詰め盤面
千隼目線では、もう詰めだった。
自分は白だが、村目線ではまだ黒がある位置であり、自分に黒を打たれたら恐らく皆が迷う。
一弥目線でも涼太郎目線でも、まだ黒の可能性があるのだから、どちら目線でも無駄な占いを使わせないためにも、ここは自分が吊られるべきだった。
というのも、一弥目線のグレーである亜佳音も、白いからだ。
亜佳音は、黙っていればあのまま残っていることができた。
それなのに、一弥を真だと言って吊られようとする姿勢は、かなり白いと思われた。
涼太郎目線では、亜佳音は白なのだ。
どうひっくり返っても、それを撤回することはできないので、涼太郎が狼だったら、かなり黒を打つ位置に悩むことだろう。
仮に由弥が狼だと言っても、ではどこが黒だったかという事になる。
楓馬と眞耶のうちの一人だとしたら、涼太郎は怪しい。
だが、千隼だと言うにも千隼は自吊りを飲んでいる。
しかも、村からかなり白く置かれている。
なので、どちらにしても涼太郎はかなりきつい盤面だった。
とはいえ、一弥と由弥が狼があり得るかと言われたら、あり得る。
祐吏が狂人で夏奈がリア狂だったら、一気に真確させようと祐吏にあんなことをさせたとも考えられる。
涼太郎と大都の投票は怪しいが、どちらもあり得ると思わせる状況だった。
…明日のために、何か落としておかないと。
千隼は、自分が再び目覚めるためにも、一生懸命ノートに考えを、ただ書き連ねて行った。
吊り先は千隼で決まっているので、もうあの廊下での立ち話の後は会議の開くという知らせはない。
占い先も、もう固定されていて一弥は大都を占うと言っているし、涼太郎は由弥を占うと言っている。
お互いの様子から、恐らく両方から黒が出るような気がしていた。
結局は、明日は占い師の決め打ちになるのだ。
ならば、どちらが真かとなるのだが、どちらも偽要素はある。
とはいえ、涼太郎と大都の方が、恐らく狼が含まれている楓馬と眞耶に入れていない事実が、かなり黒く見えた。
とはいえ、涼太郎と大都視点では、いくら白くても千隼が黒だと言い張るのだろうか。
そもそも千隼が黒だったら、自吊りを飲まないのだ。
もう一日生き残れば、3縄3狼でかなり有利になるからだった。
狼の噛み筋は、もう決まっている。
今夜は勇佑、そして明日、明後日で共有者を噛んで行く。
だが、それは明日の決め打ちを間違えなかったらの話だ。
何しろ明日7人3縄、明後日5人2縄、明々後日3人1縄だ。
…今夜は、出来たら一弥には大都ではなく亜佳音を占ってもらいたいかもしれない。
そこまで考えて、千隼は思った。
なぜなら、亜佳音が白ならもう両目線で残っているのは涼太郎と大都、一弥と由弥となって、その二人が狼の可能性が限りなく高くなるからだ。
だが、大都が黒だとしても、一弥目線ではまだ亜佳音が黒の可能性があって、村目線でも安心できない。
亜佳音を確白にした方が、占い師吊りを選んだ時にも村目線でも分かりやすいかもしれない。
そんなことを考えていると、部屋の扉が開いた。
そこには、由弥が立っていた。
「千隼?ちょっといい?」
千隼は、寝転んでいたベッドから体を起こした。
「ああ、いいぞ。会議はもうしないんだろ?」
由弥は、頷いた。
「うん、もう詰めだからね。多分、一弥は大都に黒を打つだろうし、涼太郎も僕に黒を打とうと思ってるんじゃないかな。」
千隼は、言った。
「それなんだけどな。」千隼は、椅子に勝手に座る由弥を見ながら、言った。「一弥は、多分亜佳音ちゃんを占った方がいいぞ。」
由弥は、目を丸くした。
「え、白っぽいのに?」
千隼は、頷いた。
