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1日目の夜から2日目の朝

楓馬のことは、男子達で二階の部屋まで運んだ。

あんなに一生懸命叫んでいたのに、村人だったならと思うと本当に心が痛い。

何しろ、霊能者ローラーは村の空気では決まりのような感じで、安易に言っただけとも考えられた。

寡黙位置に狼が居たら、楓馬の頑張りはなんだったのだろうと思わせる。

楓馬を運んだ後、重苦しい雰囲気のリビングにもう一度戻り、太月は言った。

「…占い先を指定する。」と、ホワイトボードを見た。「まず一弥は由弥と一敬のどちらかを占ってくれ。涼太郎は、祐吏か亜佳音ちゃん。ここに書いておく。」

太月は、ホワイトボードに今言った占い先を書いた。

この中に共有者や狩人が居るのかはわからない。

占い師の中の、人外は悩むところだろう。

明日は、恐らく無難に白を打って来るように思えた。

楓馬の色次第では、由弥に黒が打たれる可能性もある。

今夜吊り位置に入っていたので、どちらでもないだろうと透けているからだ。

…オレを守るのは、どの狩人だろう。

千隼は、思った。

今日の感じでは、なんとなく千隼が共有の相方ではないかと思われている感じがした。

狩人か、共有者を狙う噛みをするより、今日はない気がしたのだ。

それとも、ダイレクトに太月を狙うのか。

しかし太月は限りなく護衛の入って居そうな位置だった。

千隼がそんなことを考えながら見ていると、太月は振り返った。

「じゃあ明日は必ず6時に廊下に出て来てくれ。ルールブックに腕輪のアラームの設定の仕方が説明されてあったから、それを見て必ず6時に起きられるように各自頑張ってくれ。じゃあ、解散。」

全員が、立ち上がる。

重い足取りでキッチンへ向かう者、部屋へと向かう者と分かれていたが、太月は千隼を呼び止めた。

「千隼。」千隼が振り返ると、太月は続けた。「すまないが占い指定先もノートに書いておいて欲しい。」

千隼は、頷く。

「うん。それはやっとく。問題ないよ。」

太月は、頷いてリビングを出て行く。

大都が寄って来た。

「千隼、オレ達も戻ろう。」

千隼は、答えた。

「水を持って上がりたいから、キッチンに寄るよ。大都は?」

「じゃあオレも。」

千隼は頷いて、大都と共にキッチンの扉へと歩く。

由弥が追い付いて来て、言った。

「僕も一緒にいい?」千隼が頷くと、由弥は言った。「オレ、怪しかった?」

千隼は、え、と首を振った。

「いいや。怪しかったら投票してるよ。オレは由弥を吊り先指定するなんて知らなかったから驚いたけど、吊られないと思った。だって村のほとんどの意見は由弥と同じだったしね。それで由弥に入れてたら怪しいと思うよ。」

隣りで、大都が体を固くする。

そういえば、大都はどこに入れていた?

千隼は、ふとまだついているモニターを振り返ると、大都は11、由弥に入れていた。

「え…大都、由弥が怪しかったか?」

楓馬よりも。

千隼が問うと、大都は答えた。

「…なんか、最初は白いと思ってたんだよ。でも、ずっと何度も聞いてると、わざと村利のあることばっかり言ってるように思えて来て。騙されてるのかなって、悩んだけど由弥に入れた。楓馬があんまりにも必死だから、信じてやりたい気がしてね。由弥は余裕の顔をしていたけど、楓馬は怖がってたでしょ?だったら占ってからでも良いかなと思った。それだけなんだよ。」

確かに楓馬には同情した。

あれだけ一生懸命なのに、白だったらどうしようとも思った。

だが、由弥を切り捨てることは、感情的にできなかった。

なので最後は、もしかしたら友達だからなのかもしれない。

そう思うとフェアじゃないのだが、初日は良いだろうとどこかで思っていてそうなった。

「…まあ、どっちも村人かもしれないから、大都が間違ってるのかオレにはわからないけど。」と、ノートを出した。「投票先も書いておいた方がいいな。ちょっとメモって来るよ。」

