3日目朝の会議
悩んだまま朝食を適当に摂り、千隼は会議の席に座った。
太月も悩んでいるようだ。
全員の表情が固いので、皆同じ気持ちなのだろうと思われた。
完全グレーの理人を噛む意味がわからない。
これをどう解釈したら良いのか全くわからないのだ。
太月は、言った。
「今朝は理人が襲撃された。今12人、吊り縄は5つ。占い結果は一弥が理人白、涼太郎が祐吏白だ。」と、ため息をついた。「今日は狩人に手をかけなきゃならないだろうな。真を吊ったら今夜の噛みは確実にオレに入るだろう。だから迷ってるんだ。今日の噛みが噛み合わせなのか護衛成功なのか知るためにも、このままもう一日狩人を残すか?そうすると、今日もグレーに行くことになるから、縄余裕がなくなる。ここまでに、霊能者以外で人外が落ちたという確信がないからだ。」
由弥が、言った。
「全員囲われてたら明日から役職決め打ちになるよ。綱渡りだ。だったら狩人ローラーに縄を使って、確実に1人外落として行くのが正着じゃないかな。決め打ちは占い師に取っておかないと、どっちも決め打ちとか大変だよ?」
太月は、あきらめたように頷いた。
「だな。だったらやっぱり狩人を出そう。狩人は、祐吏と、勇佑だ。」
祐吏は今日涼太郎から白が出ている。
勇佑は、完グレだったのでこれで少しグレーが狭まることになった。
勇佑が、祐吏を見て目を見開いて言った。
「お前だったのか!だったら祐吏を吊ってくれ。オレは真狩人だぞ。きちんと毎日交互に共有達を守って来たんだ!」
祐吏は、何も言わない。
太月は、祐吏を見て言った。
「祐吏は?何かあるか。」
祐吏は、顔を上げた。
そして、言った。
「…オレは、村人に勝って欲しいんだ。オレはたった一人だけど、村人は13人も居る。だから最初から、こうするつもりだった。」
何を言ってるんだろう。
千隼は、眉を寄せた。
そういえば最初の頃、同じセリフを聞いた気がする。
オレは、村人に勝って欲しい。
それは、祐吏が村人ではないということか。
「え」千隼は、言った。「初日にもそう言ってたな。村人に勝って欲しいって。まさか祐吏…。」
祐吏は、頷いた。
「オレは狐だよ。だから理人は襲撃で死んだ。そして今日オレに白を出した、涼太郎が狼だ!オレは呪殺されなかったから!」
そういう事だったのか。
千隼は、初日からの祐吏の言動を覚えていた。
何しろメモってあるのだ。
祐吏は、積極的に占われようとしていた。
それは、自分で呪殺を出させて早く真を確定させたかったからなのだ。
自分を占って、黒でも白でも出して来た占い師は偽物。
それを村に証明したかったのだろう。
狩人に出たのは、恐らく無駄に吊られないため。
呪殺以外で死ぬつもりはなかったのだ。
「…だからか。」千隼は、言った。「だから狩人に出て、占われるのを待ってたのか。」
祐吏は、頷いた。
「そう。吊られたら占い師の確定ができないからね。オレは狐だよ、そのために占われるのを待ってたんだ。太月に、狩人のことはどっちかが噛まれるまで伏せた方が良いと言ったのもオレ。」
辻褄が合う。
千隼は、思った。
祐吏は最初から、自分が生き残ることをあきらめていたのだ。
自分は、たった一人だから…。
そう思うと涙が出て来たが、涼太郎は叫んだ。
「嘘だ!きっと夏菜さんが狐で、こいつは狂人なんだよ!そう言って、オレを陥れようとしてる!一弥を庇ってるんだ!」
そうなのか…?
言われて、千隼はハッとした。
狂人の狐CO…?
そうかも知れない。
何しろ狂人ならば、真占い師に無駄占いをさせようと、占い位置に積極的に入ろうとするだろうからだ。
ということは、夏菜が狐…?
「…狂人と狼が繋がってるなら確かに祐吏が狂人でもこんな大胆なことはしてくるだろうが…。」
太月は、戸惑っていた。
千隼も、混乱した。
だが、だったら今朝の理人噛みはなんだろう。
もしかしたら、狼と狂人は繋がっていない…?
