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邂逅

「…初日だよ。朝、女子達は亜佳音ちゃん以外起きて来るのが遅かったよね。その時、キッチンへ朝ごはん取りに行ったの覚えてる?」

千隼は、遠くに目を向けた。

…そういえば、そんなことがあったか。

由弥が答えた。

「覚えてるよ。あの時大都は、水を取りに行くって言って女子達に続いてキッチンへ行ったよね。それが何?」

大都は、頷く。

「その時、みんな急いでたから、珠緒ちゃんと奈央ちゃんは走って出て行って、オレと夏菜ちゃんが残ったんだ。で、夏菜ちゃんに聞かれた。生き残るには、どうしたらいいんだって。」

そんなの、みんなが知りたい。

千隼は思ったが、何も言わなかった。

由弥が呆れたように言った。

「え?そんなの自分が聞きたいよって思ったよね?」

大都は、頷く。

「そう。思ったけど、無碍に扱うのもだから、役職があったら吊られないんじゃないかなって言った。村人って役職?って聞かれたから、村人は役職じゃないなって答えて…でも、人外は騙るけどねって言ったんだ。どうして村人は騙らないのって聞くから、村人は吊られて色を見てもらうのも仕事だから、勝つためには仕方ないんだよねって言った。もう面倒だからその後キッチンから出て、それ以上は話さなかったけど…その後、夏菜ちゃんが霊能者だって言い出して。役職持ってるじゃんって思ったんだけど…話の流れを後から考えてたら、夏菜ちゃんは結構自分勝手なんだよね?だとしたら…。」

皆まで言わなくてもみんな悟った。

つまり、夏菜は素村だったかも知れないのだ。

「リア狂ってこと?」由弥が、呆れたように言った。「もう、やめてよ、マジであり得ないんだけど!ってことは、祐吏が狐だとしたら、まだグレーに狂人が居るかもしれないんでしょ?人外落ちてないじゃん!」

涼太郎が言った。

「今のが正しかったら、オレ目線じゃまだ狐が居るって事だ!だったら、オレが明日何とかして呪殺を出す!そうしたら村には、オレの真が見えるだろ?!」

それはそうだが、祐吏と他一人が死んでも、どっちが呪殺なのかわからない。

太月が、ため息をついた。

「…困ったな。問題は今夜の吊りなんだよ。仮に夏菜ちゃんがリア狂だったら、人外が確実に落ちてるって保証がなくなった。縄が足りなくなるから、今夜は絶対人外を吊らなきゃならない。今、確実に人外だって分かってるのは、祐吏だけだ。だが、祐吏は狐だと主張してるし、呪殺で処理できるならそっちの方がいい。仮に一弥が狼なら狂人でも噛むしかないだろうし、確実に噛みか呪殺で処理できる位置。今日は、他を吊りたいのに縄余裕がないかもしれない。」

一敬が言った。

「グレーは幅が広いぞ。ここまで来たら囲われてる可能性がかなり高いしな。占い師のどちらが真だと決め打つ材料が今はない。祐吏を信じたいが…涼太郎が真だったらと思うと、涼太郎を吊る事も怖くてできない。どうする?各占い師の白先はどうだ?黒い白先があったら決め打つ材料になるかもしれない。」

太月は、頷いた。

「涼太郎の白は大都と亜佳音ちゃん、祐吏、一弥の白先は珠緒ちゃん、由弥、理人。理人は噛まれてるから白確定だが、他はわからないな。由弥は初日から積極的に発言してるが…亜佳音ちゃんも多めだな。他は色が落ちていないが、初日大都が白いとかみんな言ってなかったか?」

確かにそうだが、メタ要素だった。

狼が夜起きてるはずなのに、寝ないと無理な大都が元気だったから。

だが、確かに投票が怪しいと言えば怪しい。

初日は由弥、2日目は奈央に入れているので、村とは違う判断をしていることになるからだ。

「…待て。」千隼は言った。「確かにメタで白いと思ったが、投票行動が村とは違う。初日は由弥で、2日目は奈央ちゃん。村感情ならいいが…その理由を聞いてもいいか?」

大都は、答えた。

「だからあの直後に言ったじゃないか。最初は白いと思ってたんだよ。でも、ずっと何度も聞いてると、わざと村利のあることばっかり言ってるように思えて来て、騙されてるのかなって思って由弥に入れた。楓馬があんまりにも必死だから、信じてやりたかった。眞耶も同じだよ。あれだけ一生懸命なのに、みんな何も思わないの?余裕な顔をしてる方が、オレには怪しく見えるんだ。仲間が居るから、そんな余裕なのかなって。可哀そうじゃないか…だったら平気そうな方から吊った方が、こっちも罪悪感無くて済むもの。」

