕を吊ろう。でもね、これは予想できたことだろ?涼太郎が白なんか打つはずがないんだ。なぜなら、縄がまだ3本あるから。僕が白だったら、縄が足りてしまうんだよ。だって一弥を吊って終わらなければ、破綻するからね。結局涼太郎も吊られて、それでも終わらなければ一弥のグレーの大都を吊って終わり。縄が足りてしまうんだよ。僕を黒にすることで、1縄消費できるわけだ。だから黒打ちしかないんだ。」

その通りだった。

そもそもが、由弥が黒だったら、楓馬にも眞耶にも入れている人狼という事になるので、初日から切っていることになる。

それはあり得ないと普通なら思うが、しかしこの最終決戦を考えて、初日からあっさり切っていたとしたら分かる。

由弥なら、やりかねないと思ってしまうからだ。

とはいえ、だからといって、由弥が狼の時に真占い師の涼太郎と、その白先の大都が都合良く村人に投票している、というのもおかしな話だ。

なので、太月はどうしても、涼太郎の方を偽だと思ってしまっていた。

だが、村人13人の命を背負っているので、自分の感情だけでさっさと決めてしまうわけにはいかない。

だからこそ、安定進行を選んで今日は由弥を吊り、そして明日の大都の色次第で占い師吊りを考えて行こうと思っていたのだ。

「…白だったらすまない、由弥。だが、村目線の安定進行を崩したくないんだ。今のままなら、最終日まで行ける。その時の、占い師の決め打ちさえ間違えなければ、村は勝てる。ここまで来たんだ、すまないが、今夜は由弥を吊らせてくれ。」

由弥は、頷いた。

「分かった。必ず勝って、僕と千隼を目覚めさせてね。僕達は、無駄に死ぬんじゃないって思いたいから。明日からの吊り、絶対に間違えないでね。頼んだよ、涼太郎が狼だ。祐吏は、やっぱり間違ってなかった。」

由弥は、そう言い置くと、勇佑の部屋を出て行った。

太月は、下を向いて歯を食い縛って立っている。

一敬は、そんな太月の肩に手を置いた。

「お前が悪いんじゃない。ここまで最善だと思う事をやって来たじゃないか。黒を打たれた人にしか、占い師の真贋はわからないんだ。これは仕方ないことだ。どうせ今夜はオレかお前が死ぬ。ミスリードしてるなら残されるかもしれないけどな。とにかく、また明日だ。」

亜佳音が、言った。

「…だったら、由弥さんより大都さんを吊るべきだわ!私は、祐吏さんを信じてる。だから間違いなく一弥さんが真占い師だと思うの!明日、大都さんが白だとしても間に合うんでしょ?だったら、大都さんから吊りましょうよ!」

一敬が、困惑したように亜佳音を見た。

「亜佳音ちゃんはそうロックしてるから気持ちは分かるけど、一弥目線でもまだ大都の色は分かってないんだぞ?白だったら無駄吊りじゃないか。」

亜佳音はそれでも言った。

「それでも間に合うじゃない!私は由弥さんは絶対白だと思うけど、大都さんは投票からずっとおかしい!なのに先に由弥さんを吊るなんて間違ってる!どうしても由弥さんを吊るなら明日吊るべきだわ!めちゃくちゃラインがある二人が居るのに、そんなのおかしい!私は、大都さんに入れる!」

一弥が、言った。

「亜佳音ちゃんがそう言ってくれるなら、オレは大都に入れるよ。だって由弥は白だからね。オレは知ってる。でも、大都は限りなく黒寄りのグレーだ。明日はこのまま涼太郎に入れたらそれで一日早く終わるんだ。早く千隼を蘇らせてやりたいし、できたら今日は大都を吊りたいんだ。」

太月と一敬は、顔を見合わせた。

涼太郎が言った。

「そんなことをしたら安定進行が崩れてしまうぞ!オレ目線じゃ大都は白なんだ、投票できない!」

太月と一敬は、困って両方の占い師を代わる代わる見た。

どうしたら良いのか、本当に分からなくなってしまったが、しかし最安定は由弥吊りなのだ。

いくら怪しくても、涼太郎の真が切れないのだ。

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