繋がっていたら、今朝のこれは恐らく仕組まれていただろう。
狼は、順当に共有を噛んだだろうし、祐吏がそれで破綻しても狐COするから問題ないのだ。
祐吏に指定された護衛先は、狼に筒抜けだろうからだ。
だが、理人を噛んだ。
狼は、狩人の中に狐が居るかもと考えて、まだ公表されていない狩人かもしれない理人を噛み合わせた…?
「…そうだ。」千隼は、言った。「そうだよ、理人はだから噛まれたんだ!狼には、きっと夏菜ちゃんか狩人の片方に、狐が居ることが透けてる!でも、狂人と繋がってないからそれが誰なのかわからない。理人が寡黙なのは潜伏している狩人かもしれない。それも、狐の方かもしれないと思って、一弥の真確定を嫌って噛んだんだ!きっとそうだ!」
理人噛みの意味は恐らくそうなのだ。
でないと、説明がつかないのだ。
祐吏が、言った。
「今日、一弥にオレを占わせて。そうしたら、噛み合わせて来るかもだけど一弥の結果は全て真だって証明できる。何なら勇佑にオレを守らせてくれてもいいよ。それでも死んだら、オレは呪殺だ。涼太郎はオレを呪殺できなかったことから、真占い師じゃない。だから、これからだって噛まれることなんかないよ。だから、オレ目線じゃ涼太郎の白は全部グレーだ。信じて欲しい。」
信じたい。
千隼は、思った。
だが、祐吏が狐だと証明できる術が呪殺しかない以上、占いを一回無駄にすることになる。
今夜、もう涼太郎を捨てて一弥を噛んで来たら、これ以上占い結果が落ちない。
だが、今夜一弥を守ってしまったら次の日守れないので、結局一弥が噛まれて他のグレーを占ってもらえなくなる。
一弥の広いグレーの中から、狼を探して吊る運ゲーになる。
勇佑が、言った。
「…オレの真が確定したから、どこでも守るけどこうなるとオレと狼との勝負になるな。連続護衛ができないから、今夜の守り先で一弥をどれだけ生かせるかが決まって来る。本当に祐吏が狐だったらだけどな。」
涼太郎が、言った。
「だから!オレは真占い師だ、一弥に呪殺はできない!狂人が捨て身で狼を勝たせようとこんなことを言ってるんだ!絶対明日は祐吏が死ぬ、噛まれてな!一死体しか出ない!」
何が正解なんだ。
千隼は、苦悩した。
涼太郎は初日に白いと感じた。だが、投票は初日由弥、2日目奈央と村とは違う方に入れている。
だが、間違っている村人の可能性もある。
何しろ、結局吊られた楓馬と眞耶が片方が狼だったとしても、両方共狼とは思えないのだ。
祐吏が、言った。
「…狐に縄を消費するのはもったいないでしょ?」皆が祐吏を見る。祐吏は続けた。「オレが仮に狂人だったとしても、結局明日には縄を消費しなくても1人外落ちるんだよ。狼は絶対、狂人でも噛むって思ってるんでしょ?狼が涼太郎を捨てて一弥を噛んだとしても、縄は減らない。今なら偶数進行だから2死体出ても縄はそのままで、確実に1人外処理できるんだ。明日は普通なら10人、呪殺と2死体でも9人で、共に縄は4つ。オレと霊能の一人で確実に2人外落ちることになって、3人外残っていてもまだ足りる。占いを涼太郎からロラって残り最大2人外だ。いけるよ。それまでに必ず人外を探せる!もし一弥が噛まれたら、更に縄余裕ができるからね。村は勝てるよ!」
とても人外には見えない。
千隼は思った。
祐吏からは、本当に村人を勝たせようという意気込みをヒシヒシと感じるのだ。
皆が祐吏を信じたい気持ちになっていた時、大都がポツリ、と言った。
「あの…あのね。」皆が、大都を見る。大都は続けた。「その…言うべきか迷ってたんだけど。夏菜ちゃんの事なんだ。」
今、夏菜?
千隼は少しイラッとしたが、太月が言った。
「なんだ?何か気になる事でもあるのか?」
大都は、頷いた。
そして、話し始めた。