言われてみたらそうかもしれない。

つまり、大都は感情で吊り先を決めていたのだ。

確かに、これまで吊られた人達は、皆必死に反論して何とか吊られずに居たいと足掻いていた人達ばかりだ。

対抗の由弥も奈央も、どっしり構えているようにも見えて、逆に怪しいと感じたとしてもおかしくはない。

感じ方の違いでしかないからだ。

みんな助かりたいという思いが強いので、大多数はその必死さを逆に怪しいと見て吊っているが、大都は必死さを逆に哀れに思っていたという事になる。

千隼は、少しそれには反省する気持ちになった。

とはいえ、何も考えずに吊っている事実はまずかった。

「感情吊りって事か?確かにそうかもしれないが、村として勝とうと思ったら、ちゃんと考えて入れないと駄目だぞ。特にこれからは、一人一人の票の重みが増して来る。そんな様子だと、SG位置にされてしまう。村のためには、真剣に考えて、理由を持って投票しないといけないんだ。」

千隼が言うと、大都はバツが悪そうな顔をした。

「…それは、悪かったと思う。ちゃんと考えるよ。でも、考えても分からなかったんだから仕方がないよ。みんな、投票した先が人外だったって自信があるのか?あるんだったら凄いよね。」

確かにそうだけど。

霊能者が居ない今となっては、誰が正解で誰が間違っていたのかも分からない。

大都が言うのは、間違っていなかった。

「もういい。」太月が言った。「今日狩人が出て完全グレーは奈央ちゃん、千隼、一敬だけになった。この3人が怪しいと思ったことはない。各占い師視点では、涼太郎のグレーは珠緒ちゃん、奈央ちゃん、千隼、由弥、一敬の5人、一弥のグレーは大都、亜佳音ちゃん、奈央ちゃん、千隼、一敬の5人。正直に言おう、この中にオレの相方は居る。だから、オレ目線ではかなり詰まってるけど、いくら何でもそろそろ黒を見つけないと怪しくなるので、偽の占い師はどうあっても黒を打とうと考えるだろう。だから、まだ相方の事は言わない。今夜は、申し訳ないが祐吏、お前が狐でも狂人でも人外なんだから、吊らせてくれ。それで、一弥が真であっても涼太郎が真であっても、噛まれる事なくもう一つ必ずグレーの中に色を付けることができる。祐吏を占っていたら、明日は護衛で凌げても明後日は絶対に噛まれてしまうだろうから、他に結果が落ちない事になるんだ。黒を見つけたいんだ。いいか。」

祐吏は、顔をしかめた。

呪殺される事だけを考えていたのだろうし、吊られるのは想定外だっただろう。

だが、祐吏は頷いた。

「…分かった。それが村のためならそうするよ。オレは狐で白人外だから、縄は無駄にはならないものね。今夜、吊る位置が見つからないならそれでもいいと思う。呪殺で2死体出なければ、護衛成功で必ず1縄増えるしね。狼がどこを噛むつもりか知らないけど、勇佑には頑張ってもらわないと。」

勇佑は、頷いた。

「夏奈ちゃんがリア狂かもしれないと分かった今では縄は何本でも欲しいからな。分かってる。この感じだと狼はオレを噛んでる暇なんかないだろう。お前が狂人でも狐でも、とりあえず今日縄を無駄にしないために出て来てくれて助かったよ。」

祐吏は、苦笑した。

「何度も言うけど、オレは狐だ。初日から、たった一人で生き残るぐらいなら、村人に勝って欲しいとずっと思って見てた。考えても見て?たった一人、どうなってるのか分からない本土に帰って、皆の好奇の視線に晒されて、記者会見だなんだとなったらマジで耐えられないと思わない?オレはもう、諦めてるんだ。初日に狐を引いた時からね。」

祐吏がどこまでも狐に見える。

そうなると涼太郎は狼だ。

千隼は、これが仲間と生き残るための狂人の演技なのか、それとも本当に村を思う狐なのか、全く分からないまま、ため息をついていたのだった。

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