「オレだって白っぽいだろ。オレは白だから、オレ目線一弥のグレーの二人はどっちも黒の可能性があるんだ。もし二人とも黒だったら、大都はガッチガチに涼太郎と繋がってるから吊れるけど、亜佳音ちゃんは吊れない。だから、もし二人共黒だったら明日以降まずいからだ。亜佳音ちゃんで白確できたら、もう縄を二本一弥と由弥か、涼太郎と大都に使ったら良いから無駄に縄を使わずに済む。亜佳音ちゃんに黒が出てもまだ明日吊って縄が足りる。それでも明後日決め打ちになるぞ。もうこれ以上、村は結論を先延ばしにできない。」
由弥は、苦笑した。
「僕目線じゃ、僕が白だから涼太郎が僕に黒を打った時点で偽確定だから楽なんだよ。問題は、もし白を打って来たら、なんだよね。そうなったら涼太郎目線じゃ、楓馬と眞耶が狼って事になるか、どっちかと千隼が狼って事になるんだけど…まあ、信憑性が無いよね。だって、二人共に涼太郎は入れてないんだからさ。だから、黒を打って来るんじゃないかって思うよ。そうした方が、千隼を黒塗りして初日からのラインだとか言って、僕達とまだ戦えるからね。」
千隼は、考え込む顔をした。
「…自分で言うのも何だが、オレは白いと思うんだけどね。共有者たちがオレよりの意見だから、多分オレを黒塗りしようとしても納得しないんじゃないかな。だから、楓馬と眞耶のどっちかと由弥で押すのが、一番村が間違える可能性があると考える気がするけど。まあ、もし涼太郎が偽だったらの話だけど。」
由弥は、眉を上げた。
「千隼は、僕を疑ってるの?」
千隼は、首を振った。
「いいや。意見が一緒だったし、オレが共有者のふりをしてても、それに気付いても何も言わずに居てくれたしな。でも、一番分からない位置と言ったらそうだ。何しろ、オレの発言を擁護してくれてるように見えてたし、だからこそ楽に意見が出せてたってのもあるから。そうやって、白いポジに行こうとしてたラスト狼だったら、上手く騙されてる感じもするけどね。でも…理人の事がある。」
由弥は、頷いた。
「そうだな。あの噛みが理解できないよな。夏奈ちゃんがリア狂だって意見も、大都から出てたのが気になるしね。祐吏が狐で一弥が呪殺して、珠緒ちゃんは噛まれたって考えた方が自然だよ。バレるから焦って呪殺を装ったって考えたくなる。」
千隼は、頷く。
「そうだよな。オレもそう思う。夏奈ちゃんが狂人で、狼は狐か狂人か分かってなかったんじゃないかって思うんだよな。だから庇わなかったんじゃって。珠緒ちゃんが狐って思えないんだよ…だったら、あんな目立つことをして夏奈ちゃんを庇わなくても良かったと思うし。祐吏が狐ってのがしっくり来るし、やっぱり涼太郎が偽ってのが、オレの最終結論かな。ま、明日の結果と動きで分からないけどさ。」
後は村人に丸投げだ。
千隼は、どこか心が軽かった。
一番責任が伴う判断に、自分は加わらなくても良いからだ。
それでも村勝ちを目指して考察だけは落として行くが、それでもどんな結果になろうとも、誰も恨まないでおこうと思った。
このまま吊られて仮死状態になったら、一度も気が付く暇もなく海に放り込まれて死ぬのだろうか。
千隼は、考えた。
せめて、誰が狼で、どう考えてどう動いていたのかぐらい、教えてからにして欲しいな、と、千隼は心底思った。
お互いに労い合って、そうして恨みなく死んで逝きたいと思うから。
そう思うと、祐吏とも会って話す機会があるかもしれないと、千隼は希望を持って夜の投票に向かう事にしていた。
それでも、もしもう二度と目覚めない時のために、今生きている皆とはしっかり話してから吊られよう、と千隼は心に決めていた。