千隼は、まだモニターが着いている間にと、急いで皆の投票先をメモしたのだった。


今夜の投票で、由弥と大都の間にギクシャクした空気が流れてしまったのは千隼にも誤算だった。

千隼はどちらとも仲がいいので、どちらにつく事もできない。

大都の気持ちも分かるし、由弥の気持ちも分かった。

なので、あの後投票先をメモしてすぐに、当たり障りのない話題に終始して部屋へと戻った。

部屋のベッドに寝転がりながら、千隼は投票先を見た。

珠緒は、まだ夏菜の件を引きずっているのか由弥投票だ。

こうして見ると、由弥に投票しているのは7人。

珠緒、大都、眞弥、涼太郎、理人、勇佑、そして楓馬だった。

仮に楓馬が狼だったとしたら、この中に狼が居るのだろうと思われた。

初日から、仲間を切る選択はしないのが普通だからだ。

まして、思ったより接戦だ。

楓馬には残りの9人が入れているので、一人でも由弥に入れていたら同票で決戦になっていただろう。

この村では、二回同票になると両方共が吊られて、霊能者にはそれぞれの色が示される事になるらしい。

最悪二人共吊られて、二人共村人だったと言うことになりかねないルールだった。

…占い師が、分かれている。

千隼は、眉を寄せた。

真だと思っていた涼太郎が、由弥に入れていて、一弥が楓馬に入れている。

これは、どう見たら良いのだろう。

両方共村人で、狼はどっちでも良かったのかもしれない。

もしくは涼太郎が真なら、狼の一弥は狼である由弥に入れられなかったのかも知れない。

しかしよく見ると、二人の白先の珠緒も大都も由弥に入れていた。

囲いが発生しているとして、片方が間違えている村人だとしたら、楓馬が狼で涼太郎が狼、そして大都が囲われている狼だとしたら…。

狼は、楓馬なのだろうか。

それとも囲いははなくて、みんな村人なのだろうか。

もう、わけが分からなくなって、千隼はノートを放り出した。

とにかく、明日の結果だ。

明日の結果で、全てが分かる。

千隼は、そのまま眠りについたのだった。


次の日の朝、アラームの設定を忘れていたのをハッと思い出した。

しかし、いつものごとく部屋の閂が派手な音を立ててくれたのでその音で目が覚めて、その瞬間に自分の浅はかさと閂への感謝が同時に頭に流れた。

急いで飛び起きた千隼は、トイレも行かずに部屋の扉を開いて廊下へ駆け出した。

すると、もう二階の全員が出て来ていて、亜佳音がホッとした顔で寄って来た。

「女子は夏菜ちゃん以外全員無事。でも、夏菜ちゃんの部屋は鍵が掛かってて入れなくなってるわ。」

大都も言った。

「楓馬の部屋もだよ。追放されたら部屋に閉じ込められたままってことかな。」

千隼は、顔をしかめた。

「まあ、仮死状態なんだろうし、本人達は分かってないだろうけどね。この階は全員無事?ってことは、三階かな。」

太月が、頷いた。

「とにかく、三階へ行こう。」

皆が頷いて足を階段に向けると、三階から由弥の声がした。

「おーい!上がって来て、光祐だよ!光祐が襲撃されてる!」

光祐だって…?!

そう言えば、昨日太月は狩人の護衛を自分と太月に入れると言っていた。

霊能者の光祐は、がら空き状態だ。

何しろ霊能者は、真が確定していなかったので、縄消費に使いたいだろうと護衛を入れていなかったのだ。

…やられた…!光祐が真だったのか…!

それとも、狼が真結果を出されるのを恐れて狂人なのか真なのか分からず噛んだのか。

どちらにしろ、光祐は狼でも狐でもなかったのだ。

「…行こう。」

太月は、あからさまに悔しそうな顔をしてそう言った。

千隼も、これで楓馬の色が永遠に分からなくなってしまったと、昨日の護衛先を改めるように言わなかった事を悔やんだ。

光祐が噛まれるぐらいなら、自分が噛まれた方が良かったのだ。

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